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四条家の闇

夜が明け、横山さんたちに頼んで警察に通報してもらった。

一時間ほどして、警察は駆けつけた。


「捜査一課の金井です。殺人事件が起きたとのことで駆けつけたのですが……」

「初めまして。私は陣内探偵事務所に所属しております南と申します。そして、そこにいるのが……」

「帰ってよ。警察に捕まるのは構わないけど、男に捕まりたくはない」

「何を言っている。さあ早くこちらに……」


金井さんが阿部さんの腕を掴んだ瞬間、


「触らないでよ!!!」


阿部さんは大声をあげて腕を振り払った。


「汚ない手で触りやがって。ああ、体が腐っちゃう……」


阿部さんは蹲ってしまった。


「……すみません。女性の警官を呼んできてもらえませんか?」

「……わかった。このままだと何をしでかすかわからんしな」


しばらくして女性警官が到着し、阿部さんを逮捕した。先程と違い、阿部さんは大人しく捕まっていった。


「さて、君たちにも聞きたいことがあるので、同行してもらえないだろうか」

「ええ、大丈夫です」


その後、警察に事件の詳細を話し、私たちは解放された。横山さんは、定期的に阿部さんに面会しに行くみたいだ。少しでも阿部さんの心を癒やせたら、阿部さんのご両親も報われるかもしれない。




数日後、私はあの事件の後調べたいことがあったので、展示会が行われた会場へと向かった。


「あ! 芹香、来てくれたんだ」

「ええ」

「そういえば、前にこの近くにある無人の館で殺人事件が起きたんだって。この地って頻繁に殺人が起きるね。怖いよね~」

「私が本日ここに来たのも、そのことなんですよ」

「……え?」


雪乃さんは驚いたような声をあげた。いや、驚いていたのは声だけだった。


「……まあいいや。とりあえず控室に行こうか」



控室に案内され、私は席に座った。


「それで、どういうこと?」

「多分、私が説明するまでもないでしょう。あなたの家の権力なら、あの事件くらい簡単に調べられるはず」

「……」

「私が知りたいのは、ある人物のことです。それは、祇条正影という人です。彼のことは、公に出ていることしか知りません。年は二十八歳であなたと同じく今や祇条家の中核を担っている人物で、次期祇条家の当主候補だということくらいです。彼は自他共に認める野心家で、悪どい噂をいくつか聞きますが……」

「あの人のことは良く知らないよ。一応私の兄だけど、会ったことはほとんどない。だから、芹香が知っている以上のことは言えないかな。それに、私にも守秘義務? があるし」

「そうですか……」


正影さんについてはそう簡単に聞けることではないことはわかっていた。

だが、もう一つ気になることがあった。


「なら、こっちは聞かせてください。雪乃さんは、橘家とのいざこざには関わっていないんですよね?」

「……もしかして、私を疑っているの?」


雪乃さんは、冷たい笑みを浮かべて私を見据えた。その目から、私は思わず目を逸らしてしまった。雪乃さんの裏の顔を知ってしまったような、そんな気がした。


「ま、まさか……。私は、信じたいだけです」

「……私は関わっていないよ。だって、橘家とのいざこざがあったのは十年前だよ。私は当時六歳だし、何もできないよ」

「そ、そうですよね」

「うん。じゃあこの話は終わりだね。もう用はない?」

「は、はい」

「わかった。じゃあ今日は駅まで送るよ。また迷わないようにね」


何故か、最後の言葉は強く発せられたように感じた。


「あ、ありがとうございます」

「じゃあね。今度はこんな暗い話じゃなくて、もっと明るい話題がいいね」

「……はい。ではまた」




駅まで送ってもらい、そこから事務所へと帰った。


「先生。ただいま戻りました」

「おお、ずいぶん早かったね」


先生はパソコンで書類を作成しながら返事をくださった。


「ええ。もう用事は済みましたから」

「収穫はあったのかい?」

「……まあ、ぼちぼち」


何とも答えられなかったので、はぐらかした。


「そうか。……まあ祇条家にはいろいろと悪い噂もあるからな。それにつられてあまり思い込まないようにな」

「わかりました」

「よし。それじゃ君に次の仕事だ。引き受けてくれるか?」

「はい!」


祇条家について気になることはいろいろとあるが、今は探偵としての仕

事を全うしよう。いずれ、雪乃さんから話してくれる。そう信じて、私は次の仕事へと向かった。

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