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ENEMY

初めての小説です。コメントしていただければ、有りがたいです。

『フランスパンで剣道したい』

 あれは、2015年の冬だった。オワリPが刺されて死亡してしまう事件が発生してしまった。2014年のワラワラ動画の信者戦争で勝った信者が調子付いて襲ってしまったのだ。拳銃と『メカクサナイ完了』と書かれた文字が現場に残されていたのだ。

 すぐに、警察の調査が入った。まず、疑われて逮捕されたのは陣Pである。疑うのは他に居るだろうと思われる。確かに、信者騒動の火種となった「ザンプロ」を創った張本人である。当然といえば当然である。担当したのは川田である。川田はもうそろそろ更年期に入る男であり、ワラワラ動画にも顔を利かせている「Mr.ワラワラ」である。そんな彼が取り調べをするときに、一番にやっていることがある。職業、名前、年齢である。これを聞くことで彼の頭にある平均的な言動を思い起こして、矛盾を暴くのだ。

「あなたの職業、名前、年齢を教えてもらおうか」

陣Pは少し彼の眼を見て答えた

「音楽家、陣内哲也、23歳」

蛇が獲物を占めたような顔で彼は再び聞き返す。そう、短期決戦をもちかけるつもりだ。

「陣内さん。あなたに2つか3つ、確認させてもらう」

というと続けざまにこう言った。

「まずは、犯行時間14時から17時の間は何をしていた?」

「はい。私はレコーディングに行っていました」

 ――確かに。彼の事実を行っていた。証拠にあるスタジオに入り浸りだったのだ。

「次に、あんたが昨日、ホームセンターに行っていたと情報が入った。何を買っていた」

と事件を起こす間接的な原因を探るのが、定石である。

「確か、昨日の12時ごろに行きました」

「レシートは出せるか?」

「出せないです」

「なぜだ!」

彼は疑問を抱いた。こいつ何か隠していると。その真相を知りたい欲望と正義感、そして真相へ近づきたい彼の性格が脳裏に浮かんでくる。

「……。すまない。今日は帰ってもいい。が、明日は強制家宅捜索をする。漏らせば、濡れ衣を着ることになる」

そして、陣内は無言で取り調べ室を去ろうとした。

「もしもだ。あんたが犯人じゃなかったなら、信者に何をいいたいか?」

素朴なことであったが彼は知りたかったのだ。人の心理というものを。彼の心理というものを。

「暴走を辞めてほしい。ただそれだけです」

ゆっくりした口調で語った。

「ちょっと、酒の席に付き合ってくれ」

陣内はややあせりながらであったが、「居酒屋 宝仙」に渋々一緒に行ってやったのであった。


 その日の夜。酔っていた2人組の男性が何者かに刺されたのだ。この事件で川口が死亡。陣内が重症である。その話を聞いた人がいた。残されたいとこの泉谷京輔である。彼は、東帝大学院理工学部に所属しているのである。25歳にして『ノーベル賞』を取るとされている。その彼が、川田の葬式の時に彼はこういったのだ。

「意思を受け継ぐ必要がある。いや、そうしないといてない。巨大な悪は何としても排除しなければならない」

母が遺影の前でその話をした後に、宣言している泉谷を見ているなかであった。川田と同じ感情が生まれたのだ。

 葬式が終わり、落ち着いたころであった。彼は動き出した。まず、川田の知り合いを探した。当然だが警察にいる関係者を優先的に調べた。

「あっ、どうも泉谷と申します」

「よく来たね。さぁ、座りなさい。京輔君が元気で良かったよ。川口君の仇を取るのでしょう?さぁ、これがファイルだ」

この人は、志村警部補である。「やさしいおじさん」と形容されるほどである。53歳で川口の直々の上司である。

「京輔君。この事件には裏があってね。私としてはそれを警察として止めたいんだよね。権力をなんとかして止めたいんだけどね」

彼は笑顔を浮かべた。泉谷も愛想笑いをした。なにかあるに違いない。まぁ、調べるとすぐわかることだからどうでもいい。それよりも。

プルルルル…… プルルルル……

「はい。もしもし、あぁ。え?また起きた?谷本ちゃん。ちょっと、今から現場に向かうよ」

不思議であった。一体何があったのかわからなかった。当然、これが犯人との一番早く、退屈な対決になるとは思っていなかった。

「泉谷君。現場に行きたいかい? 」

「行きますよ。もちろん」

 ――ここは渋谷区カエル広場前。そこには遺体が有った。

「宮橋清十郎。スタジオPと呼ばれていたボカロPです。職業は会社員。年齢は21歳」

捜査員がこう述べている。そして、彼はあるカードに気づく。

「メカクサナイ完了。と書かれたカードが有りますが、やはり一番最初に疑うのはファンクラブの人間ではないでしょうか?それにこの拳銃なんてマニアックすぎますし。3件ともこれしかなかったので。疑いの余地は有りです」

そう推測する彼にこういった

「ファンクラブのメンバーを全員捜索するのは難しいね。更に官僚もいるし、権力で自由に捜査は出来ないよ」

警部補から衝撃的な言葉が出た。現場が沈黙の渦に飲み込まれる。唖然とするだけだった。彼が権力というものに憎悪を抱いたのがこの時が初めてだった。まるで雷に打たれ、一人立っているように。雲行きはどんどん悪くなっていくばかりだ。全ての壁で凡人なら越えられない壁を泉谷は

「藤井捜査官。そこにある凶器。拳銃の指紋認証とファンクラブの入会者で年収1000万円の人物に指紋採取をお願いします。そうすれば、権力は動くことはありません」

藤井捜査官はそういうとすぐさま、鑑識に入った。雨が降り出し、震えている右手が濡れている。

 

 

 「君は、なぜそんなことがわかったの? 」

警部補が尋ねた。疑問とバカにした目で泉谷を覗き込むのだ。

「身の回りには、確かに3件とも凶器の拳銃と『メカクサナイ完了』と書かれたカードが有ります。どれも、プラズ891.pという型です。こんな逸話があります」

廊下で飲みかけの缶コーヒーを持って2人の男性が止まった。興味深い話が聞けるのであるから。

「昔、ドイツのA級戦犯であるカタール・フォックを射殺したということです。この拳銃はドイツで有名になりました。それからというものです。トップ社は1950年に飲料水に全力を注ぐために製造が終了しました。そして現在。1丁500万という品物になってしまいました」

「そういう逸話があるのか」

関心は有ったようだ。もともと、警部補は兵器マニアで戦車マニアであった。的を少し外れているが、それに近い。漏電した電気を取りかえる雑務のおばさんがちらっと見えた。そんなことを気にせずに進んでいくのである。泉谷は、この後どうなるかを知らずに。

 

 泉谷と警部補が残った缶コーヒーを飲み干すと、警部補はこう言い放った。それは解決の糸口であった。

「証拠の拳銃を調べたら何もなかったらしい。これで解決するだろうね」

彼は一直線に走りだした。狼のように。

「解決するかなぁ……。これは……。何か謎があるかもしれないからねぇ」

心配そうに青年を見守る。

「さて、京輔君のためにファンクラブに探りを入れてみよう」

笑いながら、一人特別捜査本部室の自分の席に戻っていった。午後3時を回る頃に、志村警部補自身のパソコンを開いた。 

 志村捜査官の予想通りであった、これは終わらなかった。なぜなら、泉谷が犯人と思われる豪邸に来たときには遅かった。藤井捜査官は切った手首を水槽の中のお湯に入れていたのである。部屋は散らかっていた。地球儀は嘲笑うかの様にこっちに向いている。金属バット。燃えていた手袋。その周りは焦げた跡が。右手が震えるばかりだ。

 ――犯人は自殺した。のではないと。

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