プロローグ 途方も無い時間の後に……
試作ですので暇ならお読みください。
「ほんとうにいっちゃうの?」
夕焼けで赤く染まる小さな公園、そこには1人の男の子と1人の女の子がシーソーをしていた。
女の子の方は泣きそうな顔で男の子の方を見ている。
「……うん」
男の子は悲しそうに微笑み小さな声で答える。
キーコーカーコーと小刻みにシーソーが揺れる音だけが聞こえている静かな時間、
「で、でもまたあえないわけじゃないよ?」
男の子は必死に目の前の女の子を慰めようとしている。
「じゃあ、いつあえるの?」
女の子は目を赤く腫らしながらそれでもなお、目を擦りながら聞いていた。男の子は笑ってそれに答える。
「夕菜ちゃんが今4歳でしょ? だからあと10歳したら帰ってくるから」
意味不明な言葉で男の子は女の子を説得している。
「本当に! じゃあ夕菜は陸くんが戻ってくるまで待ってるね?」
通じたようだ……
「うん、でも……まってなくてもいいんだよ?」
陸は悲しそうに俯いてしまう。恐らく彼には10年の間の長さがわかるようだ。
「ううん! 私、陸くんが帰ってくるまで待ってるから、絶対、絶対帰ってきてね!」
「う、うん」
夕菜と陸は指切りげんまんを歌って別れた。
夕菜が笑って帰った後、陸は涙を流していた。
「10年って長いのに……返事しちゃったよぉ。もう何処へも行きたくないよ。なんでお外の国なんて行かなきゃいけないの? どうしてなの?」
これが彼と彼女の、陸と夕菜が交わした会話だった。次の日には陸はもう居なかった。
夕菜は10歳、10歳とその言葉を口にしていた。
彼女にとっての10年はどれだけ長いのだろう……
◇◆◇◆◇◆◇◆
彼女との約束をしてから丁度10年が経とうとしていた。
彼は約束通り、10年ぶりに日本に帰ってきた。10年経った彼は随分と顔が変わってきていた。男にしては長めの髪、女の子のような白い肌、確実に年上などにモテるタイプだろう。
「帰ってきたよ。夕菜」
彼は10年前約束した女の子に会う為に日本に戻って来たのだった。
彼との約束をしてから10年が経とうとしていた。
彼女は約束通り彼を待っている。彼女もまた10年経って随分と顔が変わってきていた。
黒くて綺麗な長い髪を両端で括っていて可愛らしい彼女の顔にはよく似合っていた。
「夕菜! なにボーッとしてるの? 早く次の授業行こうよ」
「あ、待ってよ、芽衣速いって」
芽衣と呼ばれた女の子はテヘッと笑い戻ってくる。
2人が話している姿はとても絵になっていた。2人共とても可愛い。
男子の中で秘密裏に人気女子BEST10の中で夕菜は2位、芽衣は4位と高ランクなのだ。
その二人が話している姿は男子からしたら目の保養とでも言えるだろう。
しかも芽衣も夕菜も彼氏が居ない。この事をいいことに……
「夕菜さん! 付き合ってください!」
「芽衣さん! 付き合ってください!」
とまぁこんな連中がたくさん居るわけだが……芽衣も夕菜もごめんなさいの一言で終らせてしまう。実は彼氏が居るんじゃないか? と噂する程に……
「はぁ、陸……帰ってきてくれるのかな?」
思わず溜息と独り事を呟いてしまう夕菜、それをニヤニヤしながら見ている芽衣、
「おやおや~? 夕菜ちゃんには好きな人がいると?」
「っ!? 居ないよ、そんな人!」
後ろから声が掛けられたので正直ビックリして反射的に答えてしまった。
「んん? 動揺してるね?」
芽衣は更に追求しようと夕菜の顔を覗き込む。夕菜は固まって動かない。
「はい、君たち席に着け! HR始めるぞ」
丁度いいところで聞こえてきた先生の声、先生ナイス! 私は心の中で歓喜した。
「突然だが今日は転校生を紹介しよう。入れ」
先生が手招きで呼んだのはどうやら男のようだった。だったというのも肌が白くて髪が結構長い為、一瞬分からなかったのだ。
「初めまして、高橋陸です。つい先日まで外国に行っていました。
どうぞよろしくお願いします」
私は名前を聞いた瞬間に思わず席を立ち上がりそうになってしまった。
「ねぇ、夕菜ってば、あの男の子可愛くない? 私結構好きかも……」
隣から芽衣の声が聞こえるがどうでもいい。
ああ、やっと、やっと会えたんだね? 陸、待ってたよ。
心の中で叫び、彼の話に耳を傾けている夕菜だった。