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婚約破棄された悪役令嬢が契約婚の領地を定時で帰れる国に変えてしまいました

作者:月雅
最終エピソード掲載日:2026/03/02
契約がまとまる前に寸法を指定して取り寄せられた防寒外套が、部屋に置いてあった。

カティアは前世で過労死した元社畜OL。 転生先の公爵令嬢として王太子に婚約破棄され、北の領主と三年の期限付き契約婚を結んだ。 恋愛感情は前提としない。契約書にそう書いてある。

居場所がほしければ自分で作るしかない。 初日に帳簿室の扉を開けると、何年分もの数字が埃の中に眠っていた。 棚卸し、突合、差異の追跡。 前世で叩き込まれた管理業務の技能が、ここでようやく誰かの食卓とつながった。

数字を追うほど、領地の赤字の裏に不自然な影が浮かぶ。 王都から届くはずの物資の記録に、あるべき数字がない。

無口な領主は仕事を一言で認めてくれた。 翌朝、机の上の冷めた茶が温かいものに替わっていた。 それが義務なのか別の何かなのか、契約書のどこにも書いていない。

三年経ったら出ていく。そう決めていた。 なのに帳簿を正しく並べるほど、この場所から離れられなくなっていく。

彼が毎日つけていた小さなノートの中身を、彼女はまだ知らない。
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