第14話 最期の朝、死にゆく世界の光
世界はまだ、壊れたまま静かに息をしていた。
砂は白く粉のように崩れ、空は遠くで砕けた青の残像を揺らめかせる。
風は冷たく、耳を刺すように軋み、木々も建物も音を失っていた。
ユナは砂の上にうつ伏せで横たわり、手のひらで胸の金色の欠片を押さえていた。
脈打つたび、微かにリオの声が響く。
『ユナ……迎えに来てくれて、ありがとう……』
声は温かいけれど、世界の冷たさと対照的で、胸が締め付けられる。
ユナは涙で顔を濡らしながら、砂に沈む指先で欠片を握り直した。
この七日間――七日間で彼女は、世界の破片を歩き、影のリオと向き合い、心の奥の罪と痛みを抱え続けてきた。
「……リオ……もう……会える……ね……」
体中の痛み、胸の青い光の脈動、消えゆく世界の叫びがすべて混ざり合い、ユナの心は限界に近かった。
それでも彼女は立ち上がる。
ユナは世界の最果て、二人で見た海辺へ向かう。
砂は青く光り、波は逆流し、空は裂けたまま。
時間の概念は失われ、過去も未来も混ざる中、ユナはひとりで歩く。
影のリオが静かに後ろを歩き、手は伸ばすが触れることはない。
その姿は優しいけれど、痛みに満ちていた。
「リオ……お願い……最後に……抱きしめさせて……」
声は震え、嗚咽が混ざる。
けれど、届かない。触れられない。
砂に足を取られながらも、ユナは必死に前へ進む。
心臓の青い光はもうほとんど爆発寸前で、彼女の胸を切り裂いていた。
海辺に到着した瞬間、世界がさらに弾けるように崩れた。
空は粉々に裂け、砂は粉塵のように舞い、波は逆流して天へ吸い込まれる。
ユナは胸の欠片を強く握り、影のリオを見つめる。
「リオ……私は、あなたを……助けたい……」
声は小さく震えた。
けれど、その言葉に世界は反応した。
青い光が胸から溢れ、世界全体を包み込み、砂や空や海が音を立てて崩れ落ちる。
衝撃でユナの体は揺れ、涙は止まらず頬を濡らす。
影のリオが手を伸ばす。
指先がユナの胸の欠片に触れた瞬間、微かな温もりが伝わる。
「ユナ……」
リオの声が、世界の果てまで届くように響く。
ユナは微笑み、涙を流す。
「行きなさい……生きて……私のために……」
その瞬間、ユナの体は光に包まれ、徐々に透明になり、ついに世界から消えた。
世界の残骸の中で、リオは目を開けた。
彼の体は完全に実体を取り戻し、砂浜には青い光が柔らかく揺れる。
リオはユナの欠片を胸に抱き、静かに言葉をつぶやく。
「ユナ……ありがとう……君の愛が、僕を生かしてくれた……」
世界は少しずつ再生を始める。
欠片の光が砂に反射し、空に柔らかい輝きが戻る。
それは、消えたユナの微笑みのように、世界に静かに希望を残した。
リオは砂浜に立ち、風に耳を傾ける。
世界はまだ傷だらけだけれど、少しずつ生命が戻り、波の音がかすかに蘇る。
胸の欠片が微かに揺れる。
それは、ユナの愛の証。
永遠の約束。
「ユナ……僕は、君を忘れない……
君のすべてを、この世界を、守るから……」
光は風に散らず、残り続ける。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
この物語の登場人物たちが、あなたの心に少しでも息づいてくれていたら嬉しいです。
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またこの世界でお会いできるのを楽しみにしています。
――ありがとうございました。




