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第10話 リオを取り戻すための“禁忌”

 光の中に現れた“もうひとりのユナ”


 胸の奥で青い光が脈打つたびに、

 世界の輪郭が白く溶けていく。


 そして――

 ユナの前に“少女の影”が立った。


 青い光の中で揺れるその姿は、

 ヒトとも幽影ともつかない。


 しかし声は、

 ユナ自身の声だった。


「もう……気づいたでしょ」


 ユナは震えた。


「……あなた……誰?」


 少女は静かに微笑む。


「“百年前のユナ”。

 あなたが忘れていた、

 本当の“私”」


 その言葉が胸に突き刺さった。




 青い光がユナの周囲に広がり、

 空間に“記憶の波”が浮かび上がる。


 百年前の海。

 倒れた人々。

 崩れていく空。


 そして――

 泣きながら誰かにしがみつく少女。


 それが“百年前のユナ”だった。


「あなたはね……」


 影のユナが呟いた。


「この世界を壊した“引き金”になったの」


 ユナの心臓が止まりそうになる。


「やめて……言わないで……」


「真実を――聞いて」


 波のように記憶が押し寄せる。




 光の中で映像が鮮やかに再生される。


 百年前――

 ユナは“世界を守る力”を持っていた。


 だけど。


 その力は代償と表裏一体だった。


 世界が崩れ始めたとき、

 ユナは恐怖で泣き叫び、

 力を暴走させた。


 そして――


 世界の裂け目に、

 リオを落としたのは、

 ユナ自身だった。


「いや……嘘……嘘だ……!!」


 現在のユナは頭を抱え、膝から崩れた。


 影のユナは静かに告げる。


「リオはあなたを守ろうとして……

 そしてあなたの力に飲まれて……

 “あちら側”へ落ちたの」


 ユナの絶叫が海に散った。




 金色の欠片が胸で震える。


 影のユナがそっと触れた。


「その欠片はね、

 リオの“存在の最終信号”なの」


 ユナは涙に濡れた目で問う。


「最終……信号……?」


「この世界で形を保てる“最後のひとかけら”。

 あなたの名前を呼び続けていた、

 リオの“帰りたい”という叫びよ」


 胸が裂ける。


 あのか細い声――

 助けを求めるリオの声――

 すべてが、ユナ自身が落とした場所からのものだった。




 影のユナは、最後の真実を告げる。


「リオを戻す方法は、ひとつだけ」


「……教えて……教えてよ……!」


「あなたが“世界の守護”を捨てて、

 世界を一度壊すこと」


 ユナの指が震えた。


「世界を……壊す……?」


「ええ。

 あなたが世界の“心臓”なの。

 あなたが壊れれば、

 世界は海の底へ沈む。

 その時、リオの魂は解放される」


 ユナの呼吸が止まる。


「でも……世界中の人が……」


「助からないわ」


 影のユナは優しくも残酷に断言した。


「世界を救うか。

 リオを救うか。

 どちらかしか選べない」


 ユナの涙が止まらない。


「どうして……どうしてそんな選択……!!

 なんで……私ばっかり……!!

 なんでリオばっかり……!!」


 胸の青い光が痛む。

 心臓が裂けそうだ。


 世界の風が泣き、

 空の海が揺れる。


 影のユナは、そっとユナの頬に触れた。


「選んで。

 あなたの答えが、

 リオの“生”を決める」


 ユナは嗚咽の中で、ただひとつの言葉を吐いた。


 小さく、苦しく、

 今にも壊れそうな声で。


「……リオを……助けたい……」


 影のユナは静かに頷いた。


 それは同時に、

 “世界の終わり”の合図だった。




 青い光が世界に満ちていく。

 海が大きく泣き、

 空が反転しはじめる。


 ユナは涙に濡れた目で、

 胸の金色の欠片を抱きしめた。


「リオ……必ず……迎えにいく……

 たとえ……私がすべてを壊しても……」


 光が弾けた。


 ユナの選択が、

 世界を――そして運命を、

 完全に揺り動かした。

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