『鉄砲撃ちの娘とヘビのプレスマン』
昔、細越というところに、鉄砲撃ちがいた。この鉄砲撃ちには一人娘があって、毎日機織りをしていたのだが、ある日から、機織りの手を休めては、ひとり言を言い、けたけたと気味の悪い笑い声を立てるようになった。鉄砲撃ちは、物のけがついたのだろうと思って、様子をうかがっていると、一匹のヘビが明かり取りの小窓のところにからまっていて、そのヘビが尾っぽを振り回すと、娘がけたけたと笑うことがわかった。鉄砲撃ちは、このヘビこそが物のけだろうと合点し、鉄砲で撃ち殺し、裏の小川に捨てた。
翌年の春、その小川に、見たことがない小魚がたくさんいたので、とって食おうと思ってとったが、見たこともない魚で、どうやって食うのがいいかと思案していると、小魚は、みるみるうちに小さなヘビに姿を変え、しまいにプレスマンになったという。
鉄砲撃ちの一人娘は、このプレスマンを持つと、けたけたと笑いながら、信じられない速度の速記が書けるようになったという。
教訓:鉄砲撃ちの一人娘は、あちこちの会議に呼ばれて速記をしたが、けたけた笑う声が気持ち悪く、またうるさいので、どの会議も短く終了し、参加者からは、気持ち悪がられながらも、ありがたがられたという。




