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倉田とクソガキ




──ある夜、ぽつんと灯る外灯の下。

ゴミ集積所の奥で何かがガタンと音を立てた。


倉田(無言で懐中電灯を向ける)


あいつこんなとこに……


シャーーーッ!!

怒ってるな。


そこに電柱の影からひょっこり姿を現す

小学生?低学年くらいか……


少年「……な、なんだよ。びびらせんなよこのおっさん」



倉田(じっと見つめるだけ。目が光る)


「なにジロジロ見てんだよ、警備員のくせに!俺んち、あっちの棟だし、関係ねーし」


倉田「……名前は」


「は?教えるわけねーだろ。バーカ」


倉田(ゆっくり近づく)「──たつ…猫を、突き飛ばしたのはお前だな」


(一瞬たじろぐが、虚勢を張る)「あ?猫?アイツが勝手に転んだんじゃね?」


倉田(懐中電灯の光を落とし、低く)


「──命に上下はない」


「……は?」


倉田「謝る相手は、まだ生きてる。運が良かったな」


「うるせーよ!」


(少年、階段を駆け上がって逃げようとするが、途中で足を踏み外してバランスを崩す)


「うわっ──」




階段から落ちかけた少年を救った直後、倉田が少年を見つめて言う。


倉田「──靴、片方はどうした」


「……は?あー、どっかで脱げたんだよ。べつにいいし」


倉田(無言で下を見る)


汚れたスニーカー。片方は紐がちぎれ、サイズも合っていないようだった。


「うちのビルの前のあの団地の二階……205の部屋。お前の家だな」


「……なんで知ってんだよ」


「あそこは──ゴミがベランダまで積もっていた。郵便受けも、新聞が数ヶ月分詰まったままだ。靴は、玄関の外に左右バラバラで二足。……子どものものは、一足だけだった」


(小さく舌打ち)「チッ……チクるの?」


「チクらない。ただ──そこに"人"が住んでいるとは言い難い。……親は?」


「いねぇよ。朝も夜も寝てるし、飯は自分で食えって」


(俯いて地面を蹴るように歩き出そうとするが、倉田が肩に手を置く)


「……次に、猫に手を出したら──俺が親代わりに、張り倒す」


「……へっ、やれるもんならやってみな──」


(しかし視線がぶつかった瞬間、少年は背筋をすくめた)


「……命を、侮るな」


(少年、思わず黙りこむ)




佐々木「倉田さーーーーん!置いてかないでくださいようっ!」


遠くから飼い主を見つけた子犬のように駆け寄ってくる鼻息荒めの佐々木。


倉田「……」


「チッおっさんが増えてもこわかねーぞ。つーかさ、あんた、靴見ただけで家バレるとか探偵かよ。こえーんだけど……」


佐々木「なに言ってんの?それより君、靴、片方ないけど……」


「昨日拾った分、どっかで落とした。いーのいーの、どーせ汚いし」


佐々木「……こんな時間に1人とか、君の親御さんと一度話を……」


「うるせーな、ウザイって言ってんだろ!」


(佐々木、ショック受ける)


(ふと真顔)「──おっさん(倉田)みたいに怒る人、ウザくないんだよな。……なんでかな」





翌日、警備室前。


「あー!いたいた、おっさん!」


佐々木「え、ちょっ、なんであのクソガキまたいるんすか!?倉田さん!?ダメですよ夜勤警備員に弟子とか!」



「今日もついてってやるからな!あと、こいつ(佐々木)なんかウザイ!シッシ!」


佐々木「し、シッシって……!!えっ、倉田さん、なにこの懐かれ方……!」


倉田(佐々木に目線だけ送る)「……引き取りは任せた。おにぎりと味噌汁オレの分置いといたから食わせてやっといてくれ。俺は巡回だ」


(すれ違いざまにぽつり)


「──あの子は、怒られた経験が少なすぎる」


(ドアを閉め、静かに去っていく)


佐々木「え、ええ~!?なんで俺が!?ねぇ!?倉田さんてば、ちょっ、えっ、無視!?あのクソガキ、どんだけ懐いてんの!?」


(少年がニヤッと笑ってピース)


「へっ。あの人、なんかかっけーし」




──

佐々木の報告書


巡回中、謎のガキが倉田さんにベッタリ懐く事件発生。

なぜか俺だけ蚊帳の外。負けないぞおっ!




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