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17.二度目の解除

アルクとジーナがエド町に着いたのは、既に日が沈んでからだった。



「懐かしいなあ。しばらく来ていなかったから、また来られて嬉しいよ」



ジーナは灯りに満ちた夜の町を眺めながら、眩しそうに目を細める。

アルクはその台詞を聞いて、再び頭の中に浮かんだ都合の良い空想を何とか振り払う。



「えっと、今日はもう宿屋で休もうか。今のところ緊急の依頼はないみたい……」


アルクはそう言って、宿屋へ向かって歩き出した。



ユリアン曰く、やはりエド町のあるシロヤマ領周辺が、魔物の出現率が最も高いらしい。

護衛隊や冒険者が優秀なので何とか持ちこたえてきたが、さすがに戦力が消耗してきたようだ。


「だからアルク君を応援に寄越したんだね。明日から忙しくなるかもね」



ジーナはアルクの隣で、町の賑わいを眺めながら言った。




果たしてジーナが言った通り、翌日から二人は休みなく走り回る事となる。


一度落ち着いたと思われた魔物の襲撃が、ここ数日また盛り返してきたのだ。




「アルク君、避けて!!」



その声に反応してアルクがさっと身を屈めると、ジーナの火炎魔法が頭上を通り抜けていった。


そしてアルクの目の前にいたゴーレムの巨体を、高熱の炎で一瞬で溶かす。



燃え盛る炎を唖然として眺めながら、アルクは感心したように言った。



「ありがとう、ジーナさん。ゴーレムには炎が有効なんだね」

「そうだね。ゴーレムは岩でできているから、雷や風を使う人が多いけどね。高レベルの火炎魔法を使える人は、一気に溶かした方が早い」



そこはロカド山岳の入り口で、麓の洞窟からは次々にゴーレムが湧き出していた。

何十体ものゴーレム達を、アルクとジーナはほぼ二人だけで殲滅する。


それが終わると休む間もなく、二人は次の現場へと向かった。




「ああ、疲れた……。やっぱりこの辺の魔物は数が多いね……」



既に日は沈み、その日3件目になる討伐を終えると、アルクはそのまま地面にへたり込む。

二人は黒霧の森にいて、今度はシルバーウルフの群れを一掃し終えたところだった。



ジーナもさすがに疲れた様子で、アルクの隣に腰を下ろす。


「それだけじゃない。奴ら、ここ数日で攻撃力も増している。この調子だと、しばらくは休めそうにないね」

「そんな……。一体いつになったら終わるんだろう……」



その時アルクは、ジーナが以前、一緒にいられるのは20日間だけだと言っていたことを思い出す。

急に不安になり、アルクは指を追って経過した日数を数え始める。



「ねえ、ジーナさん。僕達が出会ってからもう10日ぐらいだよね。僕に協力できるのは、20日間だけだって……」



暗い森の中で、隣に座るジーナの顔には影が差している。

ジーナがこちらに視線を向けると、アルクは自分の不安が見透かされているような気がした。



「ああ、そうだね。けど大丈夫、それまでには何とかするつもりだよ」

「何とかするって、一体何を……」



ジーナにはどうやら、アルクには隠している計画のようなものがあるらしい。

それが何かは分からないが、アルクは自分の力が及ぶ限り協力したいと思った。



「前に、誰かを探してるって言ってたよね。それと何か関係があるの……?」


アルクの問いに、ジーナはゆっくりと首を振る。


「いや、それはもういいんだ。それとは別で、もう一つやることがある。……アルク君、この近辺の魔物が落ち着いたら、私と一緒に北に向かってほしいんだ」

「北……?ここから北って、魔王領しか……」

「ああ。そこに行きたいんだよ」



ジーナは真っ直ぐ前を見つめながら言った。


アルクは思わず、ごくりと唾を飲み込む。



「……もしかして、本当に魔王が、復活するの……?」



その問いかけに、ジーナはすぐには答えない。

ただその顔に差した影が、心なしか一段と深くなったような気がした。



「私達が向かう先にいるのは、魔王じゃない。けど魔族には変わりない。私は何としてもそいつを仕留めなければならないんだ」

「それは、魔王の配下とか……?きっと、これまでの騒動に関係があるんだよね」

「うん、そうだね。だから一緒に、来てほしいんだ」



もちろんアルクが断るはずはなかった。



しばらく沈黙が続いた後、アルクはふと考える。


『ジーナさんはもしかして、しょこらがどこにいるか、知ってるのかな……』



あまり多くを語らないジーナを質問攻めにはしたくなかったが、アルクは確かめずにはいられなかった。

そして躊躇いながら口を開く。



「あの、ジーナさん」

「なんだい?」

「ジーナさんは、その、しょこらの………」




だが、そこでアルクの言葉は突然途切れる。


続きを言わないアルクにジーナが目を向けると、その顔には恐怖と驚愕の表情が貼り付いていた。




「アルク君?どうし………」




唖然として目を見開いたまま、アルクはそのまま動かない。


その時アルクの頭の中には、あの無機質な声が響いていたのだ。




「しょこらとアルクの従魔契約が、解除されました。」



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