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細工師リリィ  作者: いち
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夜会

夜会の会場は、燦然と輝くシャンデリアに照らされ、金と銀の装飾が壁面に華麗な輝きを放っていた。豪奢な絨毯が敷かれた大広間には、美しく着飾った貴族たちが談笑し、甘やかな香りが漂う。

高い天井には花とリボンが飾られ、あちこちで繰り広げられる社交の輪がまるで一つの絵画のようだった。


その中心でひときわ人々の目を惹いていたのが、王女とリリィだった。


王女は蜂蜜色の髪を緩やかに結い上げ、淡い水色の瞳を輝かせながら微笑んでいた。ドレスは瑞々しい春の花を思わせる淡桃色の絹で仕立てられ、繊細な金糸の刺繍が揺れるたびにきらめく。まるで一輪の薔薇のようなその姿に、人々はうっとりと視線を向けていた。


そしてその隣に立つリリィも、また違った美しさを放っていた。


彼女の髪は深みのあるダークカラーに染められ、その下の瞳は輝きを封じ込めたような青色をしていた。その神秘的な色合いが、夜会の照明の下でさらに魅惑的な光を帯びている。落ち着いた色味のドレスを纏っていたが、それがかえって彼女の気品を際立たせていた。


「まるで姉妹のようね。」

「なんて美しい二人なの……。」


貴族たちは囁き合いながら、彼女たちの姿に魅了されていた。


夜会のご馳走も、また豪奢なものだった。


大理石のテーブルには、見たこともないほど華やかな料理が並べられている。


黄金色に焼かれたローストビーフは滴る肉汁が照明を受けて輝き、傍らには香草を散らした鴨のパイ包み焼き。新鮮な魚介のマリネや、見事な細工が施された前菜の数々。とりわけ人々の関心を引いたのは、美しい銀のプレートに盛られたデザートの数々だった。


ルビー色のゼリーが揺れ、雪のように白いクリームがふんわりと添えられたパフェ。

口の中でほろりと崩れる焼き菓子に、金箔を散らした繊細なシュガーアートの飴細工。


王女とリリィは、その中でも特に可愛らしい砂糖菓子をひとつずつ選び、口に運んだ。


「ん~、とても甘くて幸せな味……。」

王女が頬を染めながら微笑むと、リリィもふっと微笑んだ。


「お砂糖の加減が絶妙ですね。甘すぎず、ふわっと溶ける……王宮のパティシエの腕前、さすがです。」


「でしょう? お気に召したならよかったわ。」


王女はくすくすと笑いながら、もうひとつリリィに砂糖菓子を差し出す。

二人はひとときの甘い時間を楽しみながら、和やかに言葉を交わした。


──だが、その甘いひとときの裏で、ある計画が動いていた。


庭の暗がりでは、リリィの影武者となった女性騎士が、暗殺者たちに囲まれようとしていた。


武器を忍ばせた鉄板入りドレスの裾を静かに捌きながら、騎士は夜の闇を睨んだ。

相手の刃が月光に鈍く光る。


──計画通りだ。


背格好の似た彼女が罠となり、相手を誘い出す。リリィの影武者であることに気づかぬ刺客たちは、迷いなくその場に踏み込んだ。


次の瞬間、短剣が翻り、金属の打ち合う音が静寂を破った。

悲鳴が響き、潜んでいた王宮の兵士たちが一斉に飛び出す。


「捕えろ!」


カイルの命を受けた兵士たちが一気に襲撃者を押さえ込んだ。

この夜会で、リリィを狙う敵を一網打尽にする──それが彼らの計画だったのだ。


そして、夜会の華のように美しく佇んでいたリリィは、そんな計画が進行していることなど知らぬまま、微笑んでいた。


カイルは、遠くからその姿を見つめながら、思わずグラスを握りしめた。


「……なぜ、王宮に入ってこんなにも美しくなった?」


リリィは王女と同じケア用品を使い、同じケアを受けていた。よく磨かれた宝石は輝き始めたのだ。

社交界に馴染むために控えめに装いを整えたつもりだった。しかし、その洗練された美しさは、気づけばカイルの目を釘付けにしていた。


今まではただの少女だったはずなのに。

まるで王宮の薔薇のように、美しく、優雅に咲き誇っていた。


だが、リリィを狙う影がそこまで迫っていることを、彼は決して忘れてはいなかった。

この夜会が、すべての転機となるかもしれない──そう確信しながら、彼は静かにグラスを傾けた。

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