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召喚されて三年、聖女に気に入られ無茶振りをされた結果、店と弟子を持つことになりました。  作者: あかね
新装開店。~支店営業始めます?

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フォーチュンクッキー

 お城から戻ってきたのは、夕方も近かった。お昼過ぎに出たはずなのに……。

 ぼんやりと辻馬車に乗り行先を告げる。いつもは使わないが今は別の考えに頭を乗っ取られていたから危なくって乗合馬車に乗ることはやめたのだ。物理的と社会的に……。なにか、ぶつぶつ呟きそうなのはやっぱり駄目である。


 子供向けのパーティーは明後日。その次の大人向けは来週である。そのあとの話だ。


 ……あれって、片付けくらいには自宅に帰るってことでいいのかな。そのまま、お出迎えするのはいいとして、翌日午前休にしたから泊まっていくでいい? それって私も泊まっていいのかな!? そういう話!? いやいや、シェフのことだ、私は家に帰れとか言う。きっと言う。そうだと思うが、いやしかし!


 そもそも泊まったとして、何かあるとも思えなかったりはする。


 いや、あるのか、今度はあったりしちゃうのか。

 よほど、理性を削らないとあり得ないような気もする。大事にされていると思えばいいのだろうが、ちょっとこう、恋人っぽい触れ合いがですね……。

 と想像して、フリーズした。再起動したころに、店に着いた。


「……師匠、どうしたんです。赤い顔、熱ですか」


 ふらふらと店にはいっていけば弟子に心配される。


「無駄に豊富な想像力にやられてね……」


 あの声でなんか囁かれちゃうのかと思った時点で終了した。

 怪訝そうな顔で見返されても正解は言えない。はしたないを超越している。


「何かいれてるの?」


 それ以上何かつっこまれる前に皆がしていた作業について聞く。これは事前に聞いてなかったことのような気がする。


「お持ち帰り用のクッキーに占いを」


「占いって勝手に書いていいの?」


「まあ、おまじないのようなものですし。いいことがありますよ、と全部書けばいいんです」


 となんかちまちまと小さい紙に書いてる。わりと真剣。子供相手に何すればいいんだと悩んでいたのに、すごい進歩である。


「私も一枚書こうかな」


 そう言って1枚もらう。


「なんて書いたんです?」


「故郷の言葉で、最高に運がいい」


 つまりは大吉。まあ、あれも意外と注意事項多かったりするけどね。

 できあがった紙を焼き立てのクッキーに挟み込んでいく。手際よく進めていて、進歩したなとしみじみ感じる。


 そうして、着々と準備は進められ、あっという間に当日になった。


 そして、当日もあっという間に過ぎ去った。

 終わった後に今までの準備が走馬灯のように駆け巡ったが、報われたのかなんなのかはわからない。

 最後の客を送り返し、お片付け軽く済ませ、みんなを帰宅させる。私はそのままシェフの家にお泊りだ。もらった部屋のベッドにうつ伏せで倒れこみ、今日のことを振り返る。


 まあ、色々あった、ような気がする。

 朝も早くからこの日のために臨時で来てもらったメイドさんたちを動員し、バタバタと準備。始まる前に軽食をとりつつ最終確認。お出迎え。

 お客様をお出迎えし、名札をつけてもらい各席についてもらう。保護者は送ってもらうまで。帰りの時間までどこかで時間を潰してもらう。半数以上が弟子の親族なので、弟子たちが保護者代わりでもある。


 席について和気あいあいと雑談している間に、飲み物と最初のプレートを配る。同じ形のクッキーが4種番号を振り、どれがなに味かというのを当ててもらうゲーム。テーブルのみんなで推理するのも楽しい、と思ったんだけど瞬殺された。味わうものは後回しのほうが良かったらしい。

 それでも、がっつり当ててくるやつはいる。よくわかったなと褒められてうれしそうなニーロの姪っ子ちゃん。可愛い。


 それから、軽食盛り合わせを各テーブルに置いてのご歓談タイム。まあ、これもすぐに消えた。食欲って!? と思わなくもない。取り合いするようなことはないけど、最後の一個どうするか問題は異世界でもあるのかと思った。


 そこからはこちらで用意した出し物タイム。そうして注意を引いている間に、参加型のお楽しみ。おもちゃを釣り上げる釣り。知恵の輪のようなもの。ボードゲームなど。

 小さい子向けには宝物探し。

 景品付きにしたから結構真剣だった。それ以外でも年の近い子同士が集まって話をしていたようだ。


 お疲れのところを休憩のお菓子タイム。弟子考案お菓子に人気投票され、その結果も当日発表。悲喜こもごもな結果は、自分で作るケーキ。材料だけ並べられ、好きなトッピングを選べるのが最高なのだそうだ。


 聞いたときには、それなりに人気はあるだろうと思っていたけど……。考案者のフェリクスはまじかよと頭を抱えていた。これは孤児院の子の好きに盛りたいっていう要望に応えた形のブツだったからな……。


 ……そういうこともあるかと流しておいた。今後のメニューに入るかは不明である。要検討、頭痛い、が正直なところ。


 お土産を渡して、見送って。軽い打ち上げをして、見送って今である。

 大きな問題もなく、順調に済んだと言えるかもしれない。


「……疲れた。もう来年はしない」


 といいつつやるかもしれない……。なんだかすごく楽しそうだったんだよね。こういう催しというのはほとんどないらしい。お行儀よくお茶会ばかりだそうだ。

 年一くらいなら頑張っても、いや、でもな……。


 まあ、今はいいかとそのまま爆睡してしまった。


 翌日、体のあちこちが痛いと嘆きながら起きる。昼前にはみんなが来て片付けの続きをする予定だ。寝坊するわけにはいかない。

 台所に昨日の残りがちょっとあった。

 配られたフォーチュンクッキーは私の分もあった。二つに割って中身を取り出す。


「……大吉」


 まわりまわって自分のものが戻ってきたよ。

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