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召喚されて三年、聖女に気に入られ無茶振りをされた結果、店と弟子を持つことになりました。  作者: あかね
新装開店。~支店営業始めます?

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手袋は乙女のたしなみ(投げてはいけません)

 シオリが家を訪ねた翌日、レイドは城の厨房に顔を出した。

 厨房はいつものように忙しいようでぴりついている。厨房の主が退職すると宣言すればそうなるかとレイドは思い直した。

 王家というより、王の裁可は終わっており覆すことは大変難しい。保留されている案件が今後のもめ事になりそうだ。


 レイドはしばし覗いていたが、ライオットは気が付いているのに気が付いていないふりをしていた。面倒ななんかと思っているらしい。

 当たっている。


「ライオット、ちょっと時間欲しいんだ」


「……何の用だ?」


「チーズクッキー喰う?」


 とレイドは軽く尋ねた。

 ふざけんなよと言いたげな顔でレイドを見るライオットはその瓶を見て黙った。


 なんの変哲もない陶器の瓶に貼ってあるのは店名を意匠にしたもの。今、店も開いていないのだから、直接取引でしか手に入らないというところまで察しただろう。

 そのクッキーは彼女の手作りである。しかも非売品。というところまで気が付いたかはわからない。


「……少し待ってろ」


 不機嫌な顔を隠さずにライオットはいくつかの指示を出していた。

 数分待って、ライオットはレイドを促して外に出た。


「前々からお願いしていたクッキーができたって持ってきてくれたんだ。

 ライオットも味見したいかなと持ってきた。アズール閣下にも見せびらかすから、何枚かしかあげないけど」


「今、忙しいのに?」


「大人向けパーティ用らしい。参考にしたいから意見が欲しいってさ。胡椒入りが欲しいっていっておいた」


「それ、クッキーか?」


「酒と合わせるといいと思うよ。

 ま、それだけだったら一々言いに来ないんだけど、彼女に妻から渡したものがあるから一応、断り入れておこうかなと思ってさ。変なすれ違いもよくない」


「彼女がそんな変なもの渡すわけがないと思うが」


「ほら、わりと手袋ってプレゼントに渡しがちだから、他所の男からもらったのかなんて勘違いしないように。妻のお古なんだけど、ちゃんとした革で質のいい白いやつだよ」


「今の時期に?」


「クッキーの礼と必要そうだったからね」


 季節外れな手袋を欲する理由はライオットにはわからないだろう。あとで、そういうことだと気がつく。そのときに、事前に言っておいたじゃないかと言い逃れするための予防線だ。

 手袋の使い道は寒いときの手の保護だけではない。貴婦人の手を美しく飾ることもあるが、それでも季節が違う。

 男が手袋というとピンときそうだが、女性がとなると想像の範囲を超えるに違いない。


「そういうわけで、覚えておいて」


「……なんか、隠してるよな?」


「隠してる。まあ、お互い様だろ。詮索無用」


 レイドはそういっておいた。

 ライオットもなにか心当たりがあるのか渋い表情のまま同意した。


 レイドはちょっとほっとした。アザール閣下が、彼女に手紙を送っていた。それはレイドも知っている。謝罪文がわからんと嘆いていたのをきいていたのだから。

 ただ、それだけで済ませなかったとは気が付かなかった。


 なにか不穏なものをシオリは感じ、その結果、シオリはレイドの家にやってきた。そして、決闘の作法について質問している。相当まずいことを書いたんだろうと想像できた。

 忙しいというときに、わざわざ、時間を作って直接訪ねる。それもレイドの好みのものを用意して。そうすれば断られないだろうと見越している。

 瞬間的な怒りではない。もっと冷静に見定めるものだ。

 どうやって、こっちの言い分をとおしてやろうか、という考えがある。相手が誰であっても、立ち向かう気概は中々のものだ。


「……まあ、得難い人だからシオリさんは大事にするように」


「言われないでもそうする」


「ところで、彼女、来月末誕生日って聞いたけど知ってる?」


「……聞いてない」


「というところが、お前のダメなところだよ。

 ちゃんと色々用意しとかないと。ちなみに好きな色も知らなかったりする? うちの奥さんいろいろ引き出してたの同席してたから知ってるけど聞く?」


「頼む」


 珍しくも素直に言うライオットにレイドは笑った。


「まず、色は……」


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