表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚されて三年、聖女に気に入られ無茶振りをされた結果、店と弟子を持つことになりました。  作者: あかね
新装開店。~支店営業始めます?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/101

程よくない距離感

前話の最後だけ少々変更しています。

「あのぅ。

 寝れます?」


 ちょっと遠くから声が聞こえた。


「……」


 ライオットはわざと返事をしなかった。起きてるならと話しかけてくる予想がついたからだ。


「あれ、寝ちゃったかな。前も寝落ちしてたし……」


 そんな声が近づいてくる。足音も。


「ちょっとさびしい」


 気落ちしたような声にうっかり目を開けてしまった。


 思った以上に、至近距離に声の主がいた。

 見つめ合って数秒、飛びのかれた。良い飛距離だな、前世はウサギかなんかだったんだろうか。とライオットが思ったのは現実逃避だろう。


「な、なんでっ! 起きてるじゃないですかっ」 


「人の気配には敏感なほうだ」


「うっ。起こしてすみません」


「それで?」


「なんでもないです」


「寂しいんじゃなかったのか?」


「聞いてたんですか……。じゃあ、寝てないじゃないですか」


「寝ていたとは言ってない」


「なんか、今日のライオットさん、いじわる。

 弄ばれる私」


「人聞きの悪い。

 寂しいなら、どうしたかったんだ?」


「寝てるならお隣にいてもいいかなって。気配が気になるなら離れます」


「……少し離れてくれるなら」


「やった」


 そういうとぴったり横に座られた。

 そこまで近いと相手の体温を感じる気がするし、髪からは石鹸の匂いがした。


「毛布も一緒に」


「断る」


 人の理性に期待しすぎなのではないだろうか。

 二枚なら倍温かいですよなどといっているがライオットは黙殺した。

 離れろと言わないのは、なんだか、それだけのことがすごくうれしそうに見えたからだ。


「しばらくお休みなんですよね」


「あと4日。実家に顔を出すから実質2日分だな」


「じゃあ、賃貸契約と雇用契約の話をしたいんで一日ください」


「賃貸契約はともかく、雇用契約?」


「店長してもらうつもりなので!」


「それは保留」


「そこをなんとか。早めに捕まえておかないと捕獲されちゃいますよ」


「誰が雇う気になるっていうんだよ」


「アズール閣下。家の料理人とか言いだしそうです」


「確かに」


「先にちょっとだけ、契約しときましょうよ。お城を退職したら、うちで働く」


「雇用関係は、少し嫌だな」


「じゃあ、共同経営ということで!」


「……まあ、それなら」


「書類揃えておかないと」


「代わりに俺にも一日くれないか?」


「え? あ、いいですけど? なにか、ご用事ですか?」


「何か贈りたいが、好きなものがよくわからない。

 だから、一緒に買いに行きたい」


「……わ、わかりました。

 私も何か贈りたいですけど、何か欲しいものあります?」


「砥石」


「あ、私も欲しいです。いいお店あります?」


「武器屋に買いに行っていつも文句言われている」


「あ、そういう……」


 その他欲しいものというのが、鍋や鉄板など仕事で使うようなものばかり出てくる。


「仕事じゃないものはないのか?」


「えーとー。

 じゃあ、その、お揃いのエプロンとか、どうです? 一緒に、何か作ったりしたいですし」


「可愛くないやつなら考える」


「え」


「店のエプロンは正直どうかと思う」


「ええっ!? か、かわいいじゃないですか」


「俺は嫌だ」


「くっ。じゃあ、かっこいいやつ探し出してやりますよ」


「よろしく頼む」


 彼女は白シャツ、カフェエプロンも捨てがたい、いや、いっそ黒エプロン、いや、でも、などと呟いていたが、不意に黙った。

 どうしたかと思えば、すーっと寝息を立てていた。

 彼女は、早寝早起きが信条です、などと聞いた気がする。かなり頑張って起きていたようだった。


「おやすみ」


 小さく声をかけたが、返事はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ