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召喚されて三年、聖女に気に入られ無茶振りをされた結果、店と弟子を持つことになりました。  作者: あかね
新装開店。~支店営業始めます?

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対象外

 師匠は師匠で女性というか恋愛対象ではない。フェリクスはそう思っているし、事実そうだ。

 しかしながら、その師匠が恋する乙女な顔をしていると微妙な気持ちにはなる。そんな顔、俺に向けたことないと当たり前のことにむっとする。そんな顔されたくもないにもかかわらず、だ。言語化できない唸りたくなるようなアレがある。


 もしかしたら、相手がライオットであるせいかもしれない。

 フェリクスは同僚にも師匠にも言ってないが、ライオット、というよりその実家と因縁がある。それも一方的なものだ。


 天才と言われた少年は12で騎士になった。それも家のコネなどではなく実力で勝ち取った。この異常事態を異常と思わなかったのが、フェリクスの父だ。ライオットの実家はフェリクスの家と同じように侯爵家で、敵対まではいわないでも仲が悪かった。

 あの家の子に出来るなら、うちだってと、妾腹の子を探し出してまで騎士にさせようとした。その結果と言えば、18で騎士になったはいいが、出来が悪いと言われ、つけられた王子とは相性悪く付いて3年で大喧嘩、左遷である。もちろん王子と喧嘩した時点で、絶縁されていた。

 そこから、適当に過ごして、ついには騎士を辞めることになった。しかも、王命。その話がどう伝わったのか絶縁したはずの血縁上の父からはお前はいなかった子だとかさらに格下げされた。

 以降、フェリクスは父親及びその家族はいないことにしている。いまさら、特別扱いしろなどといわれているが無視していた。客ならば客対応はするが、それ以上はない。

 師匠に言って出入り禁止にしないだけ温情ある対応だと自画自賛したいくらいだ。


 まったく、ろくでもない人生。とフェリクスは思うが、この店と店主にたどり着いたのは運が良かった。

 彼女にとっての幸運かはわからない。

 同僚となった弟子は、それなりに知り合いだったり、名はきいたことがあるものばかりだ。それも悪いほうに。よくもまあ集めたなとフェリクスは呆れた。

 彼らの良いところは、上官には従うところだ。悪いところは、気に入らん上官には適当に相手をしたり勝手をしたりするところ。

 そして、半端に優秀である。欠点をゼロにするくらいはあるが、プラスにならない。

 扱いづらいなとフェリクスも思うくらいの個性的な面子だった。


 その彼らも今ではただのお菓子屋さんの弟子。


「師匠、上手くやってるかなぁ」


「どうだろ。意外とこう、決めるときに逃げ腰」


「出かける前に私おかしくない? と5度聞かれたよ。しかも全部俺」


「カレンは必ずかわいいって言うから聞きたいんだろ」


「師匠は可愛いけど、なんか覇気が出てるときあるからな」


 そんな話をしながら、改装した店内で試作するお菓子の計画を練っている。一人一種類、なんか作るようにというお達しだ。今までのものと同じでもいいし、ちょっと変えてもいいという。

 子供向けパーティーの余興として使うらしい。当日、投票で一位をとったものは期間限定販売される。


 まず、子供向けというところでつまずき、親兄弟に色々聞いたりするところから話が始まる。そこから集まって、なんとなく話しながらアイディアだしをしている状況だ。

 さすがに丸かぶりは困るので、素材や種類については話し合いが必要でもある。


「つーか、アレくらいあからさまに好きとアピールしているにもかかわらず、いまいち反応が鈍いライオットさんがどうかと思う」


「別に嫌いってわけでもないだろ。ちょっと大人な対応してるだけで」


「好きという感じもしない」


「二人で出かけているの見かけたことあるけど、やっぱり俺ら相手と違うぞ。雰囲気が柔らかい」


「じゃあ、なんで俺らにも嫉妬しないんだ?」


「あれは強者の余裕じゃね?」


「そもそも相手にされてない!?」


「どちらかというと、今回は、うちの嫁が迷惑かけてないか? くらいの雰囲気がした」


「それだ」


「むしろ確保済みの油断か。そっかー、じゃあ、フェリクス、焦らせ要員してこい」


「は?」


「ほら、いい感じに近いから嫉妬を煽って」


「むりっすよ。そもそも、師匠にとって俺ら男じゃない」


「それな。ルイス氏の帰還が望まれる」


「あそこまで好きだとアピールしたら、俺らもチャンスが?」


「あってするのか?」


 沈黙があった。


「僕、シアさんがいるんで」


「あ、俺も幼馴染が」


「最近縁談がさぁ」


 口々にお断りの言葉が出てくるのは、要するに、師匠は師匠で、それ以外にする気もないということだ。

 平和でよいことだとフェリクスは思う。


「ま、師匠は師匠で頑張ってもらうしか」


「そうだなぁ……。ま、ほかの雑務は僕たちが分担しとこう。

 閣下への請求書とか」


「聖女様へも忘れずに」


「それから、関連各所への連絡とかな」


 そんな話をしながら時間は過ぎ去っていくのだった。

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