それは卑怯
本日三回目更新です。
卑怯。まさしく。
サイゾウは地に伏した。無残な評価に土に埋まりたい。いやそれより。
がばっとサイゾウは身を起こした。
「拙者、料理はできぬと知っていての勝負か」
「もちろん」
一切躊躇なく、人の心のない余裕の笑みが腹が立った。
「ライオット、貴様、騎士の心を忘れたのか」
「ただの料理人に何を求めてるんだ?」
呆れたように言い返されてサイゾウは苛立ちを覚えた。
「それだけの腕を腐らせるとは」
「向いてないんだよ」
苦笑いして、背を向け立ち去っていった。そのあとを女性が追っていく。それに合わせたように隣国の連中は引き上げていった。
もう用はないといったところだろう。
ぐぬぬと唸ればクリス将軍がサイゾウの頭をぽかりと殴る。
「往生際の悪い。それから一人暮らしは料理くらいしろ。人類が食べられないものは評価できん」
「屋台が充実しているので十分なのですよ……」
奥方もいて屋敷も使用人もいるような将軍様にはわかるまい。サイゾウは慎ましく一人暮らし。しかも長屋で。広い家を持て余し自発的に引っ越ししたが、金がないのかとひそひそいわれていたりもした。さらに同じ長屋のものには無職疑惑をかけられている。
「しかし、被害はなく利益はあった。これでよかったかもしれぬ」
「はぁ、そーですか。あ、忍びの連中拾われていったのはよろしかったので?」
「良くはないが、もとより捨てるつもりであったのでな。好きにすればよかろう」
この淡々とした扱いは好きではないのだよなとサイゾウは思うが表には出さない。上の方から数えたほうが早いような偉い人に逆らう気は毛頭ないのだ。
「引き上げよう」
「よろしいので? 今なら間に合いましょう」
「約束を違えずにいることこそ彼女の心象良く過ごすコツだ。言わぬことを守る気はないがな」
「さようで」
サイゾウはやなじじいと思いながらも追従した。保守大事。無職はツライ。
「それにしても奇妙な奴らだな。薔薇の騎士」
「ですかね……」
なんだか嫌な予感がした。
「面白そうなので、作ってみようか」
「おやめください」
速攻止めた。どうにも餌食になるのは自分のような気がしたのだ。
のちにお庭番というものが発生したりするのだが、これが原因かは定かではない。
将軍→どこぞの漫遊をしそうな感じのフットワークの軽い将軍。もちろん、国内限定だが聖女の浄化の旅にもついてきた。既知ではあるが、くそじじい呼ばわりである。
拙者→過去の文献の侍かぶれ、実力はあるので始末に悪い。どこぞの浪人とか思われている。