ご旅行ですか?
「いやぁ、いい天気でよかったっすね」
「待てこら、おまえら、なんですました顔で門の外で待ってた」
「食材を探す旅ですよ。
自由にしていいって言ったじゃないですか」
フェリクスとフローリスは勇者である。言いだしたグスタフはさっさと隠れたというのに。
コンラートも怒れる師匠に立ち向かう蛮勇はない。ので、こっそり馬車の陰に隠れた。幌付き荷馬車なので隠れる場所には事欠かない。
向こう側からの言い争いに耳を傾けていたら、何かガサゴソ音がしていた。
なんだ? と見れば。
「あ、どうも」
荷馬車に忍び込もうとしている謎の人物と目があった。
「な、だっ」
「しーっ。返品きかなくなってからババーンと登場するので黙ってて」
謎の人物、聖女様。この間、会ったばかりだから見間違いもない。
コンラートはいっそ卒倒したかった。前にはいかれる師匠、後ろには微笑みの聖女。
なぜだろうか、後ろの方がまずい気がした。
「あ、ちょっと荷物暴れるかもしれないからごめんね」
「何もってきたんですか?」
「ひみつー」
悪い笑顔だった。
師匠に言うべきかコンラートは迷って馬車の陰から現場を確認した。
「ちょ、ちょっとなんでシアさんまでいるのっ!」
「ハブられると寂しいです。
ご一緒しましょ。
ほら、あれです。枯れ木も山の賑わい」
「それ、いい意味じゃないから……。どこから覚えてきたの」
「聖女語録です」
「そんな本出てるの?」
「ベストセラーです」
え、知らないんだけどとコンラートの隣から聞こえてくる。
アイディア料巻き上げないとだめねと呟く聖女様。コンラートは周りを見回したが、誰もいなかった。おかしい、ここには12人もいるはずなのに。残り9人どこ行った。
師匠に恐れをなして逃げ出したとしか思えない。
あるいは、あ、なんかまずいのいると気がついて撤退したか。察知能力が異常に高い。
「ま、あっちが騒いでいるうちに、乗っちゃうね。
しばらくよろしく。我らが騎士たちよ」
「へ?」
「あ、知らないの?
ローゼンリッターの意味」
「師匠の師匠がつけたかった名前ってのしか知りませんね」
「そういう名前だったんだ。
ふぅん? いい名前よ。たぶんね」
たぶんってなに!? と聞き返す前に聖女様は馬車に乗り込み、揉めてる師匠たちは静かになった。
「わかったわよっ! みんなで旅行ね!」
折れた。
まあ、そうなるだろうと大多数が予想したとおりだ。
案外、甘い人なのだ。
弟子。
っすの人→フェリクス
幼馴染の人→フローリス
糸目の人→グスタフ
でかい人→テオ
不幸体質の人→コンラート
貧乏くじの人→リーグ




