23年越しの自己紹介
私は何度も心霊体験をしている。夜勤の時なんて私と組むと普通ではありえない体験をするから怖いと、いい年したオジサンに怖がられてしまうほどだ。
そんな私の2021年11月に起きた出来事。
ノンフィクションです。
私は関西に住む一般の社会人の男です。
私の住むアパートでは心霊現象がよく起こる。
休みの昼間に私は窓と和室の引き戸を開けて風通しを良くしてから昼寝をしていた。
すると和室の引き戸の閉まる音で目が覚めた。目線の先にグレーのソックスと濃い緑のロングスカートが目に入った。
彼女は合鍵を持っている為時々アポ無しで来る時があるので、来たんやなと特に気にしなかった。
台所の方までいってiQOSを吸うのが彼女のルーティンなので吸い終わるのを待っていたら、私の足元でモジモジしている足が寝転がっている私の目にはいったので
「おい、しの、何をモジモジしよんねん」
私は鼻で笑いながら声をかけると
「え?私かちだよ。」
透明感のある女性の可愛いらしいが聞き覚えのない声がした。
「いやいや、ホンマに誰やねん!」
私はそう叫びながら飛び起きた。だが目の前には誰もいなかった。
ふと隣を見ると和室の引き戸は閉まっていた。
また彼女が妹を連れてイタズラをしに来たのかとおもってトイレ、洗面台、和室を見ても誰もいない。玄関にピンヒールもない。
おいおい、今のはまさか、、と思い彼女に電話をかけた。
「今どこにおる?」
「今?今日はヘルパーの仕事やから行けんって言うたやん、ボケてんの?」
「あー、悪い、仕事やったよな、頑張って
」
私は電話を切って立ち尽くした。だが、思った
かち なんて苗字か名前かわからないが、そんなのあるのか?と。
ネットで調べて出てこなかったら夢オチだ。
私はそう思って調べた。
でた。ある。存在する。
かちは可知と書き、岐阜県にそれなりに存在する苗字のようだ。初めて聞く苗字だし、岐阜県にも行ったことないのになんで自分はそんな苗字がでてきたんだ、、、
私は考え込んだ。その時父親が何度も私に聞かしてきたあの話を思い出した。
「お前は見える子や」父親がよく私に言っていた。
私には小さい頃の記憶があやふやなのですが、ある出来事について父親が酒に酔う度に同じ話をしていました。私には薄い記憶しかないですけどね。
私が保育園児の時に母方の曾お祖母さんが亡くなりました。曾お祖母さんの地元が岐阜県にあった為、家族親類みなで関西、中国地方からはるばる岐阜県に出向いての大きな葬儀場でお葬式が執り行われました。大きな会場の為他の葬儀も行われていました。
火葬の待ち時間中に父親がとんでもないものを見てしまいました。
私が壁に向かってニコニコと笑いながら喋っていたのだそうです。父親は慌てて私を抱き抱えてその場を離れたそうです。
その時私は
「あのお姉ちゃんめっちゃおもしろかったのにー。」と言ったそうです。
父親は「へー、ほーか、お姉ちゃん何て名前や?」
私は「かちさんって言うらしいでー」と言ったらしい。
父親はあまりにも具体的な話のため流した方がいいと思い、へーほーか。と適当に相槌を打ちその話を終わらせたそうです。
そして葬儀は滞りなく終了し、会場を後にしようと歩いていた時、別のフロアで行われている葬儀の受付前髪を通った時父親は見た。
可知という名前の葬儀が今日同刻行われていることを。
私は当時保育園児だ。漢字はおろかひらがなもろくに読めないのに、可知という関西では珍しい苗字を知ってるわけも読めるわけもないのだ。
「お前はあの時、可知いう女の霊と喋ってたんや」
何度も何度も聞かされた話がフラッシュバックした。
どこかで聞いたことあるような気がすると思ってはいたが、あの時の女性が23年越しに私と言葉を交わした。
でも怖いという感情がなかったのは23年間ずっと可知さんは傍にいたからかもしれない。ずっと身近にいる。そんな安心感が可知さんの雰囲気や声から感じ取れたからだ。
あれから夜11時にをまわったころ、たまに可知さんを部屋で見る機会が増えた。
可知さんが現れる前日は決まって心霊現象が起きる。私の足を持ち上げられたり、冷蔵庫の前に知らない小太りのオッサンが立っていたり、壁や窓の天井あたりをコンコン鳴らされ続けたり。
極めつけは和室の引き戸をガリガリ引っ掻く音が聞こえることだ。床から20cmほど上のあたりをずっと爪でガリガリ引っ掻く音が聞こえる。引き戸を開けてはならないと本能が警告する不気味さだ。
引っ掻く音が激しいと次の日可知さんは現れる。その日はガリガリ音は鳴らない。きっと私のために叱ってくれてるんだろう、、ありがとう可知さん。
ノンフィクションなんで怖くないでしょうが、リアルを感じたい人には良いかもしれないですね。