悪役令嬢付きの侍女に転生したので、お嬢様改造計画に着手します
黒森 冬炎様主催『ミラクル•チェンジ〜改造企画〜』参加作品です。
久々にキラーキーワード『悪役令嬢』『婚約破棄』『追放』を入れてみました。
お楽しみいただけましたら幸いです。
私はリリィ。
公爵家令嬢フリティラリアに仕える第一侍女。
しかし私にはもう一つの名がある。
花園百合子。
前世では日本でOLをしていた。
ブラック仕事で終電を逃し、ふらふらの帰り道に流れ星を見かけ、「大好きなゲームの世界に行きたい!」と願ったら、その流れ星が向きを変え、頭にごちん。
気が付いたら、『mind and heart』略してマイハーの世界でリリィとして転生していた。
「夢が、叶った!」
このゲームはいわゆる乙女ゲーム。
平民である主人公ロゼットが様々な障害を乗り越えて、イケメン達と結ばれるゲームだ。
勿論お約束のシーンも存在する。
「フリティラリア! 私は君との婚約を破棄する!」
「何ですって!?」
婚約者である王子の宣告に、公爵家令嬢であるフリティラリアは驚愕の声を上げる。
「君は公爵家令嬢という立場をかさに、ロゼットをはじめ身分の低い者へと横柄な態度、無理難題、陰湿なイジメ、無視……! 全て証拠は上がっているのだ!」
「そ、それは、平民のような躾の足りない存在を厳しく教えねばと……! そう! 貴族としての義務ですわ!」
「そのような思い上がりが間違っている事がわからないのか! この宴の食事も、装飾も、君の着ている豪華なドレスも、平民の手で作られているのだぞ!?」
「う、そ、それは、私達が尽くされるべき存在であって……!」
「見苦しいぞフリティラリア」
辿々しい自己弁護は、重々しい言葉で遮られた。
そこにはフリティラリアの父、ショコリーテ公爵が苦々しい顔付きで立っていた。
「お、お父様!? これは、その……!」
「王太子殿下。娘の不徳をお詫びいたします。謹んで婚約破棄の旨、承りましてございます」
「そんなっ! お父様!」
「黙れっ! 我がショコリーテ公爵家に泥を塗りおって! お前は勘当の上追放処分とする! 遠い地で己が不徳を考え直すが良い!」
「そんな! お父様! お父様ー!」
泣き叫ぶフリティラリアから、誰もが目を逸らす。
彼女は追放され、その後の行方を知る者はいない……。
そう、私が仕えるフリティラリアは、いわゆる悪役令嬢なのだ。
その結末を知る私は、フリティラリアを改造するべく、準備を進める事にしたのだった。
「どうして、どうしてこんな事に……」
「お気を確かにお嬢様。公爵様のお怒りが解ければ、またお家に帰れます。それまでは私がお守りいたしますから」
「ありがとう、ありがとうリリィ……!」
王子から婚約を解消され、父であるショコリーテ公爵から勘当を言い渡され、地方へと追放される馬車の中、私はフリティラリアの頭を抱きしめ、撫で続けた。
そう、私は一切手出しをしなかった。
平民である主人公へのいじめを自慢げに話すフリティラリアを諌める事をせず、流れに任せた。
何故ならこれが私の望む結末だったからだ。
「ロゼット……。私は輝くようなあなたが妬ましく、それでも惹かれていました……。それがためにあなたに辛く当たってしまいました……」
「フリティラリア様……! 私はフリティラリア様のお言葉の一つ一つがありがたく、また嬉しく思っていたのです!」
「まぁ……! ロゼット……!」
「フリティラリア様……!」
「いや……。フリティと呼んで……」
「わかりました……。フリティ……」
そう! 隠し要素のフリティラリア攻略ルート!
ガールズラブ大好きな私は、何度となくこのルートを楽しんだ。
そして今、全てを失い、弱りきったフリティラリアがここにいる!
お金を貯め、手に職もつけ、二人暮らしの準備は万端!
さぁここからゆっくり私色に染めていく。
不慣れな仕事をさせて、落ち込んだところを慰めるのも良い。
公爵家での思い出を語り、ホームシックを誘発して添い寝するのも良い。
私の手料理で胃袋を掴んだり、私の仕立てた服を着させたり……!
あぁ、考えただけで胸が高鳴る!
私のお嬢様改造計画は、今動き出す……!
読了ありがとうございます。
ヤンデレじゃないよ!
ヤンデレだとしてもヤンデレという名の淑女だよ!
ガールズラブは専門ではありませんが、たまにはこういうのも良いかなと。
本格的なのは勘弁してつかぁさい!
名前ですがリリィもフリティラリアも、まんま百合から来てます。
ちなみに黒百合ってChocolate Lilyと呼ぶそうですね。
フリティラリアの苗字はそういう事です。
最後に黒森 冬炎様、企画に参加させていただき、ありがとうございます!