悪を滅して体現せよ
高校時代に書いたものです。
ロッカールームが汚いのが嫌で、勢いで書きました。
公開も後悔もしていませんでした。
でも今はコウカイしています。どっちの意味でも。
正直に言って、俺は学校が好きじゃない。
ロッカールームにたまって通行人の邪魔をする女子軍団。はげしく「メイワク」だ。さらに嫌なのは、ゴミを捨てていく奴ら。モラルの無い奴らが食べたり飲んだりしていったあとの場所は悲惨だ。それだけでなく、教室の入り口で喋っている奴らはもうモラルの欠如とかの問題ではなくそれ以前の問題だ。彼らの両親はいったいどんな教育をしたのか? 人間としてどうなのか?
俺はそんな廃れてきた学校の精神面を正すべく動き出した。
「おい! 貴様ら! そんなところにゴミを捨てるな! う~ん、コレは殴られるな」
俺は今日、一時間目からこの学校の馬鹿共を鍛えなおすために、彼らに言うべき言葉を探していた。
「スイマセン、こういうことはやめてくれませんか? ……いや、コレはなめられるかもしれない」
ブツブツと独り言を、もう三時間ほど続けて、四時間目の体育も終わりの時間に近づいていた。現在、体育は自由時間。それというのも今日は持久走で、俺の組は前半に走ったから後半は自由にしていても良いのだ。今俺は後半組みの馬鹿一同がトラックをたらたら歩いているのを睨み付けている。
「何かいい方法が無いものか……」
だらだらしている馬鹿者達をこれでもかと思うほど頭の中で罵倒しながら、ふと俺は良い方法を思いついた。
「お! 良い事おもいついた!」
なんと素晴らしきアイデアだろうかと、自分で自分を褒め称えながら、俺はそのアイデアを早速実行に移すことにした。
「……え~、授業中失礼いたします。授業の無い先生方は至急会議室へお集まりください。繰り返します」
五時間目の数学の時間。いきなりそんな校内放送が流れた。
そしてクラスの中は、昼休みに生徒が殺されたという、変な噂で持ちきりだった。
「ふふふ、してやったり!」
俺は一人ぼやきながら満足感に浸っていた。周りの生徒は、授業中であるにもかかわらず、愚かにも隣の生徒と話を始めていて、授業どころでは無かった。
「ねえ、知ってる? 二組の佐藤君が殺されたんだって」
「知ってる。なんか校庭の真ん中に上半身が埋まってたらしいよ?」
「え、バラバラ殺人? ちょーやばくない?」
「いや、バラバラじゃなくて、言葉通り上半身が校庭に埋まってたらしいよ」
「そうそう。埋まるというよりもめり込む? みたいな」
俺はその会話を聞いてますます満足感に浸っていた。内心では殺したのが俺だとばれないかびくびくしていたが。
というのも、俺は昼休み中にこんな事をやってのけたのだ。
昼休みに、二組の佐藤君を屋上へと呼び寄せた。そして俺は奴に向かってこう質問した。
「ねえ、佐藤君ってさ、ゴミを道とかに捨てないでちゃんとリサイクルしてる?」
もちろん佐藤君はそんな善良な行いなどするわけも無いことを、俺はちゃんとリサーチして知っていた。こいつはリサイクルどころか、ゴミさえちゃんとゴミ箱に捨てないでそこらへんに捨てているのだ。特にロッカールームに散らばっているゴミの八十%はこの佐藤君が排出している。これもリサーチ済みだ。
佐藤君はもちろん俺の言葉なんて理解できなかったみたいだから、こう返答した。
「は? 何言ってんのお前? マジキモイよ。つーか殺すぞ」
そこで俺は言ってやったのさ。佐藤君には死んでもらわなければならなかったから。
「殺すのは僕のほうだよ」
佐藤君は「あ?」と小さく言ったのを最後に絶命した。
俺はその時、彼の片手をとって、その瞬間だけ筋肉を数千万倍に増加させて、佐藤君ごと校庭のど真ん中にアタックシュートを放ったのだ!
そして見事、彼の上半身は校庭に埋まった。というかめり込んだ。
なぜ俺が佐藤君を狙ったのか? それは簡単だ。佐藤君はこの学校の悪の親玉的な存在だったからだ。それを消す事によって学校中の悪は震え上がるだろう?
「そう、俺は新世界の神になる!」
佐藤君を投げ飛ばしたあと、某漫画の主人公の様な台詞を吐いた俺。それはとてもかっこ良かったものだろう。読者の諸君は残念ながら、その映像をごらんいただくことは出来ない。
まあこの調子でどんどん悪を消していけば、きっとモラルのある学校が築かれることだろう。
俺はそう考えながら屋上をあとにした。
五時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。それと同時にまた放送が入り、過去への回想に浸っていた俺は現実へと引き戻された。
「……え~、本日は、六時間目とホームルームはなしになりました。生徒の部活動は禁止です。完全下校ですので、放課後は学校に残らないでください。繰り返します」
学校がこの緊急事態に、生徒を残らせないという対策をとった。マズイな。その前に出来るだけ悪は消しておきたかったのだが。
俺はすぐさま、先ほど投げ飛ばした佐藤君の携帯を取り出した。投げる直前に何かと便利になるだろうから携帯を奪っておいたのだ。
俺はアドレス帳を開いて、悪逆非道で名を知らしめている学校中の馬鹿共にメールを送った。
「屋上に来て欲しい」
死んだ奴からのメールが来ては誰でも驚くだろう。さらには、真相を知るために屋上へとやってくるに違いない。悪というのは意外と義理堅いのだ。
俺は送信し終えると早速屋上へと向かった。
屋上で待つこと五分。悪の軍団がやってきた。鈴木君とその子分たちだ。
他にも悪女中村とか、リーゼント野郎小林とか、サボタージュ吉田とか、一目で悪そうなことをしていることがわかる様な奴らが来た。その数およそ三百人。多いな。
「てめえ! 一組のキモオタメガネ野郎! 何でお前がここに! ……もしかして、佐藤さんを殺したのはおめえか!」
ほほう。意外と鋭いんだな。馬鹿のクセに。と思ったがここは冷静に相手をすることにしよう。
「そうだよ。僕だよ。君らも死にに来たの?」
「バーカ、おめえが死ぬんだよ! みんな、やっちまえ!」
三百人は一斉に俺に向かって走ってきた。だが俺には、奴らの動きなど簡単にいなすことができる。なんといっても俺は、筋肉の量を自在に操ることが出来るのだから。
「遅いな……」
俺は瞬時に脚力を五千倍にして、鈴木君以外の奴らを校庭のど真ん中へと投げつけた。言わずもがなだが、途端に奴らは絶命したことであろう。
「残るはお前一人だ」
「な、みんなはどこへいった!?」
俺は少々うんざりした。
「見えてないのか……。あそこを見てみろ」
俺は校庭のど真ん中を指差した。そこには先ほど投げた人の地面から突き出ている足だけで「懲悪」と描かれていた。
「俺はお前らのような悪や非常識な奴らが嫌いでね。特にモラルの無い佐藤なんかをみていると、前から殺したくてうずうずしてたんだ」
ふふふ、と含み笑いをもらす俺。校庭へと目をやっている鈴木君は、ここから人を投げとばしたという事実を教えたあたりから、驚きすぎて目が点になり、口が閉じないでいる。
「あと一人で、あそこの懲悪は完成する。そしてその最後の一人がお前だよ」
「あ、ありえねえ、意味がわかんねえ……。これは夢か?」
「夢ではない、紛れもない現実だ」
そう言って俺は全身の筋肉を数千万倍にしながら鈴木君に近づく。
「ぐえ、キ、キモイ。お前の筋肉は非現実的だ! 非常識だ!」
鈴木の、その言葉を聞いた途端、俺の頭は真っ白になった。
「ひ、非常識だと……」
いつも常識的な行いをしてきた俺にとって「非常識」と言う言葉は生まれて一度も言われたことがない。俺が非常識であるわけが無い。非常識。非常識。ひじょうしき。ヒジョウシキ。
「そ、そんな、俺の筋肉が、俺が非常識だったなんて……う、うわああああああ!」
俺は錯乱した。わけも分からず屋上から跳躍して、校庭のど真ん中へと頭から突っ込んだ。そして俺は死んだ。
こうして、この学校の校庭には「懲悪」を体現した人間文字が完成し、それ以来有名な観光地となった。
なんでこんなの書いたんでしょうね。
ただの勢いでここまで意味不明な文章を書けるのはもはや病気としか言いようがないですね。
当時は病気だったんでしょう。
ちなみに作者の母校は観光地にはなってません。
ええ。そうなんです。
実はこの話、フィクションだったんですよ。