武器の墓場
「あれ?」
トラックは私の目の前まで迫っていたはずだ。
なのに、私は衝撃で宙に舞うこともなければ、道路に引きずられるようなこともない。
ひょっとして、奇跡的に私の目の前でトラックが止まったのだろうか。
私はうっすらと目を開ける。
トラックも道路もない。
私の目に入ってきたのは、地平線と一軒の家。
それに…
視界の一面に広がる武器、武器、武器。
剣に斧、それに槍に弓。
あれは、確かモーニングスターとかいうやつで、あれは鎖鎌?
土中に突き刺さっているものもあれば、無造作に草原に山積にされているものもある。
学校に向かおうとしていたわけだから、時間は朝の8時前。
なのに、今にも沈みそうな太陽が、武器の山をオレンジ色に染めている。
まるで、武器の墓場みたいだ。
「どっちかっていうと、地獄っぽいな」
夕暮れどきの色と突き刺さる剣は、むかし子どものころに見た絵本の地獄の風景を思い出す。
「どうせなら異世界転生ものがよかったんだけど…」
体はどうも私のままだ。
これはひょっとして、死の間際の夢とか走馬灯なんだろうか。
「あの家…いかにもあそこに行きなさいって感じだよね」
怪しいけど、他に行くべき場所も見当たらない。
「まあ、ひょっとしたらチート能力をくれる女神様とかいるかもしれないし…」