第二十八話:愛弟子
【※大切なご連絡!】
なんと今日、本作のコミカライズが始まりました!
詳しくはあとがきに書いていますので、どうか最後まで見ていただけると嬉しいです……!
それから三十分余りが過ぎる頃、ギルドの扉がギィと開き、大柄な冒険者が入って来た。
身の丈2メートルはあるだろうか。大きく鋭い瞳・鷲のような鼻・立派な白い髭――元A級冒険者ドワイト・ダンベルさんだ。
周囲を見回した彼は、こちらに気付いたのか、スッと右手をあげる。
「すまない、アルト殿。所用があり、少し遅くなってしまった」
「えっと、校長先生の愛弟子って……ドワイトさんだったんですか?」
「うむ。エルム老師とは一時期、パーティを組んでおってな。もうかれこれ三十年前になるか……。あのときは随分としごかれたものだ」
ドワイトさんはスキンヘッドをポリポリと掻きながら、どこか苦虫を噛み潰したような渋い表情を浮かべる。
「そんなことより、本題へ入ろう。老師より、かなり逼迫した状況だと聞いておるぞ。なんでも、旧友が傀儡回廊から帰らんと?」
「はい……レックス=ガードナー、冒険者学院時代からの友達です」
「『万優の龍騎士』か……。確かに、討伐隊のメンバーに入っておるな」
深刻な表情を浮かべた彼は、「本件について、儂が知っている情報を共有しておこう」と切り出した。
「レックス殿を含めた冒険者パーティ連合が、件の傀儡回廊に臨んだのは二週間前。数日にわたるダンジョン攻略の末、最上層にて復魔十使と思われる強敵と遭遇。壊滅的な被害を受け、敗走を始めたのが五日前――。これはつい先ほど、遠見の魔術を得意とする、古い情報屋から買ったものだ。おそらく間違いないだろう」
「……五日……っ」
王鍵による事象の拒絶は、三日以内の出来事に限られる。
最悪の場合――レックスが死亡していた場合、もはやどうすることもできない。
(……いや、変なことを考えるな……っ)
レックスは強い。
そして何より、信じられないほど頑丈だ。
あいつがそう簡単にやられるわけがない。
「アルト殿、顔色が優れぬようだが……大丈夫か?」
「すみません、続けてください」
ドワイトさんはコクリと頷いた後、懐から簡易的な世界地図を取り出し、それを机の上に広げる。
「儂等が今いるのはここ王都の冒険者ギルド、傀儡回廊は遥か南西の方角、灼熱の火山地帯の中央部に位置する。道中には深い渓谷があるゆえ、迂回ルートを取らねばならん。徒歩で五日、早馬でも三日はかかってしまう。当然、時間を掛ければ掛けるほど、先行した冒険者パーティの死亡率は上がる。……アルト殿の召喚獣で、時短を図れないだろうか?」
「そう、ですね……。ワイバーンにお願いすれば、渓谷を越えられるので、半日も掛からずに着くかと」
「おぉ、それは助かる。であれば、すぐにでも発とう」
彼はそう言うと、地図の南西にある小さな街を指さした。
「先も言った通り、傀儡回廊は灼熱の火山地帯にある。畢竟、ダンジョン内には火属性のモンスターが跋扈しておるだろう。まずは麓町のダブリスへ移動し、耐火装備を整えてから傀儡回廊へ入る。この流れでよいか?」
「はい、問題ありませ――」
俺が頷くよりも早く、
「大丈夫です」
「それでいきましょう」
ステラとルーンが力強く返事をした。
「えっ」
「何を驚いた顔をしているの?」
「当然、私達も行きますよ?」
「いやでも、傀儡回廊は本当に危険なダンジョンで――」
「そんな危険なところへ、アルト一人で行かせられるわけないでしょ?」
「レックスさんを助けたい気持ちは、私達も一緒ですからね。アルトさんが行くというのならば、もちろん同行させていただきます」
ステラとルーンは頑固だ。
一度こうだと言ったら、そう簡単には考えを曲げない。
俺がどうしたものかと困っていると、ドワイトさんが口を開く。
「まぁ、問題あるまい。ステラ殿はB級冒険者『魔炎の剣姫』。ルーン殿は未だC級だが、『表裏の魔女』と知られ、後方支援は一級と聞く。戦力としては申し分ないじゃろう」
「そう、ですね」
大ベテランの冒険者が、太鼓判を押しているんだ。
きっとその判断に間違いないだろう。
(それに何より……ステラとルーンは強い)
ステラはあの術式さえ使えば、まず以って負けない。
ルーンは表裏の魔法を使えば、ある意味で最強になれる。
二人の『異質な強さ』は、冒険者学院で一緒に学んできた俺が、他の誰よりもよく知っている。
だから――きっと大丈夫だ。
「ステラ、ルーン、力を貸してくれるか?」
「当たり前じゃない」
「はい、もちろんです」
こうして俺たちは、難関ダンジョン『傀儡回廊』の攻略に乗り出すのだった。
なんと今日、本作のコミカライズが始まりました!
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