第二十四話:完全復活
万象天握のネタは割れた。
『幻想神域』は広義の結界術に属するため、天領芒星が生きている現状、ルルはその切り札を使うことができない。
つまり――奴を仕留めるには、今このときが最大のチャンス!
「ステラ、ルーン! 俺はこれから約一分、下下炎獄を完全召喚し、『オルグの本尊』を呼び出す! オルグがイリスを抑えている間に、二人はなんとかしてルルを倒してくれ!」
「えぇ、わかったわ!」
「承知しました!」
戦闘方針が決まり、にわかに勝機が見え掛けたそのとき――パチパチパチと乾いた拍手が響いた。
「――見事じゃ、アルト・レイス。圧倒的な魔力量・卓越した召喚術・類稀な戦術眼、お主ほどの召喚士は、神代にも二人とおらぬじゃろう」
イリスは純粋な賞賛を口にした後、飛びきり邪悪な笑みを浮かべる。
「しかし、残念だったのぅ。『時間切れ』じゃ」
次の瞬間、彼女を封じる結晶に巨大な亀裂が走った。
「くそ、やられた……っ」
イリスには、天領芒星を崩す二つのプランがあった。
一つは魔力柱をへし折り、外側から崩すこと。
一つは第五術式を破棄し、内側から崩すこと。
外と内――二つの破壊工作を同時に進めていたのだ。
(さすがは神代の魔女、老獪な手管だな……っ)
俺が奥歯を噛み締めている間にも、大魔王の構築した最強の封印術は崩壊し、そこに秘められた膨大な魔力が霧散していく。
神々しい魔力柱が一つまた一つと消失し、巨大な結晶が粉々に砕け散った次の瞬間、
「……き、た……っ。きたきたきたきたぁああああああああ……!」
身の毛のよだつような極寒の魔力が吹き荒れ、辺り一帯が銀世界に染められていく。
「『千年』……言葉にすれば一瞬じゃが、本当に……本当に長かった……」
完全復活を果たしたイリスは、万感の思いの籠った呟きを零す。
「む、無理よ……っ」
「こんな化物といったいどうやって戦えば……っ」
ステラとルーンは、イリスの放つ絶大な魔力に当てられ、完全に戦意を喪失していた。
「さてさて、魔王様の天領芒星もなくなったし、ボクの幻想神域も解禁だね! これは一気に形勢逆転、かな?」
切り札を取り戻したルルは、無邪気に微笑む。
「さぁアルト・レイス、これより神代の魔術合戦を始めようではないか!」
かつての力を取り戻したイリスが、極寒の冷気を解き放つ中、
「ふぅー……やっぱりこうなったか」
俺は一人、大きなため息をつく。
千年前の封印術式を維持・補強するなんて、土台無理な話だったのだ。
ならばどうするか?
――原点に立ち戻り、封印を張り直せばいい。
俺は『封』の手印を結び、正真正銘、持てる全ての魔力を解放する。
「――封印召喚・天領芒星」
次の瞬間、五芒星の五角から、新たな魔力柱が立ち昇る。
「小僧、貴様……まさか……!?」
「イリス、『二つのプラン』を同時に進めていたのは、何もお前だけじゃないぞ?」
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