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第十一話:魔術の極致

 偶像(ぐうぞう)召喚――。

 人々の信仰から生まれた偶像を魔力によって構築し、この世界に実体として生み出す召喚魔術だ。


 半神(はんしん)半鳥(はんちょう)の偶像――比翼神(ひよくしん)アゴラの右ストレートを食らったレグルスは、凄まじい速度で吹き飛び、遥か後方の壁に全身を打ち付けて、ゆっくりとズリ落ちた。


「……君、何者……?」


 口元の血を(ぬぐ)いながら、奴はゆっくりと立ち上がる。


「アルト・レイス、ただのD級冒険者ですよ(『結界術』という緩衝材(かんしょうざい)があったとはいえ、アゴラの一撃を食らって、すぐに立ち上がってくるのか……見た目よりも、かなり頑丈だな)」


「あはは、バレバレの嘘はやめてくださいよ。さすがにその魔力で、『D級』はあり得ない。リスト(・・・)に載っていなかったことから判断して……『未登録のS級冒険者』、ですかね?」


 レグルスがわけのわからないことを言っている間にも、アゴラへ大量の魔力を供給(きょうきゅう)する。


「アゴラ――破城(はじょう)翼撃(よくげき)


「ガゥル!」


 膨大な魔力を身に纏ったアゴラが、音速を越えてレグルスのもとへ突き進む。


「うわぁ、とんでもない魔力の(こも)った一撃ですね。ただ――神螺(しんら)転生(てんせい)


 アゴラの翼とレグルスの右手が激突したその瞬間、


「アグ、ォ……ガ!?」


 アゴラの体が急激に膨張し、まるで風船のように(はじ)け飛んだ。


「この程度じゃ、復魔十使(ふくまじゅうし)は倒せませんよ?」


「……やりますね」


 まさかあの比翼神(ひよくしん)アゴラが、一撃でやられてしまうなんて……。


神螺転生(しんらてんせい)、『命』に干渉する能力か……。今のはおそらく、アゴラの生命力を体内で暴走させ、自爆させたんだろう。そして……破城(はじょう)翼撃(よくげき)をわざわざ右手で受けたことからみて、術式の有効範囲は掌、もしくはその周辺のみ。右手だけじゃなく、左手でも同じ力を使えると考えるのが自然だな)


 敵の術式を分析していると、


「――アルトくんって、召喚士なんでしょう? 接近戦、大丈夫ですか?」


 レグルスが、一足で間合いを詰めてきた。


(速い!?)


 目と鼻の先、触れれば即死の魔手(ましゅ)が迫る。


「――武装召喚・双雷刃(そうらいじん)ゼノ!」


 迅雷(じんらい)を帯びた双剣を召喚。


 眼前(がんぜん)の魔手を斬り上げ――そのままの勢いで、レグルスの胴体に太刀傷を刻む。


「~~ッ!?」


 けたたましい放電(スパーク)の音が鳴り響き、奴の体に強烈な(いかづち)が駆け抜ける。


神螺(しんら)転生(てんせい)……ぷはぁ! いやぁ、驚きました。アルトくん、近距離もイケる口なんですねぇ」


「高速再生? いやこれは……『命のストック』か」


「おやおや、まさか初見で見抜かれるとは……。あなた、けっこう面倒くさそうですね」


 レグルスは日ごろから神螺転生(しんらてんせい)で、自分の命を抽出し、それを常時ストック――今みたく大きなダメージを負った際に使うことで、疑似的な高速再生を可能にしているのだ。


 つまり奴を倒すには、ストックされた全ての命を削り切るか、一撃で仕留めなければならない。


(……厄介だな)


 やはりレグルスは、『S級』クラスの強敵だ。


「しかし、驚かされました。近・中・遠、『オールレンジタイプ』の召喚士なんて本当に珍しい。……なんだか私、胸がドキドキしてきちゃいましたよ。――神螺転生!」


 レグルスが足元の絨毯(じゅうたん)に触れた直後――命を(さず)かった幾千幾万もの赤い繊維が、途轍(とてつ)もない速度で殺到してくる。


(攻撃範囲がデタラメに広い……っ)


 普通の召喚じゃ、(さば)き切ることは難しそうだ。


「――現象(げんしょう)召喚・麒麟(きりん)息吹(いぶき)


 麒麟の息吹は、雲雷山(うんらいざん)の頂上で、百年に一度だけ発生する『大嵐』。


 俺はその天災を小さく圧縮し、レグルスに向けて解き放つ。


「これは強烈……っ」


 吹き(すさ)ぶ烈風は、全ての赤い繊維を蹴散らし、その先にある奴の体を切り刻む。


 だがしかし――レグルスはすぐにその特異な術式を発動させ、コンマ数秒のうちに全快(ぜんかい)


「うーん……真っ向勝負じゃ、ちょっとばかし分が悪そうですね。少し趣向を変えて、こういうのはどうでしょう?」


 奴はモンスター化した冒険者の体を鷲掴(わしづか)みにし、凄まじい勢いでこちらへ投げ付けた。


(くそ、なんてことをするんだ……っ)


 召喚で迎撃すれば、冒険者を殺してしまう。

 だからと言って回避すれば、彼らは勢いよくダンジョンの外壁に激突し、そのまま命を落としかねない。


「来てくれ、耳網兎(みみあみうさぎ)!」


「「「「「きゃる!」」」」」


 俺の召喚に応じて、巨大な耳を持つ五羽の兎が現界(げんかい)

 彼らは自慢の耳網(みみあみ)を器用に扱い、冒険者たちを全員回収してくれた。


 しかし次の瞬間、


「――その優しさは、アルトくんの弱点ですねぇ?」


 レグルスの満面の笑みが、視界を埋め尽くす。


神螺(しんら)転生(てんせい)!」

 

 即死の魔手が、容赦(ようしゃ)なく伸びてくる。


「――簡易召喚・スライム!」


 限界ギリギリまで引き延ばした状態のスライムを、自分の背中と後方の扉に接着(せっちゃく)


「縮め!」


「ぴゅぃいいいいいいいい……!」


 スライムの伸縮性を利用して、なんとかその場から緊急脱出を図る。


「おっと、逃がしませんよォ! ――神螺(しんら)転生(てんせい)!」


 レグルスは壁の煉瓦(れんが)に命を吹き込み、生きた瓦礫(がれき)へ変換。

 それをそのまま、一気にこちらへ解き放つ。


(かみなり)の型・四の太刀――紫電(しでん)!」


 双雷刃(そうらいじん)ゼノを振るい、なんとか迎撃していくが……。


()……っ」


 空中での完璧な迎撃は難しく、右肩と左足に食らってしまった。


「アルト……!?」


「大丈夫、軽く(かす)めただけだ」


 心配してくれたステラを安心させ、すぐに戦線へ戻る。


「いやぁ、今のはさすがに決まったと思ったんですが……。まったく、召喚士は本当にやりにくい。特にアルトくんクラスの術師となると、まるで奇術師とやっているみたいだ。でも……召喚魔術というのは、普通の魔術に比べて、膨大な魔力を消費する。どうです? そろそろ疲れてきたんじゃないですか?」


「いいえ、まだまだこれからですよ」


「それはそれは、素晴らしい魔力量をお持ちだ(偶像・武装・現象召喚……既にかなりの魔力を使っているはずですが……ブラフを言っているようには見えない。残存魔力にまだかなりの余裕があるのは、おそらく本当なのでしょうね。……魔力切れを狙うのは、あまり現実的ではないかもしれません。少し、削り方(・・・)を変えてみましょうか)」


 レグルスはしばしの沈黙の後、両手を大きく広げた。


「さぁさぁ、みなさんお(たち)()い! この私レグルス・ロッドが夜なべをしつつ、精魂込めて作り上げた『意欲作』を……一挙大公開! ――神螺転生(しんらてんせい)!」


 玉座の間の床がゆっくりと持ち上がり、ぽっかりと空いた空洞から四足歩行の――『例のモンスター』が姿を見せた。


「モイ゛……!」


「ウ゛タ」


「イ゛イ゛」


「ヤヨ」


『真実』を知った今、その姿はあまりにも痛ましく……。


「「「……っ」」」


 俺たちはみんな、思わず目を背けてしまいそうになる。


(だけど、これはいったいどういうことだ……?)


 驚くべきことに、モンスターの総数は軽く百を超えていた。


「ラインハルトさん。第七地区には、あんなにも大勢の冒険者がいたんですか……?」


 俺の問い掛けに対し、彼は悔しそうに下唇を噛む。


「いや、そうじゃない。彼らは……第一地区から第六地区の守護を任せたB級冒険者たちだ……ッ」


 やはり第一~第六地区の拠点は、レグルスによって潰されてしまったようだ。


 すると――ティルトさんが突然、その場でペタンと座り込む。


「どうした、ティルト!?」


「あ、あのブローチ……。マシュの誕生日に、あたしがあげたやつだ……。こんなの……嘘だよね……? みんな、ちゃんと助かるよ、ね……?」


 彼女の視線の先には四足歩行のモンスターがおり、よくよくその首元を注視すれば、確かに緋色(ひいろ)のブローチが確認できた。


「おや、お知り合いでもいましたか? お望みであれば、近くまで呼んで差し上げますよ?」


 無邪気な顔・無神経な発言・無遠慮な姿勢――レグルスの全てが、こちらの神経を逆撫(さかな)でしてくる。


「――みんな、よく聞いてくれ! 王都の優秀な回復術師であれば、モンスター化した仲間たちも、きっと元の姿に戻せるはずだ! だから、絶対に殺すな! 適度なダメージを与えて、四肢(しし)を拘束するんだ!」


 ラインハルトさんの指示に対し、レグルスは茶化(ちゃか)したような拍手を送る。


嗚呼(ああ)、こんな醜い状態になっても、まだ仲間と言えるだなんて……あなたたちは、本当にお優しいんですね! 人間と人間の美しい絆……私、涙を(こら)え切れません……っ」


 奴はわざとらしく「およよよ」と涙を拭った後、会心の笑みを浮かべた。


「ですが残念。モンスター人間は、もう二度と元の体に戻りません! 彼らはもう人間でもなければ、モンスターでもない……全く新しい生命体! これは『絶対不可逆の変化』であり、最高位の回復魔術を使ったとしても、絶対に治すことはできません!」


 みんなの希望を叩き折る非情な言葉が、朗々(ろうろう)(つむ)がれる。


「レグルス、お前……!」


「いやだなぁ、アルトさん、そんな顔をされたら怖いですよ?(ふふっ、いい感じだ。この子は自分よりも、仲間を傷付けられたときに激怒する。――感情が揺らげば、魔力が揺らぎ、魔力が揺らげば術式が揺らぐ。この調子で、どんどん削りを入れていきましょうか!)」


 レグルスはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、パンパンと手を打ち鳴らした。


「クレアちゃん、ハムストンくん! あなたたちも、お仕事ですよー!」


 今までずっと部屋の奥で控えていた二足歩行のモンスターが、ユラリとこちらへ歩き出す。


(これは……マズいぞ)


 A級冒険者を(もと)にしたこの二人は、他とは比べ物にならないぐらいスペックが高い。


(モンスター化したA級冒険者二人にB級冒険者約百人。そのうえ、『即死攻撃』を持つレグルス……っ)


 この状況は、かなりヤバイ。


「さぁさぁそれでは、第二ラウンドの始まりで――」


「――愚か者め、無駄に時間を掛け過ぎだ! 傀儡(かいらい)人術(じんじゅつ)(ばく)ッ!」


 ドワイトさんが右手を床に下ろした瞬間、複雑な術式が玉座の間に広がり、


「「「ア、グ……!?」」」


 モンスターと化した冒険者たちが、全員ピタリと足を止めた。


「……これは……?」


「レグルス。貴様の神螺転生の構造を解析し、その操作能力に制限を加える魔術を即興(そっきょう)で組ませてもらった。腐っても、『元A級のドワイト・ダンベル』! 同じ操作系統の術者に、(おく)れは取らぬぞ……!」


「即興で……それはまた、器用なことをしますねぇ(この冒険者、ちょっと面倒くさいかもですね……。だだまぁ、一番厄介なのは間違いなく――アルトくんだ)」


「伝承召喚・絶海(ぜっかい)大瀑布(だいばくふ)!」


「~~ッ。(この子一人だけ、完全に出力が桁違いなんですよねぇ……っ。一撃一撃が、尋常じゃなく重い……ッ)」


偶像(ぐうぞう)召喚・幻神(げんしん)アグノム!」


「これまた強烈……ッ(単純な魔力量だけなら、既にS級冒険者の中でも上位クラス。そのうえ、まったく底を見せてくれない……。アルト・レイス、この子はいずれ大魔王様に届き()るかもしれない……ッ)」


「武装召喚・大断剣(だいだんけん)!」


「容赦がないですねぇ……ッ(しかし、現在はまだ十代の未成熟者(こども)! 成長し切っていない今の彼ならば、私でも十分に()れる……!)」


 三連続の大きな召喚魔術を食らったせいか、レグルスの回復にわずかな遅れ(・・)が見えた。


 敵の能力は、ほとんど割れた。

 対処に困るモンスター化した冒険者たちは、ドワイトさんが止めてくれている。


 今が、千載一遇の好機(チャンス)……!


「みなさん、これから一気に畳み掛けます! 俺の(・・)召喚に(・・・)合わせて(・・・・)ください(・・・・)……!」


『霊』の手印を結び、いつもより多量の魔力を練り込んで――召喚魔術を展開。


「力を貸してくれ、セイレーン……!」


「オォオオオオオオオオ……!」


 清浄な魔力を纏った深海の精霊は、どこまで透き通るような声で歌う。


「これは……なるほど、そういう(・・・・)召喚獣か(・・・・)……!」


 いち早くラインハルトさんが頷き、他のみんなもすぐに納得の表情を浮かべる。


 さすがは歴戦の冒険者たちというべきか。

 セイレーンの能力をすぐに理解した彼らは、レグルスを目指して一直線に突き進む。


「おや……まだわかりませんかねぇ? あなたたち如きの出力では、私の結界術は破れな……待て、この魔力は……!?」


「今更気付いても、もう遅い……!」


 レグルスの展開した結界は、断魔剣(だんまけん)ゴウラによって、いとも容易く斬り裂かれた。


「よくもやってくれましたね、アルト・レイス……ッ」


 深海の精霊セイレーンに、直接的な戦闘能力はない。

 ただ、彼女の奏でる歌には、特殊な術式が込められており……その美声を耳にした味方の能力は、全て極大強化されるのだ。


「ちょ、っと……これは、マズいですよ……ッ!?」


 レグルスは苦し紛れに二重の結界術を展開。

 なんとかこの窮地(きゅうち)(しの)ごうとしたが……無駄だ。


 セイレーンのバフで強化されたみんなの攻撃が、容赦なく奴の身を斬り裂いていく。


「……が、は……ッ」


 レグルスは床に身を投げ出し、荒々しい息を吐く。


(今だ! 神螺転生(しんらてんせい)で再生される前に、ここで仕留める……!)


 俺が『()』の手印を結んだ次の瞬間――血濡れのレグルスが、ゆっくりと両手を合わせた。


「あーぁ……。これはとても疲れるので、あまり使いたくはなかったんですが……。ここまで追い詰められては、仕方ありませんよねぇ……?」


 背筋の凍るような殺気と異常なまでの大魔力が吹き荒れる。


「この感覚は、まさか……!? みんな、この場を離れ――」


 ラインハルトさんの忠告が響く直前、


「――幻想(げんそう)神域(しんいき)命々流転郷(めいめいるてんきょう)!」


 (あか)彼岸花(ひがんばな)が、世界を埋め尽くしていく。


「――冒険者のみなさん。無駄な努力、ご苦労さまでした」


 レグルスは余裕に満ちた表情で、勝ち名乗りをあげる。


(しまった……最悪だ……っ)


 幻想神域――それは自らの固有魔術を現実世界に描き出し、浮世(うきよ)(ことわり)を歪める奥義。


命々流転郷(めいめいるてんきょう)の内部では、俺の召喚はもちろんのこと、みんなの魔術も全て封じられ……。レグルスの神螺転生(しんらてんせい)だけが正しく機能する……っ)


 場を制し・魔術を制し・戦いを制す、それが幻想神域の真髄。


(これに対抗するには、こちらもなんらかの『幻想系統の魔術』を――『幻想魔術』を使い、相手と同じ舞台に立つしかない……)


 しかし、幻想魔術を会得した人間は、世界でもわずか十人程度しか観測されておらず、彼らはみんな『S級冒険者』。


 レグルスに命々流転郷(めいめいるてんきょう)を使われた時点で、俺たちに勝ちの目はない。


 ただしそれは――奴の幻想神域が、きちんと完成していた場合の話だ。


「……何故、神域が閉じないのです……?」


 現実世界と幻想神域の狭間――俺はそこで、ありったけの魔力を燃やす。


「まだ、だ……!」


 莫大な魔力を燃焼させ、なんの魔術的要素も持たない『仮想神域』を無理矢理に構築――幻想神域の完成を強引に食い止めた。


「こ、の、化物め……っ。ただの魔力だけで、幻想神域に張り合うつもりですか……!?」


 レグルスは驚愕に目を見開く。


(はぁはぁ……。さすがにこの状態は……かなりキツイな……ッ。だけど、俺がここで落ちたら、ステラやラインハルトさん……冒険者のみんなが、皆殺しにされてしまう……っ。とにかく今は絞り出せ。魔力を……限界を超えて……!)


 俺が死ぬ気で魔力を放出し続けていると、ラインハルトさんがその横に並んだ。


「感謝するぞ、アルトくん。君のおかげで、なんとか首の皮一枚繋がった。後は我々が、逆転の一手を考え――」


「――『逆転の布石』なら、もう打ってあります……っ」


「ほ、本当か!?」


「えぇ、(くさび)、は……第七地区に突き立てておいた『王鍵(おうけん)』。はぁはぁ……触媒(しょくばい)は、この部屋の四隅に飛ばした俺の血。下準備は、既に完成しています……ッ」


「……さすがだ(アルト・レイス、この子はいったい何手先まで考えているんだ……!?)」


「ですから……五秒、いえ、三秒だけで構いません。なんとかして、レグルスの集中を妨害し、『幻想神域の拡張』を止めてください。三秒あれば、アレ(・・)を召喚できる……反撃の目途(めど)が、立つ……!」


「あぁ、任せてくれ……!」


 ラインハルトさんは力強く頷き、耳をつんざく大声を張り上げた。


「総員、全魔力を解放し、レグルスに突撃せよ! 出し惜しみは一切不要! 『後』のことなど考えるな! この攻撃が、生涯最期の魔術だと思え……!」


「「「うぉおおおおおおおお……!」」」


 地鳴りのような雄叫びが鳴り響き、最終攻撃が始まった。


魔炎(まえん)覇弾(はだん)……!」


(だん)の型・(おう)の太刀――神閃(しんせん)ッ!」


人狼(じんろう)剛術(ごうじゅつ)――激甚(げきじん)灰堰(はいせき)(しょう)!」


 ステラ・ラインハルトさん・ウルフィンさん・冒険者全員が一丸となって、持てる全ての魔力を込めた総攻撃を敢行(かんこう)する。


「ちょこざい、な……ッ。――神螺転生(しんらてんせい)!」


 苛烈な猛攻を受けたレグルスは、たまらず術式を発動させた。


 その瞬間、幻想神域の拡張がピタリと止まる。


(来た……! 正真正銘、これが最後のチャンス……!)


 一秒……。


 王鍵(おうけん)との接続を確立。

 玉座の間に(えが)いた召喚術式へ魔力を充填(じゅんてん)


 二秒……。


 召喚獣との経路(パス)を構築。

 後は、手印さえ結べれば……!


 三――。


「――残念でしたァ!」


 次の瞬間、紅い彼岸花が満開に咲き誇り、世界が閉じられてしまった。


「ぷっ、くくく……っ! あーっはっはっはっ! いったい何をするつもりだったのかは知りませんが……全て、徒労に終わりましたねぇ! 幻想神域さえ完成すれば、もうこちらのもの……! 私の勝利は揺るぎません……!」


 レグルスの耳障りな笑い声が、閉じられた世界に響き渡る。


「そん、な……間に合わなかった……っ」


 ステラが膝を突き、


「ここまで、か……」


 ラインハルトさんが目をつむり、


「糞ったれが……ッ」


 ウルフィンさんが奥歯を噛み締める。


 みんなが絶望のどん底に沈む中、


「……え、は……? ぐっ、がぁああああああああ!?」


 幻想神域の天蓋(てんがい)が無理矢理に引き()がされ、レグルスの右腕が肩口から引き千切られた。


「そん、な……。こんな馬鹿なことが……あり得ない……ッ」


「――英霊(えいれい)召喚・大戦士ヘラクレス」


「グ゛ォオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛……!」


 神代の大英雄が、遥か悠久の時を越えて――今、再臨する。


「レグルス・ロッド。お前だけは、本気で叩き潰す……!」


 敵の切り札は、完全に潰した。

 ここから先は、俺のターンだ……!

※とても大事なおはなし


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― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりに面白いの書いていただけましたね。 忙しいとは思いますが連載続けてください。 楽しみにしてます。
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