表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説の書き方 ~小説を書きたい・書いている人へ捧ぐ、物語の極意~  作者: ぶるすぷ
ストーリー編:『転』こそがエンターテイメント!
7/9

「あっ」という間に読者を「えっ」と言わせる展開1

 前回説明したストーリーの作り方を、更に掘り下げて説明していこう。


 まず最初に、私はこのストーリーの作り方を『Aだと思ったら、Bだった法』と言っている。略してAB法だ。間違ってもAV法と言ってはならない。

 Aの事実を読者に刷り込み、物語の山場で真実を、つまりBの存在を明かす。これが読者をあっと驚かせる基本的な構図だ。

 前回も説明したが、AB法において重要なのは『どれだけAを信じ込ませられるか』である。

 読者は常に展開を先読みしようとしている。先が気になる場面では特にそうだ。これから何かが起こるんじゃないか。犯人はこいつじゃないのか。話の行く末を予知能力でも持っているかのように予測しはじめ、予想通りの展開だと「なんだ、思ったとおりじゃん」と失望する。いや、失望は言いすぎかもしれないが、少なくとも思ったとおりの展開で心動かされることはない。


 これだけでは分かりにくいので、例を出そう。

 例えば、勇者が魔王を倒す物語を作りたいとする。

 最終目標は魔王を倒すこと。つまりAB法のBは『魔王を倒した』になる。

 では、Aはどうするか。

 大抵の場合、Bが明確な目的として決まったなら、Aはその反対にすると良い。そうすることで物語全体の整合性が取りやすくなり、すっきりまとまったストーリーになりやすいのだ。

 『勝つ』なら『負ける』もしくは『勝てない』、『会う』なら『別れる』もしくは『会えない』、『消える』なら『生まれる』もしくは『消えない』。

 今回は『魔王を倒した』なので、Aは『魔王を倒せない』になる。

 AとBを簡潔にまとめてみる。

『魔王を倒すことができないと思ったら、倒せた』

 AB法、完成である。

 たったこれだけだ。たったこれだけの作業で、起承転結の『転』の大部分が作られる。



 意味不明かもしれないので、もう少し手を加えよう。

『魔王を倒すことができないと思ったら、倒せた』

 ここに足りないものは『理由』である。

 理由とは、即ち伏線。AB法のAを支えるものである。

 魔王を倒せないということを強調するのだ。絶対に、何があっても、天地がひっくり返っても倒せない。その証明をするために伏線を使う。

 魔王が倒せないことを表現するにはどうすればいいだろうか。魔王の強さを説明する? 魔王軍の規模の大きさを説明する? 正解だ。そのような直接的な手法はどんな作品でもよく使われているだろう。

 しかし、ただ安直に魔王が強いと書いても読者には伝わらないだろう。強いから、それで? という反応が返ってくる。

 ではどうすればうまく伝えられるのか。

 ここでAB法に必要な『鍵』を使う。


 『鍵』とは、AB法のAのインパクトを高めるために必要な、バトル漫画で言う必殺技である。

 これがあれば絶対に魔王を倒せる。これを使わなければ魔王は倒せない。Bという目的を達成するために必要不可欠な『鍵』を、物語の中に用意する。

 この場合は、勇者だけが扱うことのできる『魔王殺しの聖剣』としよう。

『勇者はとても強い魔王に勝つために『魔王殺しの聖剣』を持って戦いに挑む。勇者と魔王の戦いが始まる』

 魔王を倒す力を持った剣で勇者は戦いに挑む。なんとも勇ましいことだ。テンプレとも言えるだろう。


 では次の文はどうすればいいのか。考えながら読んでほしい。

『勇者は『魔王殺しの聖剣』を持って戦いに挑んだが、魔王に傷一つ付けることができなかった』

 そう、『鍵』を使ったにもかかわらず、魔王を倒すことが、つまりBの目的を達成することができないのだ。

 魔王殺しの聖剣をも凌駕する力を持った魔王。ピンチに陥る勇者。

 この状況では読者も「こんな魔王に勝てるわけないだろ」と思わざるを得ないだろう。

 Bを達成するのに必要不可欠な『鍵』をあえて失う。こうすることで、Bを達成することが不可能だと思い込ませるのだ。


 そして、誰もが負けを確信したところで勇者の真の力が発動。絶対に勝てないと思われていた勇者が、限界を超えた力で魔王を倒す。ヒュー、最高。

『『魔王殺しの聖剣』を持って戦いに挑んだが魔王に傷一つ付けることができなかった勇者。しかし真の力を発動し、激戦の末魔王を倒した』


 どうだろう、少しは面白いストーリーになってきただろうか。

 まさかのまさかで、やっぱり勇者は魔王を倒す。いい意味で読者は期待を裏切られるはずだ。

 それでは、今までのものをすべてつなげて一つの物語にしよう。

『勇者はとても強い魔王に勝つために『魔王殺しの聖剣』を持って戦いに挑む。しかし魔王に傷一つ付けることができなかった。誰もが負けを確信したその時、勇者は真の力を引き出し限界を超えた。勇者は最終決戦に挑み、ついに魔王を打ち倒す』


 適当ではあるが、これで『転』の部分は完成だ。魔王を打ち倒す部分などはすでに『結』なのだが、今回は気にしないでおく。

 『魔王を倒すことができないと思ったら、倒せた』というAB法のはずだったが、この物語ではむしろ『魔王を倒せると思ったら倒せなかった』という趣旨の転になってしまった。

 それでも激戦の末勇者が魔王を倒すことにはなったので、そこはどうか許してほしい。


 では最後に『転』の作り方をまとめる。

一、『Aだと思ったらBだった』のABそれぞれを決める。

二、Bを証明(解決)するために必要な『鍵』を決める。

三、Bの解決が困難だということを『鍵』を利用し証明(Bではないということを読者に刷り込み)、Aを強調する。

四、なんらかの方法でBを解決(本当はBだったと表明)する。


 基本的にはこのような流れになる。

 だが、これはあくまでも私が考えた『基本』であり、このやり方が全てではない。応用もできるだろうし、これ以外のやり方でストーリーを作ることももちろん可能だ。

 このやり方だけにとらわれず、これをきっかけとして様々なストーリーの作り方を模索してほしい。


『「あっ」という間に読者を「えっ」と言わせる展開1』終

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ