プロローグ
少し難しい話に挑戦してみました。努力しますので宜しくお願いします!
”この世の終わりってなんだろう?”
【これはそんな一つの疑問を自身に投げかけた一人の青年の、この世の終わりまでの人生を書いた話。】
「ねぇ、アダチ。この世が終わるとしたら、どうやって終わると思う?」
そんな質問を授業中に突拍子も無く聞いてきたこの女は、高校2年生に上がってから初めて同じクラスになった、前の席に座っている水本だ。
「急になんだよ、病んでるのか?」
相手にするのが面倒なので、僕は適当なジョークで返事をした。
「違うよ!真面目に考えてみて。」
今度は真剣に言われてしまった。
おいおい、今は授業中だぞ。と返したい所だったが、実際教師の話は全く聞いていないので、仕方なく付き合ってあげる事にしてあげた。
「それにしても急にどうしたんだ?」
僕は単純な質問を水本に投げ掛ける。
「それがさ、昨日テレビで見たんだよね。」
何をだろう。
「ナントカさんの予言なんだけど、20××年に世界は終わるんだって!」
うん。
「それで思ったんだよ。どんな風に終わるんだろう?って!」
チャイムが鳴った。
早く帰ってアニメでも見たいので、帰宅の準備を始めようとすると水本は怒ったように言ってくる。
「ちょ、ちょっと!話聞いてるの?」
ああ、どんな話だっけ?と、とぼけてみた。
「酷いよアダチ~。私真剣なのに。」
冗談だよ、と僕は笑うと水本は話を続けようとする。
「私、思うんだよね。」
「”この世が終わる”って、誰かの手によって終わるとか、環境問題で終わるとかじゃないと思うんだよね。」
「ねぇ、アダチ。真面目に考えてみてよ。」
僕は正直、驚いた。
何に驚いたかと言うと、普段はおちゃらけている水本が、世界が終わるだなんだという話に真剣になっている所にである。
僕は、その真剣な表情にある鋭い視線に射すくめられてしまった。
話を聞いていると担任がHRを始めようとしていたので、とりあえず話を止めた。
そして、HRが終わると、僕はすぐに家へ向かった。
水本はまだ続きがあるだのと途中まで付いてきていたのだが、僕は無視し、足を進めている内に水本の姿は見えなくなっていた。
普段なら、担任が来た所で僕は話を止めたりしない。だがあそこで珍しく止めたのは、何か言葉にできない寒気を感じたからだ。
水本は何故、あの話に真剣になっていたのだろうか。
――――――――世界が終わる、としたら。
それは、一体どんな状況なのだろうか。例えを挙げるとしたら、氷河期?隕石?ウィルス?戦争?
やっぱり、物理的な物しか浮かばない。
そういえば少しだけ、ほんの少しだけ気になっていた事がある。
これは、ただ、そう番組が記述しただけで、何の意味も含まれていないのかもしれないが。
―――――――――――――何故、”滅ぶ”ではなく”終わる”なのか?
前述に挙げた例えであれば、全て”滅ぶ”の方がしっくり来ると言えよう。
気が付いたら、真剣に考えている自分がいた。
何だが照れくさくなり、一人でクスッと笑ってしまった。
「水本のヤツ、気になる話題出しやがって。」
明日、またこの話をしよう。まあ、自分が動かずとも、水本から話しかけてくると思うが。
そんなような事を考えていると、家に着いた。
相変わらず暗い部屋だ。もちろん誰もいないからだろうが。
僕は、さっきまで何を考えていたのかをすっかり忘れていた。
そして一人静かに、テレビを見ていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次の日、登校するとなんだか教室が騒がしい。
席に座ると、ふとある違和感に気が付いた。普段遅刻や欠席が一切無い水本が、前の席に座っていなかったのだ。
必ず自分より早く教室に来ている水本が居ない。それだけで何か嫌な予感がした。
その日の全ての授業が終わっても、結局水本は来なかった。
近くにいた生徒の会話から聞こえてきたのだが、水本は昨日の登校を最後に学校を辞めたらしい。
軽々しく人に言えない病を抱えていてその治療の為だとか。その他にも色々話が出ていた。
しかし僕は信じなかった。それどころか怒りを覚えた。
教室でヒソヒソと囁かれる噂なんて、信憑性の低い物ばかりだからだ。
水本はいつも笑顔で、とても愛想がいい奴だった。それなのに病がどうたらと悪い噂ばかり流すなんて。このクラスの奴らはおかしいのか?と、文句を言ってやりたい気分だった。
それにしても、水本も少しおかしいのではないか。普通の人なら、最後の登校でさほど仲がいいという訳ではない僕と最後の会話をしようと思うか?否、思わない。
何故最後を、「アダチとこの世の終わりについての会話」で締めてしまったんだろう。自分で言うのもなんだがこれは失態だと思う。
だが、それを嬉しいと思う自分がいた。数多くの中でもとても小さい一つではあるが、「水本の最後」になれた事にである。
今思えば、どんな時も笑顔を振舞う水本に、僕は惹かれ、少なからず好意を寄せていたのかもしれない。
どうしようと想いを伝える事は叶わないので、今更気づいてもしょうがないのだが。
僕は、水本としようとしていた「この世の終わりについて」の話をどう片付けたら良いのだろう。このまま無視し続け、忘れる事を待つか。
なぜだかわからないのだが、僕には それ をできる気がしなかった。この話を一番考えなきゃいけないのは自分だ。
理由も根拠もないのだが、僕は確信していた。
気づいてはいけない真実に、今一歩、近づこうとしている。
そんな気がした。
忙しいので更新がかなり遅れる可能性もあります。それでも忘れないで頂けると嬉しいです。