表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

ラブコメってなんですか?

 

  初めまして。私、榎本こころ17歳、高校3年生です。


「ここ……どこ?」


  見渡す限りの荒地。そして遠くを駆ける馬。

  どうやら私は、タイムスリップとやらに遭ってしまったようです……


  遡る事約5分前。


  私は大親友で女子弓道部主将のサバサバ系女子・晶ちゃんと、料理上手な澪と放課後街に出てました。

 で、何故か私と晶ちゃんの日本史の成績が悪いって話になって……図書館に行って、面白い小説でもないかなってふらふらしてたら、一冊の古い本に目が行って気になって……開いたら目の前が真っ白になって……

  今に至る。


  どうしよう……私日本史(馬が遠すぎて乗ってる人が見えないので本当に日本なのかすらもわからないけど)って教科書でやってることぐらいしか分からないんですけど!


  あ、教科書!良かった、私の鞄までタイムスリップしてくれたみたいで!

  ちょうど今日、日本史の授業があったんだった……!

  そうだ、私がその授業で先生に当てられて答えられなくて……だから成績の話になったんだった!

  私は慌てて鞄から教科書を引っ張り出そうとするも、ペンケースだったり澪に貰ったクッキーとか返そうと思っていた小説が邪魔して思うように出せない。

 一息ついて、ヤケクソで鞄の中身をその場に全部出した。自分は整理整頓という事が大の苦手で、やっぱりその性格は鞄の中身にも滲み出ている。

  私は地に散らばった物の中からオレンジ色の少し分厚い日本史の教科書を両手で抱えた。

  ……これからはこの教科書を鞄からすぐに出せるように整理しておこう。私は鞄の中身をこれから使えそうな物順に簡単に揃え、最後に大事に日本史の教科書を入れた。


「……もし、そこの方」

「え?」


  呼ばれて振り返るとそこには細身の女の人がいた。女の人は土で汚れた着物を着ている。ということは、ここはやっぱり日本……

  女の人は私を頭から爪先までオロオロしながらまじまじと見ている。どうやら私の制服に驚いているようだ。


「どこのどなたかは分かりませんが……早くお逃げになられた方がよろしいですよ」


  どういうこと?私の頭の中は「?」でいっぱいだ。


「つい先程までここは戦場でしたから……もうすぐ兼山のお殿様が……」


  いくさば……戦場かな。それと……おとのさま?もしかしてここは……

  考えていると女の人は急に驚いた顔をして、両手に抱えていた黒くて細長い物を大切そうに抱きしめてここを去ろうとした。

  そこで私は慌てて女の人に聞いた。


「あっ、あの!今って何年……ですか?」


  少し複雑な表情をしたけど、女の人はすぐに答えてくれた。そして逃げるように走って行ってしまった。


「天正三年でございます」


  女の人がどんどん遠くなっていく。てんしょうって西暦何年なんだろう?

  ああ、その為の教科書じゃない!教科書を出して戦国時代のページを開いて「てんしょう」と読めそうな漢字を探す。


「おい、女」


  次は低い男の人の声だ。青年の、ちょっとドスの利いた感じの……

  恐る恐る振り返ると、私はそこで全身が固まった。

  次の瞬間、私の口から自分でも驚く程の叫び声が出た。


「ぎゃあーーーッッ!!」


  ついさっきまで私しかいなかった荒野に突然、馬に乗った真っ赤な青年がそこにいた。

  もしかしてじゃなくても、血だ。その人は全身血まみれで、「毛の生えた心臓持ち」らしい私でもさすがに青ざめた。

  なるほど、さっきの女の人がいきなり青ざめて逃げて行ったのはこの人が私の背後にいたからなのか。

  突然、鈍い音が聞こえて肩が震えてまた固まってしまった。馬に騎乗している青年の背丈程ある長い棒が、地に突き刺さる。地からはみ出ているのは、白銀に輝く……刃だ。


 これは、槍だ。

 

「うるせえ」


 青年はただそれだけ言って、槍を地面から引き抜いて私に近づく。それと同じように私は後ずさりをする。

 昔の日本の刀とかって、包丁の何倍も切れ味が良いって誰かに聞いた。それを思い出して身震いしてしまう。

 どうしよう、こんなどこかも分からない地で私、殺されるの……⁉︎


「殿!また町人を怖がらせておられるのですか!」


 ええ?また増えた!馬上から私を見下ろさないでください!

 その人は溜息をついて青年の槍をがっしりと力強く握り締めた。槍を持った青年より年上の、美丈夫って言葉がよく似合う人だ。


「些細な事で腹を立てるのはおやめ下さい!いくら自分の思うような武功が取れなかったからって……!」


 家来っぽい人の言葉を聞いて更に不機嫌そうになる槍の持ち主。槍を握る手はお互い力強くなっていき、最早意地の張り合いだ。

 そこで突然、家来さんはどこからか桶を出した。どこから出したんですか、それ。どうやって持ち運んでいたんですか。


「いい加減頭を冷やして下さい!」


 その桶をひっくり返し、桶の中の水が青年にどばりと音を立てて流れた。その飛沫が私にもかかってきたけど、冷水どころか氷水の冷たさですよこれ。

 舌打ちが盛大に聞こえ恐れながらも顔を上げると、私はちょっと信じられない光景にまた固まってしまった。


 擦り傷だらけの顔は色白で、擦り傷の赤と無造作に結わえ上げられた黒髪がよく映える。目つきは中々に悪いものの、切れ長の瞳は長いまつ毛が付いて、女の私が羨ましがる程だ。整った顎のラインに沿って、雫が滴り落ちる。水も滴るいい男とはこの事か……

 その青年は犬猫のように頭を振って水を飛ばし、前髪をかき上げた。その仕草がもうイケメンの類だ……こんなキザ(?)な仕草が似合う男の人初めて見た……


「すまない、娘……殿は少々気性の激しいお方でな……許してくれ」

「あ、いえ。ありがとうございます」

「は?」


 しまった、つい仕草への本音が。さっと口を手で隠した。

 まずい……「毛の生えた心臓持ち」なのに動揺する事が多過ぎて完全に挙動不審すぎる!

 ああ、何か2人が話しているのが目の端に見える。変人扱いされているに違いない。

 グッバイ、私の人生。最後に美形からの「女子が見たいイケメンの仕草ランキング」で上位キープしてそうな仕草が見れて本当に良かったです。


「おい、女」


 突然呼ばれて正気に戻った。私は何を今まで舞い上がっていたのか。とても恥ずかしい。


 次の瞬間、青年の鋭い刃が私の頬を掠めて背後の何かを仕留めた。

 猫だ。


 黒猫の血が私の頬に飛び散り、私は腰が抜けた。

 でもそれよりも、小さな命を殺したその人がだんだん許せなくなって、怒りが込み上げてくる。

 私が怒りを爆発させようとした寸前で、家来さんが私に叫んだ。


「娘、危ない!」


 私がその声に振り返ると、殺されたはずの猫の影が大きく私を包み込もうとした。

 でも突然、強い力に引っ張られて私の体が宙に浮いた。私の腕を、青年がその手で引っ張った。その反動で青年が馬上でバランスを崩して、その手に頼っていた私の重心もぐらついた。いつの間にか、私が青年の上に被さるような位置関係になっていた。


 そして突然、鈍い音と真っ白な光が私の五感を包みこんだ。


 私の額に何かがぶつかったようだ。弾き飛ばされて私は地に尻餅をついた。荒地に砂埃が舞い上がる。

 痛みがじわじわと額から全身に伝わってくる。両手でさすり、手のひらを見て血が出ていない事を確認して安堵した。


「いってぇ……この石頭め」


 どこからか鈴の鳴るような可愛らしい声がした。その声には似つかわしくない乱暴な口調で罵倒された事を少し間を置いて理解した。

 砂埃が収まり、視界が少し明るくなった所で私は片手を振って砂埃を払う。


「え、あの……」


 ここへ来てから、驚いて固まってばかりだ。


 色白のガラス細工のように繊細そうな肌。緩くウエーブのかかった豊かな黒髪は可愛らしく桜色のリボンで結わえ上げられている。

 気の強そうな瞳は丸くアーモンド型で、赤みがかった茶色。そして長いまつ毛。


 眉間の少し上辺りには、紅色の……桜?


「んん?」


 さっきまでいた美青年は、美少女へと変わってしまった。



「ああーーーーッッッッ!!?」



 私とその少女は同時に、会って以降1番大きな叫び声を出した。


自分でもよく分かりませんが突拍子に恋愛もの(?)が書きたくなりました。

森長可は自分の中では頭おかしい武将No. 1で好きな武将でも上位にランクインしてるので何やっても許されると思っています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ