俺様、異世界へ行く
「目が覚めたか、選ばれし人の子よ」
なんてこった……たしか俺様はクリスマスイブである昨日の夜、大学に進学してから日課になった新作エロゲの情報収集をしたあと、クリスマスの朝、アマ◯ンサンタさんから届くであろう人生初のオナホを楽しみに、それはもう楽しみに、サンタさんからのプレゼントを楽しみにしている子どもたちくらい楽しみにベットに入ったはずだ。
それがどうしてこうなった……気が付いたら、目の前に毛むくじゃらのおっさんがいるじゃないか。
しかも全裸だ。
いや、待てよ。 もしかしてこの毛深い全裸のおっさんはサンタさんなのか?俺のオナホを届けにきてくれたのか?
「人の子よ、わしは黒き神王。
キサマの名を言え」
あ、なんか違うみたい。そりゃそうか、毛深い全裸のおっさんがサンタさんとかありえんわな。クリスマスの夜にこんなのが子どもたちの部屋に侵入してくるとか想像したくないもん。
ともかく、おっさん曰く黒き神王らしい。
なぜ、驚かないのかって?今気づいたんだけど俺様いま空に浮かんでんだぜ?毛深い全裸のおっさんと空に浮かんでんだぜ?
目の前に神、空に浮かんでる、うん、間違いない。
たぶんこれはアレだ、異世界転生か転移ってやつだと思う。俺様の今のくだらない人生を捨て、俺様Tueeeeして、ハーレムとかつくれるチャンスだと思う。
「ん? 驚きすぎて声も出せんか?
はよ名乗れ、時間がない」
そんな急かすなよ。今名乗ってやるよ。
「な、波井 海です」
そう、俺様の名前は波井海どこにでもいる普通よりちょっと劣る19歳男子だ。勉強も運動も普通よりできない。見た目も並より少しだけ下だと思う。
中学・高校と友達も少なく、彼女なんていたことがあるはずもない。ちっ、女子どもめ見た目だけで人を判断しあがって。そりゃ、俺は心も少し捻くれたところがあるかもしれないが……いや、捻くれてるな、ぐにゃぐにゃだよ、自覚があるだけまだましさ。
あまり人と話さないから多少会話は苦手だけど、心の中ではとっても饒舌なシャイボーイさ☆
「ん、選ばれし人の子。波井海。
キサマには剣と魔法の異世界へと渡ってもらう」
キマシタワコレ。でも、これで満足してはいけない、チートをもらわなくては!勝手に異世界に飛ばされそうなんだ、ここは強気に行くぞ!!
「あ、あのぉ……お、恐れながら黒き神王様に質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
くっ、今のが精一杯だった。俺様人見知りなんだよなぁ、心の中では初対面の人にもありとあらゆる罵詈雑言吐けんのになぁ。
それに黒き神王怖いし、ただの神王じゃないんだもん、黒き神王なんだもん、くろいんだもん 。
あのボーボーの胸毛まで禍々しいんだもん。
「ん、人の子よ。質問を許そう」
けっ、全裸のくせに偉そうにしやがって。まぁいい、新しい最高の人生が待ってるんだ。プロローグなんてちゃっちゃと済ませてやるぜ。
「わたくしは普通の人間ですので、あの、いきなり剣と魔法の異世界へ行けと言われましてもぉ……すぐに死んでしまうのではないかと思うのですか……?」
どうでる毛深い系全裸おっさん神王!
「その点は案ずるな、わしの力の一部をキサマにやる。そう簡単に死ぬわけがない」
マジかよ!神の力貰えんのかよ!最高じゃねぇか!
でも待てよ、なんでこのおっさんは俺様を異世界に渡らせて力もやるんだ?
「も、申し訳ございません……黒き神王様、もう1つ質問があるのですが。 なぜ、わたくしを異世界に渡らせ、黒き神王様のお力をお貸しいただけるのですか?」
「ん、選ばれし人の子よ。その質問にも答えてやろう。
我々神は数億年に一度、自分と完全に波長の合う人間の魂の中で、その人間が死ぬまでの間休息を取らねば消えてしまうのだ。
神が休息を取っている魂を持つ人間は、一部とはいえ神の絶大な力をも持つことになる。
たまたまわしと完全に波長の合う人間がキサマで、キサマのいた世界でこの力はあまりにも危険で目立ちすぎる。
だからキサマを別な世界に渡らせる必要があるのだ」
なるほど、俺様に害はなさそうだな。どうやら魔王を倒せとかの使命もなさそうだし。
この毛深い全裸おっさんが俺様の魂でやすんでるってのはどうも気持ち悪いが、まぁこれからのウハウハ異世界ライフを思えばちょろいもんか!!
「な、なるほど。
わたくしなんかの魂が黒き神王様の休息に使っていただけるなど光栄でございます」
「では選ばれし人の子、波井海よ。
次に会うときはキサマが命を落としたときだ。
神の絶大な力の一部を持ったキサマが寿命以外で死ぬことは多分ないだろうが、幸多き人生を送れることを祈る」
いよっしゃーーー!!目の前から全裸のおっさんが消えたぞ!!しばらくはあの汚いものを見ないですむ!!
よし!!待ってろよ俺様の新たなる人生!まだ見ぬかわいい奴隷たち!俺様にひれ伏すであろう雑魚モブども!これからの俺様の人生はあっかるいぞー!