バービカン放棄
足元を素早く動き回る小さな敵に、大きな剣で攻撃を当てるのは難しい。味方に馬乗りになっているとなれば尚更に。
泥小鬼に馬乗りにされているゴットホルトさんを助け出そうと、アルフォンスさんが両手剣を振り回すも、仲間に当たらないよう配慮すればするほど太刀筋が鈍る。その隙をついた複数の泥小鬼に飛びかかられアルフォンスさんが転倒する。
二人に馬乗りになる泥小鬼を、ルフさんたちが体当たりで吹き飛ばし蹴ちらす。
残った泥小鬼を剣虎が仕留めて、乱戦終了。
感覚が麻痺してよくわからないけど、おそらく数分の出来事。いや、もしかしたら数秒だったかもしれない。
何もできなかった。
そして立ち上がれない。いつの間にやらへたり込んでいた。
思い出した。
俺は歴戦の勇士でもなんでもない。ただの重度のヘタレだ。
市庁舎の1階で肉塊に変わり果てた泥小鬼たちと、目の前で苦しそうに呻くゴットホルトさんとアルフォンスさんを交互に見ながら、その状況を現実のものとして受け止めきれない。
割り切ったつもりでいた。できるような気がしていた。そう思っていただけで、覚悟も何もできていなかった。
ここが戦場だということから目を背けていた、背けていたかった。
糞。
ああ、この世界は糞だな。
俺が下手打ったおかげで、目の前で仲間が二人倒れている。
「泥鬼が来ます!」
2階からザシャくんの声が響く。
あー、いやー、どうだろう。うん、動けないや。
このままだと死ぬな。
頭では理解しているが、足が動かない。
階段を駆け下りて、ザシャくんが俺のもとに駆けつける。
「掴まってください」
ああ、ザシャくんはやっぱりかわいいなぁ。
「ごめん、自分で立てるよ。それよりあの二人を助けないと」
ザシャくんがアルフォンスさんを担ぎ、オロオロする五虎退と一緒にゴットホルトさんを担いで階段を上る。
重い剣と盾は置いていく。
二階まで担ぎ上げて、殿の剣虎が上がってきたところで、階段を壊して穴を塞ぐ。直後、土塁を突破した泥鬼と沼小鬼が雪崩を打って市庁舎に押し寄せる。
(侵入判定(2D6)= [5] [5] 10,(3D6)= [6][6][3] 15)
泥鬼10匹と沼小鬼15匹が市庁舎に残しておいた食材を、奪いあいながら食い散らかしている。
ザシャくんが神聖魔法を詠唱している横では、喉を噛みちぎられたゴットホルトさんからヒューヒュー音が聴こえる。
神聖魔法を唱えるザシャくんが詠唱を中断して首を横振る。
「体内に毒がまわっています。解毒するには神父様のところに連れて行かないと」
ああ、糞。
「モットー! 何人か呼んでこい!」
敵を殺すよりも負傷させた方が、その救護に人員を取られるので効果的、とか全然関係ない話を思い出す。
糞、糞。
(窪地のマグマトラップ発動判定[1]で発動 (1D6)= [2] 失敗)
市庁舎の三階に上る。
こちらに泥鬼たちが流れた分、重さが分散されたからだろうか。窪地のマグマトラップは発動していない。
まあいいさ。
もともと落ちる重量を計算したりしたわけじゃない。
下から足場を崩すか、市庁舎の3階から玄武岩の塊を落とす予定だったんだから。
スロープとか城壁とかつくっていた経験のおかげか。
ザシャくんたちを助けた頃は、一度に顕現できるのは7ブロック程度だったが、今では直径5m程度のブロックを顕現させることができるようになっていた。
まだ、頭の中にもやがかかってる。
心臓もギュウギュウ締め付けられてる。
あの二人が死んだら俺のせいだ。
糞、糞。
毒づきながら、インベントリから取り出した落とし扉で市庁舎の入り口を塞ぎ、泥鬼たちを閉じ込める。
窪地の方には、玄武岩の塊をいくつも放り投げると沼小鬼が何匹か潰れるのが見える。
(落下判定(2D6)= [3] [3] 6, (4D6)= [1] [2] [3] [1] 7 )
5つほど落としたところで地面が崩れ、泥鬼たちがマグマの中に落ちていく。
ちっ、まだ結構生き残ってやがる。
市庁舎に火を放ちクーリンディアさんと外門砦に降りる。
矢庭に射臥せ、或いは市庁舎に籠めながら焼き殺しつつ、態勢を立て直すために第二防衛線の外門砦を放棄し、失意の内にヴァレッタ島へ退却する。
市庁舎炎上イメージ
クリティカル出ました。
歌う月8
住人数についての報告
報告者:モットー ドリュアス
移住希望者:3名
招来者:1
人間(2)
死亡:人間1名
詳細は別紙にて
住民総数:114
内訳:
招来者:4
人間:87
ドワーフ:8
吸血鬼:4
ハーフエルフ:3
人狼:2
熊猫人:2
人虎:1
龍人:1
猫人:2
特記事項
移住希望者に招来者1名
以上




