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まったり城塞都市をつくろう  作者: Kiryo
本当の拠点をつくろう
92/120

スワンプトロール

間違っていた。

完全なる誤謬。

クッコロ騎士団の巨人たちと同じように考えていた。


陽根の魔除けファリックチャーム片手に、嘔吐するあんちゃんと両腕を抱えヘタっと崩れ落ちる興里こおり

俺も足に力が入らないが、子供たちの多声声楽(モテット)の効果、勇猛鼓舞インスパイアブレイブで耐える。




子供たちを巻き込んでいいものかどうかしばらく悶々としたので、あんちゃんにも話を聞いていた。


「手伝いができるなら、きっと喜ぶと思いますよ」


陽根の魔除けファリックチャームをインベントリでつくりながら悩んだ末、効果の確認のためという名目で、ヴァレッタ聖歌隊チャーチ・クヮイアの展開をあんちゃんに依頼。加えて丹精込めてつくった陽根の魔除けファリックチャームによる効果で、邪眼(イビルアイ)の効果が完全に消えた。


崖の上から見える光景、蠢く何かに背筋がぞわりとする。

ただ薄暗く崖の上から敵陣は遠いため、何かが蠢いてる程度しか見えない。

埒があかないので市庁舎シティ・ギルドに移動。




市庁舎シティ・ギルドの三階から外を見ると、そこには地獄絵図が広がっていた。


その地獄の主役、沼鬼スワンプトロールたちに対する誤認。


そう、間違っていた。

完全なる誤謬。


報告では沼鬼スワンプトロールは3m級。


そう、3m、確かに3mはある。

上下左右とも。


同じく3mのクッコロ騎士団の巨人たちは確かに大きいが、女性らしいラインが残っており、人間と変わらないシルエット。だが、沼鬼スワンプトロールは縦も横も厚みも3m級。


胴まわりより太い両腕を持つ個体や、鋭い爪の生えた体とは不釣合いなほど細長い両腕を持つ個体。


そして体の半分以上もある巨大な頭部。

深海魚を思わせるようなエラのあるあぎとからは、びっしりと生えた牙がはみ出している。


ヌメヌメした薄汚れた緑色の表皮には所々に鱗が生え、蟠屈ばんくつした背中には背びれ、指の間には水かき。

あの蟠屈ばんくつした背中を伸ばすことが可能には見えないが、もし伸ばせるなら6mに届きそうな巨躯。



そして外堡バービカンのすぐ外では、その異形の巨人、いや怪物クリーチャーに捕らえられた人間たちが生きたまま喰われていた。


巨躯の沼鬼スワンプトロールに掴まれた人間は、一口で半身を食いちぎられ、あるいは丸呑みにされている。


沼鬼スワンプトロールの捕食から逃れようとする人間を、沼小鬼スワンプゴブリンたちがゲタゲタと下卑た笑い声を上げながら、脅し、殴り、引っ掻き、噛みつき、最終的には生きたまま齧り付き、雄叫びをあげている。


時折、人間の代わりに仲間が丸呑みされた様子を見て笑う沼小鬼(スワンプゴブリン)の声も混じる。


あちこちから聞こえる歓声と断末魔の叫び声。


「助けないと!」

「手遅れですね」

ザシャくんとフェデルマさんの声が被る。



見える範囲には無事な人間はもう、いない。

仮に間に合うとしても、あの中に入って行く気はない。



険しい顔のザシャくんを尻目に、弓を持ったリセイネルさんが声をかけてくる。

「よろしいでしょうか」


止める理由がない。

軽く頷くと、リセイネルさんが持っていた弓に矢筈をつがえる。


「あっ」

ザシャくんの声が漏れるのとほぼ同時。

放たれた矢はヒュンと音を立てて、生きながらに喰われている女性を貫く。


すごいな。

俺がインベントリ製の弓矢を使っても、この距離を当てられる気が全くしない。

あの辺に、程度であれば届きはすると思う。


事切れた女性をそれまで弄んでいた沼小鬼スワンプゴブリンたちが、憎々しげな視線をこちらに向けてくる。

まるで、幸福な時間を無理やり奪われたような、憎悪に満ちた目で。


こちらに弓を射返す沼小鬼スワンプゴブリンもいるが、届かないと見るや、持っていた弓を壊して、周辺の沼小鬼スワンプゴブリンに当り散らしながら何やらわめいていた。



ザシャくんと交代で小烏丸こがらすまる市庁舎シティ・ギルド下の防衛線から呼び戻し、興里こおり中庭ベイリーまで下がらせる。


「……」


部屋に重い空気が流れる。


防衛線を突破されれば、明日は我が身だ。

もしそうなれば、きっと、彼女のことを羨ましく思うに違いない。


「あんなの相手に勝てるのかな?」

あんちゃんが弱音を吐くのもわかる。

全くもって同感だ。今すぐ逃げ出したい。



そんな空気をかき消すように、轟音と衝撃が響く。


バギャッッ!!


音のした方を見ると、壁に直径1mほどの穴が空いている。


沼小鬼スワンプゴブリンです!」


近くに転がるのは沼小鬼スワンプゴブリンだった肉塊。


沼鬼スワンプトロールが投げた沼小鬼スワンプゴブリン市庁舎シティ・ギルドの木の壁を砕いた衝撃。

周囲には崩れた壁の残骸、悪臭と血煙、沼小鬼スワンプゴブリンだった肉片が散らばる。



リセイネルさんの放った矢が、前哨戦の嚆矢となり状況が動き出した。

飛んできた沼小鬼スワンプゴブリンは騒いでいたヤツです。

何か気に障るようなこと言ったんじゃないでしょうか。


そろそろ年末進行な空気なので、更新が途絶えがちになると思います。遊びで始めた作品ですが、望んでた方向と全然違ってしまい悶々としています。

#全部自分が悪いのだけど


ここまで読んでくれている方がいることに驚きつつ、とても感謝しています。

ありがとうございます。

ちゃんと落とし前はつけたいので、何卒ご容赦くださいませ。



輝く月 29


住人数についての報告

報告者:モットー ドリュアス


移住希望者:3名

吸血鬼ヴァンピール(3)



死亡:1名

ヴェラ(人間 女性29歳)




住民総数:117

内訳:

招来者ブリンガー:3

人間:92

ドワーフ:8

吸血鬼ヴァンピール:4

ハーフエルフ:3

人狼ライカンスロープ:2

熊猫人ウェアパンダ:2

人虎ウェアタイガー:1

龍人ドラグメイド:1

猫人ケット・シー:1



以上


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