侵攻
輝く月 3
夕刻、リセイネルさんから沼鬼の軍勢が動き出したとの報告。
崖の上で、第一回沼鬼が沼から討って出るってよ参謀会議招集から、時間にして約7時間以上過ぎた深夜、沼鬼が大挙して、第一防衛線の外堡まで押し寄せたらしい。
うん、行軍速度遅すぎだろ。子連れのピクニックでももっと早いぞw
ちなみに、押し寄せた"らしい"。
推定助動詞。
そう、俺たちの目には見えていない。
だが、周辺から聞こえてくる獣のような唸り声と雄たけび。
吐き気を催すような悪臭。生き物が腐った臭い。
そう確かに"何か"がいる気配。
(敵数ダイスロール 4D100, 結果 51, 88, 28, 98(ファンブル) 合計265)
(大型種数ダイスロール 1D100, 結果 36)
「見える範囲で200から300。3m近くある個体は確認できただけで36。あとは人間より少し小さい沼小鬼ね」
見張り塔から降りて来た吸血鬼のミルチャさんが敵情報告。
最初の報告は40くらいだったはずが、いつの間にか5倍以上になってた。
ってかミルチャさん見えてるんだ。
そんなブラックな大幹部みたいな仮面つけてて。
えーと、当初想定した二倍の戦力比が十倍以上。
もちろん、状況報告に揺らぎがあるのは想定内。
寒慄を抑えつつ冷静を装う。ヤベェちょっと涙目だ、怖いw
異常な雰囲気を感じるものの、依然として俺の涙目には沼鬼が映らない。
問題は、外に残ってもらっていたハーフエルフの斥候。
一人は砦に戻し、もう一人は外で目視観測による隠密偵察。
ハーフエルフ同士、風の精霊を介して遠距離通話できる利点を生かすため、そのまま森に潜んでもらったのだが、外の斥候も途中から敵の把握ができなくなり、恐怖しながら退避したらしい。
気配探知に秀でている森の斥候でも、見えない敵とかマジ怖いよね。
なんで見えないの?
光学迷彩かよ。
このまま見えないとかもう勝ち目ないんですけど。
「これだけ広範囲に影響する術式ですから、複数もしくは、かなり高位の呪術使いがいるはずです」
賢者のフェデルマの感情の少ない声が上の方から聴こえてくる。
うわぁ、呪いだってよ。
呪いと魔法は何が違うんだろう?
「由来が違います」
フェデルマさんが説明してくれたけど、頭のいい人の説明ってはしょりすぎててわからないことあるよね。
「他にはどんな魔法、じゃなくて呪いを使ってくると思う?」
「魔法で大丈夫です。そもそも魔物が使う魔法自体が我々とは別系統のモノですので。 呪術使いは精神に働きかける幻術を得意としています。幻覚や幻聴、疑心や不和などを誘発させますね」
思ったよりえぐいだろ、それ。
精神支配されたNTRと、快楽堕ちしたNTRはどっちがキツイかなとか妄想している間も会議は続く。
夜目の効くミルチャさんやハーフエルフたちが、沼鬼を認識できなかったのは、呪術使いの邪眼によって、認識阻害の呪術がかけられていたからだそうだ。
邪眼。メンチ切るだけで相手を呪うことができる。スゲー。
「大掛かりな儀式も合わせて必要です」
睨むだけじゃないらしいです、ごめんなさい。
「対抗魔法とか解呪みたいなのはある?」
「コレよ」
ミルチャさんの右手にはウニョウニョ動いてこそいないが、それはもう立派にそそり立つ張形が握られている。
いわゆる男根。
何してんすか。
いや、こんな非常事態だからこそ生殖本能に目覚める的なアレですか?
妄想中の俺にフェデルマさんが補足する。
「陽根の魔除けにて邪眼に対抗できます。バァン様におかれましては男根を模した魔除け作成をお願いします」
ヤダよ。
なんで俺が男根の受注生産とかしなきゃなんないんだよw
いやまあ、そんなこと言ってる余裕はないんだけど。
邪眼を利用した広範囲呪術は、女呪術師を中心に行われることが多く、男根の御守りがあると直視できず効果なくなるらしい。
純情か。
外の斥候には渡せないから、ハーフエルフを戻さなかったのは失敗だったかな。
「問題ありません」
いつもの抑揚のない調子でフェデルマさんが心の声に応える。やめてw
「ヴァレッタ聖歌隊の多声声楽を合わせて展開すれば、邪眼以外にも効果を発揮する対呪詠唱となります」
子供を戦争に巻き込めと?
いや、ここは使えるものは使うのが正解だろ。
でも、胸のあたりがギリギリする。
「ごめん、陽根の魔除けはすぐつくるから、ちょっと考えさせて」
「ご随意に」
「攻城兵器の類は見えなかった?」
「破城槌と、食料でも入れてそうな大きな袋をいくつか抱えてるくらいで、それっぽいのは見えないわね」
雲梯どころか、戦列の前に配置する大型楯すら配備がないらしい。
都合よく考えるなら、相手がバカすぎる。いや、馬鹿だったか。
馬鹿だが、防御力に絶対の自信を持ってるってことか。
トロールは攻城兵器なんて使わないらしいけど、悪知恵の働く沼小鬼がいるなら、なにかやらかすかもしれないから要注意っと。
そもそも、知能の低いトロールが、戦列を整えて城攻めをすること自体普通はあり得ないらしい。
しかも沼から這い出してまで。
「そうそう、多分だけど泥粘漿が一緒にいるんじゃないかしら(ファンブルの影響)」
また新しいのきた。もうやだ。
ダウナー気分から抜け出せないので、毎日一回投票できるという勝手にランキングというのを下部にリンクさせて見ました。
これを押すとどうなるかとか詳細はわからないですが、よければ。
ザシャ「応援してくださいね」
鬱だ。




