私闘
ファンブル
鹿狩りの月 31
モットーくんから夕刻に殺人事件の報告が上がってくる。
市庁舎の1階で酒盛りをしていた人間と人狼が口論。
人狼1名と人間3名、合計4名死亡。
ついでに人間2名逃亡の報告あり。
はぁ。
何やってんだよ。
「検分は国造の精に、治安維持は前回同様、小烏丸様に、それぞれ手配完了しております。私闘による死亡程度でバァン様のお手を煩わせることはございませんのでご安心を」
モットーくんすげーな。
ってか、何か俺心配されてたよね、今。
「ありがとう」
感謝重点。
死亡報告書
報告者:モットー ドリュアス
ダグマル(人間 男性 25歳)
死亡理由:私闘
グンター(人間 男性 21歳)
死亡理由:私闘
ルイス(人間 男性 17歳)
死亡理由:私闘
リガル(人狼 男性 17歳)
死亡理由:私闘
以上
「喧嘩の理由がわかったら、一応報告してね」
モットーくんが頷くけど、ぶっちゃけどうでもいいし、なんとなく想像はつく。
「グンターさんとルイスさんってどんな人だっけ?」
「元傭兵の方ですね」
ええと、正義の人かな?
ダグマルさんは、この間亡くなったマクダちゃんのお父さん。フォローが必要なのはこっちだったってことですか?
この数日でダグマルさんの奥さんは子供と夫を一度に亡くしたことになる。
俺なら耐えられなくて、多分自殺するんじゃないかな。
いや、わかんないけど。
うぅ、心臓がバクバクする。
私闘禁止を訴えて一人神の平和運動すんぞコラ。
人狼のリガルさんは、生まれたばかりの双子のお父さん。
生まれたばかりなのに、お母さんの警らに四速歩行でくっついていく姿はむちゃくちゃ可愛かった。
砦外での活動を苦にしないので、すごく便利に使ってしまってたけど砦の中で死なれるとは思ってなかった。
「あとで人狼の家族のところに行きたい」
ダグマルさんの奥さんは女神とか色々な方面に手配済みだから、こちらは俺が行こう。
敬虔なウェヌス教徒のザシャ先生と司祭も一緒に。
「畏まりました。その前に、ハーフエルフのリネイセル様と五虎退様から、食害被害についての報告がいくつか上がっております」
まとめられた報告内容を聞いて眉をしかめる。
「情報の真偽を直接確かめたい。ハーフエルフの3人と五虎退にはすぐ来てもらって」
「沼地の奥で確認できた沼鬼は、大小合わせて四十以上。おそらくは出師の準備中と思われます」
「小さいものは1.3mほど。大きい個体は3m近く」
「武装は素手もしくは棍棒。防具をつけている個体はごく一部です」
ハーフエルフのリセイネルさんから、不穏な報告の再確認。
残りのハーフエルフは偵察監視の継続中。
「目標がこちらでない可能性は?」
「低いと思います」
遅れてきた五虎退から、いつもののんびりした雰囲気が消えている。
「白雪が、食害の現場付近から沼鬼たちと同じ匂いがしたって。マクダちゃんは多分奴らの斥候に見つかったんじゃないかな。 あと、不思議なのが所々で匂いが消えてるみたい。 っていうかリガルさんが先に報告に戻ったはずだけど?」
モットーくんが首を振る。
「そういった情報は入っておりません」
「あれー、おかしいなぁ。リガルさんが沼鬼にやられるとは思えないんだけど?」
五虎退が首をかしげる。
ハーフエルフのリセイネルさんは知っていたけど、五虎退は今しがた戻ってきたばかりで、こちらで起きた状況をまだ把握していない。
「リガルさんは亡くなったよ」
「!?」
ひとまず、殺人事件の件は後回しにして、防衛体制を呼びかけようと動き出そうとした矢先に、人狼の家族が子供殺しの連座により告訴される。
……は?
モットーの報告書
輝く月 18
住人数についての報告
報告者:モットー ドリュアス
追加難民:2名
人間(2)
死亡1名
ルフ(人狼 女性 17歳)
死亡理由:戦死
住民総数:115
内訳:
招来者:3
人間:94
ドワーフ:8
ハーフエルフ:3
人狼:2
熊猫人:2
吸血鬼:1
人虎:1
龍人:1
以上