脚気知らず
鹿狩りの月 29
4秒ほど空を飛んだら気を失いかけた。
着地は顔からだったので、気を失わずに済んだよ!
もうちょっと練習したかったけど、空を飛んだ反動で吐き気と頭痛がひどいことになってしまったので、その日の作業は中止に。
4秒飛べるじゃなくて、4秒で墜ちるってことでした。
一日一回転落死を防げるお守りみたいなものだけど、いや十分だよ。本当に。
久方ぶりにあんちゃんと興里で鼎談。
「追加チートで空を自由に飛べるようになったよ! だいたい4秒!」
「追加チートでコンビニコラボ企画のクリアファイルもらったよ!! あといくら鍛刀しても業物ができないんですけど!」
「ウチの子たちはみんな優秀だよ!」
あんちゃんの一人勝ちの様相。
解せぬ。
「そういえば、俺たち招来者って呼ばれてるらしいよ。モットーくんの報告書で知ったんだけど」
「招来者ねぇ。でも、みんな基本的にどっか違うとこから、無理やり呼ばれてきてたよね?」
「変な格好ってだけじゃなくてなんとなくわかるんだって。DNAレベル的な感じかね」
「子供たちの話だと、神話に出てくるらしいですよ。世界を救う勇者と滅ぼす魔王がどっちも招来者だそうですよ」
この世界の成り立ちから考えれば、どう考えたって駄女神の脳内神話な気がするけど
「漂流者みたいなものかね」
「それにルビ振っちゃダメ。絶対!」
「じゃあ、エn」
「それ以上はダメ。絶対!」
アニメ見たかったなぁ。
「ところで今日の議題はなんですか?」
「ジャジャーン! これですよ、これ」
「「おお!」」
興里に頼んでおいた、ザシャくん騎士爵位授与用の甲冑完成。
「これは、かっこいいですね!」
「てっきり大鎧みたいなの出来上がってくるかと思ってたけど。いやいや長曽祢の名前は伊達じゃないねぇ」
「見た目も重要だってバァンくんが熱く語るからねぇ。実際はザシャくんと相談したよ。軽くて早く動けるようにして欲しいっていうから、プレートアーマーはNGでしょ。小鱗鎧風なら当世具足じゃないけど小札かたびらに構造が似てるからね。でもすごいのはむしろバァンくんが支給してくれたカーボン素材とかだよ。チェインメイル並みの強度で重量半分以下の鎖帷子ができたもん!」
黒色に金の装飾が控えめにあしらったハーフヘルムと黒色の薄板を赤い威紐でつなぎ合わせた小鱗鎧。
いわゆる騎士から連想するプレートアーマーとは若干違うけれど、これはかっこいいと思います。
「中世風の中にも日本のテイストを感じるから、
なんか騎士団より武士団とかにしたくなる。明日、ザシャくんの騎士爵位授与の予定だから二人とも立ち会いよろしくねー」
「あー、なんか鎧見てたらお米食べたくなってきちゃいますね」
「あ……」
「「あ?」」
「え? もしかしてお米あるの?」
「米はない。米はないけど……大麦を押麦と丸麦にして炊いたのならあるんだけど。食べる?」
インベントリから取り出した炊きたての麦飯を見て、激しく首を縦にブンブンする二人に麦飯を振る舞う。
あ、あんちゃん泣いてる。
興里は口いっぱいに麦飯をほおばってる。男前すぎるw
「この食感は白米とはかなり違いますけど、なんか懐かしくて美味しいですT_T」
「いや、このもっちゃもっちゃした食感(もっちゃもっちゃ)、これはこれでなかなか(ムグムグ)。なんか味噌汁とか納豆欲しくなるわね(ゴクン)」
「大麦を押麦と丸麦にするの、かなり苦労したんだよ。インベントリの中で押したり蒸したり水分加えたり」
って聞いてないな。
「興里さん、いい食べっぷりですなぁ。おかわりあるからどんどんどうぞ。海苔はないけど塩はいくらでもあるから」
某八男にならって、島の海辺で海水から塩を錬成したからね。
ザシャ先生に護衛されながらだけど。
「こんなのあるならもっと早く教えてくださいよー」
「ごめんごめん。隠してたわけじゃないんだけど、なんか忘れてた」
このあとむちゃくちゃ麦飯食べた。
食べながら、マクダちゃんの話や他の子供たちの話、学校とか法律の話とか色々だべって夜を明かしてみた。
なんか愚痴に付き合ってもらってしまった感じ。
かなり年下の二人にグチるとか。
最近入り色々あったから弱ってたのかもしれないなと少し反省。
モットーの報告書
輝く月 16
住人数についての報告
報告者:モットー ドリュアス
追加難民:1名
人間(1)
住民総数:116
内訳:
招来者:3
人間:94
ドワーフ:8
ハーフエルフ:3
人狼:3
熊猫人:2
吸血鬼:1
人虎:1
龍人:1
以上
人間:亜人の比想定は3:1を想定してるんですが、ダイスの神様は人間贔屓みたいです。




