【閑話】棚からギフト
私は、銀盃花のウェヌス。
囲まれた菜園と愛と美の女神。あるいは怠惰と無精の女神。
電脳辞典にはそう書いてあるんだって、へー。
誰が教えてくれたんだったかな、ヘスティア?
まあいいや。
ウルズの泉の法廷で私の有罪が確定してからというもの、主神に管理者権限剥奪されて今ではしがない一般管理者。
私の世界なのに。
誰かに一般管理者じゃなくて囚人だから、とか言われた気もするな。誰だっけ?
まあそれもいいや。
「もう働きたくないでござるー」
「ウヒィャーァ!」
久方ぶりに駄女神から白い部屋へのご招待。
「相変わらず、キモイ叫び声だよねwww」
「これはこれはウェヌス様。囚人の環境には慣れましたか?ってかなんかここくさくないですか?」
周囲の銀盃花も最初に来た頃の活力を感じない、どころか結構な量が枯れてる。
「それがさー、もう主神の人使いの荒さったらないのよ。いまデバッグ作業やらされてるんだけど、もう無休で40日連続勤務継続中。お風呂も入れないし、椅子と椅子を繋げて寝るか机の下で寝るか机に突っ伏して寝てるかしてると叩き起こされるかのどれかなのよ。T_T」
「御愁傷様です」
なんかkurobakoみたいなことになってるなw
前回から40日も経ってないけど、時間の流れが違うのか、駄女神の頭がおかしいだけか。もしくは両方。
ってか帰りたいなんてセリフは、俺が何度も言ってたよ。
「しかもこれだけ働いてるのに、机代やら弁当代やらショバ代やら引かれて、今月の手取り1477円だって。信じられる!?」
「それはそれは負け組乙ですね」
ってかそのネタまだ引っ張るの?
「なんとか防壁の穴を探してるんだけど、いけそうかなって思うたびに何度も脳を焼かれそうになってホントやんなっちゃう」
「なにしてんすか。おとなしく刑期を全うしてくださいよ」
「私だって早く帰ってコタツで寝ながら見もしないテレビつけっぱにしてネトゲしながら寝落ちして風邪引きたいわよ」
「そういえば本日はどのようなご用件で」
「そうそう、今日は追加のチート能力をあげようと思って」
「ウェヌス様大好き!」
「今更そういうのいいから。でね、飛行能力とネット通販できるようになる能力どっちがいい?」
「そのパクリは大丈夫なんですか? えーと飛行能力お願いします。ビュッビュッてする大食いの連れもお金もないですし」
「チッ」
いま、舌打ちしたよね?
「どれくらい飛んでいられるものなんですかね、あと速度とか」
「速度はわからないけどそうね、今の体力だと大体4秒くらい飛んでいられるかしら。ちなみに飛んでる間はむちゃくちゃ体力消費するから気をつけてね」
4秒。
「ありがとうございます!」
「あれ? バカジャネーノとか言われる覚悟完了!だったんだけど?」
「いやー正直むちゃくちゃ嬉しいです!建築の最中に何度も足を踏み外しそうになって、何度も漏らしかけてるので」
「ふーんそうなんだ、つまんないの。ちなみに飛行能力は主神からの贈物で、ネット通販能力は私から。物のやりとりができるんなら元の世界に帰れる気がしてイロイロいじってたら、レンジの中のゲル化したバナナみたいなのとかザ・フライみたいなのしか召喚できなくて。あと実際は権利関係で使えないハズレチートだったんだけどねー!」
「バカジャネーノ。使えないチート混ぜるとか、何が楽しくてそんなことしてんだよ」
「なんか最近潤いが足りなくてさー。何でかわからないけど、他のニートに話しかけてもなんか無視されてる気がするんだよねー。私何も悪いことしてないのに。だからまともに相手してくれる君をからかって溜飲を下げたいなーって。そうそう、そういえば、最初にBANしちゃった50万人の中に、じゃなかった。私の管理権限奪って逃げ延びたチーターいたでしょ? あいつがなんか、自分を正義のハッカーで、私を悪役クラッカーみたいにしたインターネットミーム垂れ流してるみたいなんだよね。 チョー酷い! 私何も悪くないのに」
「おっ、そうだな」
どう考えても犯罪者に立ち向かう、被害者ニートたちの冒険譚。
「そういえば、残り刑期49万9885年に減ったんだけど。君さー、もうちょっと、ちゃっちゃと効率よく仕事できないかなー?」
あ゛あ゛っ?!
そこはかとなくみなぎりほとばしる殺意。
かなー?じゃねーよ。
しかしここは大人の対応。
善処いたします。
「バカジャネーノ。お前こそ、早いとこ脆弱性でもなんでも見つけて帰れる段取りつけろやボケ」
「本音と建前が相変わらず逆だよ」




