熊猫人
鹿狩りの月 28
「会いたい!会いたい!」
いつものわがままを受け止めてくれるモットーくんイイヤツ!
「今朝方、夫婦で住民登録を済まされました。無職だそうです」
熊猫人がやってきた ヤァ!●ァ!ヤァ!(JASRA●対策)
研究用に某国からレンタルされたパンダじゃないし、子供が生まれても問題なし、何より政治が絡まない!
パンダ万歳!
いや、落ち着こう。
見世物じゃないんだから。
会いたい!会いたい!
パ・ン・ダ! パ・ン・ダ!
そして目の前には長椅子に腰掛けるパンダの夫婦。
(ムシャムシャ)
「お呼び立てして申し訳ありません、パンダチーズ万歳」
「? (ムシャムシャ)バァン様におかれましては領主就任の由、誠に大慶至極に存じ上げます」
(ムシャムシャ)
パンダチーズのCMみたいなの来たらどうしようとか心配してたので、ご丁寧な祝辞をいただきちょっと安心。
(ムシャムシャ)
しかし、相手は愛らしい見た目に反して意外に凶暴なあのパンダである。
いや、熊猫人だけど。
(ムシャムシャ)
龍人と面談した時は、恐怖でちびりそうになった。
(ムシャムシャ)
人狼と人虎は、俺が獣人好きなせいか、四速歩行の獣とはそもそも骨格が違うためか恐怖よりも別の感情が大きかった。
(ムシャムシャ)
だが、目の前の熊猫人は、喋っている以外、ほぼ現実のパンダと同じ。
そう、パンダ。
(ムシャムシャ)
想像してみてほしい。
(ムシャムシャ)
小さな机を挟んで、目の前の長椅子にパンダが座っている状況。
パンダと言っても要は熊。
もちろん両者を隔てる檻も柵もない。
(ムシャムシャ)
龍人に感じたモノとはまた違う、現実的な恐怖。
例えるなら、動物園の檻に間違って落ちてしまったような恐怖。
(ムシャムシャ)
しかも、先日の食害は「熊もしくは、それに類する魔物」の仕業。
(ムシャムシャ)
唯一の救いは、面談中にもかかわらずムシャムシャムシャムシャ笹食ってるところか。
(ムシャムシャムシャムシャ)
いやいや、笹食ってる場合じゃねーだろw
うん、可愛い。
「いやー、この辺の笹は甘くていいですね!(ムシャムシャ)」
「そうよね!(ムシャムシャ)こんな甘い笹食べたの初めて!(ムシャムシャ)バァン様もおひとつどうぞ」(ムシャムシャ)
俺の視線を感じたのか、笹談義を始める熊猫人夫婦。
笹もらった。
ってか、食えねーよw
と思ってたけど、食べられた。
これ笹じゃなくてサトウキビじゃないですか。そういえば、菜園にもあったな。
「美味しいですね」
(ムシャムシャ)
「ちょっとこれはやめられないですね」
(ムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャ)
「そうね、おいしわ」
(ムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャ)
ムシャムシャうるさいよw
サトウキビをあんまり食べ過ぎると、虫歯になるよ。
「その勢いで食べてたら、この辺りのなくなっちゃいますね」
バサッ。
二人の手から笹、もといサトウキビがこぼれ落ちる。
「「バァン様!助けてください!!」」
彼らは基本雑食らしいけど、食事の9割が笹だそうです。
肉を食べるか聞いたところ、
「好んでは食べないですね」(ムシャムシャ)
「お腹もたれちゃうのよね」(ムシャムシャ)
実際のパンダはもともと肉食だったのを、無理して笹を主食にしたために、しょっちゅう腹痛になるらしいですw
南側でカールさんに畑拡張の指揮を取ってもらっている関係でちょいとご相談。
「島内でサトウキビや小麦などの研究開発をしているのですが、いま菜園管理者を募集してたところです。ご興味はありませんか?」
「サトウキビ!」
宮崎アニメのキャラクタみたいな返事だけど、多分やってくれるってことだと判断。
採用。
島内菜園で、骨粉を使った栽培をお願いする。
カールさんが手一杯になってきていたので、正直助かる。
何しろ蓄えもなく、いきなり100人からの大所帯になったおかげで、島内のチート菜園がフル回転。
そうえいば、ウェヌス様って菜園の女神だっけ?
肉系は、狩りなどでなんとか回っているっぽいので、チート畜産は自重。
おかげで骨粉の在庫がいつも不足している。
人狼がたまに骨を持ってきてくれるが、スケルトンは弓持ちなので、森で見つけても人間は基本的に逃げてくる。
約8割が農奴なので安全第一。
土塁増築中に何度もスケルトンの襲撃を受けるけど、ザシャ先生のおかげで生きていられる。
小堡拡張で広くなってきたので、門番とかも置かないといけなくなってきたかも。
熊猫人夫婦への報酬はサトウキビ食べ放題。
太っ腹!
笹はエネルギー返還率が悪く、ほぼ一日中食べてないとお腹すいて死んじゃうらしい。
肉食え、肉。
その他事務手続きやら、下水処理施設計画の報告、浴槽の精のヴァーニャさんと浴場建設の相談などなど雑務で日が暮れる。
なんなの。
夕方の報告では、喧嘩でけが人が数人出たとかなんとか。
知らんがな。




