食害
夜にあがってきた、魔物の気配増大の報告に対応して警戒態勢を引くも、特に何も起こらずに朝を迎える。
夜明けとともに魔物も気配が薄くなったとのことで警戒解除。
まあよかったということで、みなさんお疲れ様でした。
ハーフエルフと人狼には休憩を挟んでもらいつつ、引き続き警戒の依頼。
念のために、住民に魔物に警戒するよう市庁舎の掲示板にて告知。
トイレの水については、水の精のマウロ爺さんに相談したら簡単に解決した。
実は、土の精のコーネリアスとシーラが子供たちと契約させるために連れてきた妖精の中に、
水運びの精
薪の精
麦酒の精
煮炊の精
馬を梳る精
厩掃除の精
などなど、色々なコボルトがいたらしい。
知らんかった。ってかみんなコボルトかよ。
「コボルトを持つ(einen Kobold haben)」ということわざの意味は、内緒の援助者を得てすべてがうまくいくという意味。
コボルトというのは、基本的にありとあらゆる家事をやってくれる存在で、古い時代には、すべての女房子供が一人づつコボルトを持っており、たくさんのコボルトに好かれたメイドは有能なメイドとして評判になったとか。
ただ、コボルトの愛情が深くなりすぎると、恋人ができそうになるのを邪魔したり、ミルクや食べ残しなどの約束を忘れると、仕返しに散々ないたずらをして家から去ってしまう。
日本で言うところの座敷童に近いものかもしれない。
というわけで、子供たちと妖精にお願いして各トイレの水槽に水を運んでもらうことに。
これで道端がウ●コまみれになる羽目は回避。
荒神さまの協力を得たということで、モットーくんに依頼して、国造の精たちに下水道及び処理施設建設計画を立ててもらう。
そろそろ、都市機能が動き出してきたが、貨幣制度はないので今はパンやら野菜の物々交換。
ファサールさんがいないが、貨幣制度についてそろそろ考えないといけなくなる時期かもしれない。
人狼が狩って来たウサギやイノシシ、ハーフエルフが採取して来た果物や野草、ドワーフたちはすぐ造れる果実酒や蜂蜜酒・麦芽パンビールなんかを住民同士が物々交換している。
ドワーフたちからは白いパンではなく、硬い黒パンを希望された。
好みの問題だけでなく、黒パンからビールを造るため。(なんと黒パンを水に浸して数日置くとビールができる!)
大麦はあるけど、ライ麦がなかったので手持ちを分けてもらい、ついでに大麦でのビール作成もお願いする。
ちなみに台地のコボルトたちも自分でビールを作っていたので試飲させてもらったが、かなり独特で正直飲めたものじゃなかった。
ドワーフのビールに期待。
人間の男衆には、周辺の木の伐採をメインに依頼。
ただ、手工業が発展しないというモットーくんの意見を採用して、インベントリの道具を渡さなかったところ、作業が遅々として進まない。
いや、自分でやると数秒なので感覚が麻痺している。
石の斧で直径1m未満の木を1本伐採するのに約2時間。木の根を引っこ抜くのはさらに重労働、その後の剪定・運搬を含めて大変な労力を必要とする。なので木の根はそのままにしておいてもらい、自分で回収。およそ5秒。
運搬は半分を譲り受けて、残りはお任せ。
伐採の謝礼は一宿一飯。
俺を自身の所有者と認識している農奴が多いせいか、対価としてはどう考えても安いのに大変感謝される。
お前らを所有した記憶はないです。
住民に対する給金やインフラ・安全。
それらに対する税金をどうしようとかぼやぼや考えてたら、大変なことを思い出した。
「俺がやりたいのは都市経営じゃなくて、城塞都市づくりなんだよ!!」
軽く気持ちを吐き出したあと、生温い眼差しのモットーくんとザシャくんに音読されながら事務処理に戻る。文盲乙。
「白虎人?」
モットーくんの報告を聞きなおす。
「はい、今朝 こちらで一時滞在登録を済まされました。職業は冒険者だそうです」
「会いたい!」
興里のとこにいる剣虎の白雪も可愛いが、目の前の白虎人も実に素晴らしい!
「あんたが、神託のバァンかい。思ったより普通だな」
ズガンッ!
イタイとこを突かれた。
別に俺だって上に立つ気なんてなかったよ。バーカバーカ。
俺なんかよりもよっぽど王の資質がありそうなのが、昨日会った元貴族の吸血鬼のミルチャ。
ただ、あれに任せたらどう考えてもゲリラ戦に焦土作戦の末、串刺し公とか言われる血筋っぽいので却下。
「アタイは白虎人のタマってんだ、よろしくな」
女性だった。あと名前。
いや、突っ込んだらダメだ。喰われかねん。
でもタマって言ったら、国民的三世代同居アニメの白猫。
なんかだんだんそう見えてきた。
鈴のついた赤い首輪をプレゼントしたい。
「宗教について記載がないですが、タマさんはウェヌス教徒ではないんですか?」
ザシャ先生が質問する。
「悪いが違うよ。ここには面白そうだから見学に来ただけさ」
渋い顔のザシャくん。
「ご存知のようにウチはできたばかりで人手が足りてないんですよ。よかったらお手伝いいただけませんか?」
「しばらくやっかいになる予定だから、報酬と内容によってはな」
ニヤリと笑顔のタマさん。
そうだ、思い出した。
「島に未確認の洞窟が幾つかあるので菅、そこの探索をお願いできませんか?魔物がいたら報告してもらえれば討伐隊を結成しますので」
報酬は宿屋と食堂の利用ということで契約成立。
斥候任務なので、パーティは組まず単独で行くらしい。男前。
ただ、道具が足りないわ、店はないわということなので、松明など用意できるものは渡しておく。
お気をつけてー。
翌日、6歳の女の子が魔物に喰われて死んでいるのを、砦の外で人狼たちが発見した。
モットーの報告書
輝く月 10
住人数についての報告
報告者:モットー ドリュアス
追加難民:1名
人間(1)
住民総数:114
内訳:
招来者:3
人間:92
ドワーフ:8
ハーフエルフ:3
人狼:3
熊猫人:2
吸血鬼:1
人虎:1
龍人:1
備考
以上




