荒神さま
内容と後書きの報告書とでは時間にズレがあります。
内容からすると、後書きの報告書は未来日記。
「その両の眼潰されたくなくば、汚らわしい目で余の姿を見るでない」
巨乳ではない。
だが、いい感じに張りのある胸元には、その包まれた中身を想像する際の助けになるであろう半透明の刺繍が施され、腰のあたりから脚線美を引き立てるように大きなスリットの入った、純白のアオザイのような衣装。
頭には薄い金の刺繍の入った白いカンドン帽子。
そんなアオザイ美女になじられた。役得。
厠の神のフールーさんが連れてきた荒々しくも神々しい美女。
「この子は私の親友で、竃の神のヒーちゃんだよー」
「ヒーちゃん?」
「ヒヌカじゃ、下衆ごときが余の名前を呼ぶでない、殺すぞ」
フールーさんにヒーちゃんって呼ばれた時はデレデレだったのに、俺が読んだ途端に汚物を見るような目で睨まれた。
なんというご褒美!
あ、なんか悪寒が走ったっぽい顔してる。ヒーちゃん。
竃の神は女性だけが祀ることを許される沖縄の一番偉い神様。
竃の数だけいるらしい。
沖縄なのにアオザイ?
そう思う諸兄も多いかと思われる。
だがちょっと待って欲しい。
体のラインがしっかり出ているのでここは許してほしい。眼福。
「ヒーちゃんはねー、不浄除去の神様でもあるんだよ。火でブァーってやってもらってバーッっでいいよね!」
フールーさん、もうちょっと出来る女神っぽいと思ってたのにちょっとアレなのかもしれない。
「えーとですね。多分なんですけど、表面だけ焼いて中が生焼けだと、内部で腐敗するだけなんだと思うんですよ」
ヒヌカ様に睨まれる。漏れそう!
「ルーちゃんに楯突くとはいい度胸じゃ」
「ルーちゃん?」
バッと右手を掲げる竃の神のヒーちゃん。
「我が眷属、荒神らの力をなめるな!」
輝く光とともに小さな男女の子供の精霊たちが現れる。
ざっと100人!(多分108)
可愛い!
あともっと睨んで!
「(ぞわっ!)こやつらは火之迦具土命と火焼速女命じゃ」
「えーと、確かどっちも火の神様ですよね。あとは温泉の神でしたっけ?」
「火だけではなく、土器の神であり、精錬の神じゃ。こやつらなら造作もない」
「ありがとう、ヒーちゃん!これで厠事情がいろいろ捗るよ」
「ルーちゃんのためなら全然だよ!」
なんかよくわからんが百合百合しい。
でもヒーちゃんの眷属とやらはみんな複雑な顔してるよ。
まあ、やらされることは堆肥づくりだもんね。
「まあ、俺たちどうせ社畜みたいなもんだしな」
あ、ブラック企業発見w
さしずめウチはそのブラック企業に外注するお役所ですかね。
ゲームの世界でも現実と同じかよ。
あれ、ここ異世界だっけ?
「13年に一度、秋から冬にかけての式年祭には巫女を配し、夜通し荒神神楽を祀れ。さすれば荒ぶる魂も鎮まろう」
13年に一度かよ。ひとまずは今年でいいのか?
なんか、フールーさんに丸投げしたらとんでもないことになったような気がする。
沖縄県民とかカグツチ系信徒に殺されても文句言えないかもしれない。
でも、直接やるのは沖縄の神様じゃないし、荒神といえばスサノオ、屎戸に無理やりつながるし、まあきっと大丈夫!
とりあえず、どこか地下に処理場をつくって下水道で汚水を集め、荒神たちが高火力と攪拌で無理やり堆肥化。それを農場で再利用するという方向で。
激しくエネルギーの無駄遣いな気がしないでもないけど。
南側の土地が開けているのでそちらに農場を広げて、槍穂崖にある放牧地も南側に移設することに。
放牧地でも処分に困ってたからね。
まあ、堆肥に適さないようなら、地中深くに埋めたてる方向で。
色々な方面からバチが当たりませんよーに!
その夜、ハーフエルフと人狼、見張り塔の吸血鬼から、魔物の気配が急激に増えていると報告が複数上がってくる。
ヒヌカンとフルヌカン
ヒヌカンは、火ヌ(の)神。
フルヌカンは、フル(豚便所)ヌ(の)神。
フルとかフールーの語源は色々だそうですが、それ以外はなんとなく伝わる気がしますよね。
モットーの報告書
輝く月 9
住人数についての報告
報告者:モットー ドリュアス
追加難民:2名
人間(2)
死亡:1名
バシリー(人間 男性 32歳)
死亡理由:食害
住民総数:113
内訳:
招来者:3
人間:91
ドワーフ:8
ハーフエルフ:3
人狼:3
熊猫人:2
吸血鬼:1
人虎:1
龍人:1
備考
食害による被害について
先日の私闘時逃亡した一人と判明
以上




