クッコロ騎士団
クッコロ騎士団。
黒鉄の鎖帷子を着込み、丸盾、戦斧、投戦斧、柳葉槍、長刀を各々手にしたそれは、妖精の女王メイヴを守護する妖精国最強の騎士たち。
ただ騎士というよりは、ヴァイキングの戦士といった方がしっくりくる。
真ん中の巨人が持ってる、あのうっすら輝いてる剣はウルベルトですかね。
「「「「くっ、殺せ!」」」」
「どうじゃ、良いものじゃろう」
ヴァーニャさんたちがワンコと戯れている間、特に何もせずのんびり寝転がりながら待ってた。
たまに人魚の部族長の息子の牛(わかりにくい)のことを思い出してあげながら。
のんびりするのは久しぶりな気がする。
やらなきゃいけないことが多すぎて、なんかもうどうにでもなーれのAAばかりが浮かんでた。
少し前までは、常に命の危険が迫っていた状況だったから、こんな風に無防備に寝転がれる現状が幸せなことなのはわかってる。
肝心の城塞をほとんどつくっていないけど。
いや、本当はわかってる。
補給も援軍もない状態の城塞なんて、大軍相手にはこけ脅しにしかならないことも。
しかも魔法があって精霊がいて巨人もいて、おまけにチートな能力を持ってるニートがいる世界。
でもやれることはこれくらいだし。
鬱々としていた感情を追い出すように、しばらくの間、流れる雲をぼんやり眺めてた。
3時間後、ご休憩から帰ってきたメイヴさん(とセシュさん)は大層ご満悦の様子。
後ろで緑の男の子が膝を抱えて泣いてる。御愁傷様。
「あの牛は大変良いものであった。褒美にその蜂蜜酒を飲み干すことで聖別代わりとしてやろう」
そう言いながら、赤い液体が溢れんばかりに注がれた杯を大仰に渡してきた。
蜂蜜酒は本来黄金色のはず。
それなのに深紅の液体で満たされた杯を。
「其酒を飮乾てその盃を奉れ。然すれば島の支配権と過去を見る力、そしてこの騎士団が得られよう」
「「「「くっ、殺せ!」」」」
「どうじゃ、良いものじゃろう」
お前ら大きすぎて、凌辱されてる姿がイマイチ思い浮かばないんだよ。
「えーとこれ、飲み干さないと駄目なんですよね?」
「妾の血肉を別ける意味があるからのぉ。酒が苦手とあらば、みとのまぐわひでも構わぬぞ」(ニヤニヤ)
これを飲めと。
ご存知の諸兄姉も多いかと思うが、僭越ながら解説させていただくと、メイヴの赤い蜂蜜酒には彼女自身の経血が配合されており、大変健康に良いものだと神話の昔から言われておりますです。はい。
それを飲めと。
飲み干せと。
月桂酒ならぬ月経酒を。
(うまいこと言えた!)
俺の右手には赤い蜂蜜酒。目の前には全員が3m近くある屈強な女巨人騎士団。
どうしてこうなった。
こんなことなら一緒に閨門をくぐっとけばよかった。
こんな得体の知れないモノを飲むくらいなら、今しがた数戦こなしてきたと思われる女神にお願いする方が数百倍はマシな気がする。
そうだ、そうしよう。
相変わらず妄想の海を漂っていたら背後から突然、ヴァーニャさんに杯を持つ手を掴まれた。
「気持ち悪い顔で何をグダグダ考えているの。さっさと飲み干しなさい」
杯を口に押しつけられ、後頭部を薄い胸で押さえつけられ、鼻をつままれて。
それはあたかも、クッコロ姫の口を無理やり開かせて、白濁とした何かをこれまた無理やり飲ませるようなやり方で。
グビグビグビー。
喉をつたう果実感。(多分違う)
げほげほ、
オェー(AA略)
orz
うはぁ、反射的に飲んじゃったよw 全部!
いや、鼻をつままれて味はよく分からなかったけど、変な趣味に目覚めたらどうしてくれるんだよ。
「バァンさん、お申し出はありがたいんですが、私やっぱりあの人魚と結婚することに決めました。ゴメンなさい!」
そしてなんで俺が振られたみたいになってんだよ。
あ、これが大・どんでん返しか、ってうるさいよ。(ひとりボケツッコミ)
モットーの報告書
鹿狩りの月 28
住人数についての報告
報告者:モットー ドリュアス
追加難民:2名
熊猫人(2)
住民総数:109
内訳:
招来者:3
人間:86
ドワーフ(8)
人狼(4)
ハーフエルフ(3)
熊猫人(2)
ヴァンピール(1)
人虎(1)
龍人(1)
備考
教会建設の要望あり
私闘の報告あり・要治安維持対策
以上




