緑青(ろくしょう)色の牡牛
半海豹のセシュさんに同行してもらい、遠目でこちらを伺っていたウミウシ。もとい、人魚の部族長の息子の牛(わかりにくい)を迎えに行く。
人魚の部族長の息子の牛(わかりにくい)に同行を願い出ると、快く応じてくれた。任意同行。
「こちらが件の牡牛です」
牛だけに!
妖精の女王メイヴに、生贄を差し出す我がパーティ。
責任分担。
「ほぉ! これはなかなか。なるほど、バァンでかした。 そちも悪よのぉ」
「いえいえ、メイヴ様ほどでは……これで七年にもわたる争い(想像)にも終止符が打たれることでしょう」
越前屋から袖の下を受け取る悪代官的発想。山吹色の菓子。いや、緑青色の牡牛。
「離婚調停もこの牡牛があれば解決じゃ」
おもむろに人魚の部族長の息子の牛(わかりにくい)に近づき、燃えるような赤銅色の角を掴んで皮を剥ぐ女王メイヴ。
「「!!」」
そこに現れたのは、解体作業を待つ人魚の部族長の息子の牛(わかりにくい)ではなく、緑青色の髪をした美しい全裸の少年(推定16歳)。
「しかも人魚の変異種ときたか!」
キャー○び太さんのえっちー!
違う。
牡牛じゃなく人魚だってバレた。やばい。
死んだね。
これは死にましたわ。ええ。
嗚呼、短ぇ夢(温泉)だったな……。
ってか、あれのどこが半魚人なんだよ。
ちょっと、神がかった美少年なんですけど。
あと、俺以外美形ばかりなの、いい加減にしてほしい。
頷いているマウロ爺さんは仲間かもしれない。
「い、いきなり何するんですか! その毛皮、ぼくの毛皮返してくださいよー!!」
牛皮を高々と振り上げて、美少年をからかう大女の図。
「ハハッ!これは良いものじゃ」
カンラカンラと打ち笑う妖精の女王メイヴ。
某鼠の笑いにも似た恐怖感。
「ちょっと待ったー!」
おーっとここでセシュさんから、懐かしのちょっと待ったコールだー!
いや、だから若い子には伝わらないから。
この後、大・どんでん返し!ってやられても、それはそれで困るんですがそれは。
うーん、マジで失敗したかも。どうやって逃げようか。
三人で喧々囂々していたので、少し離れて推移を見守る。
執行猶予中。
しばらくして、妖精の女王メイヴがゆっくりした足取りでこちらへ向かってくる。
殺されるなら痛くないのがいいなぁ。
「話はついたぞ」
それは何より。
「三人でしばらくしっぽりすることになった故、後のことはそこなワンコに尋ねるが良い」
緑がかった黒い毛の犬、妖精の番犬を指差し、消えていく三人。御休憩的な。
……えーと。とりあえず死亡回避ってことかな?
「我が名はクロン。何なりとお申し付けを」
「バァンさん説明をお願いできませんか」
納得いかない顔のザシャくんに説明する。懇切丁寧。
「旦那の牛と自分の牛、どっちが優れてるかで争ってるんだよ。多分。離婚調停ってのはよくわかんないけど」
「そんなことよりクロン!」
今まで沈黙を守ってきた浴槽の精のヴァーニャさんが勢い良く立ち上がる。
「モフモフ撫でてもいい?」
「ご随意に」
「ふにゃー」
蕩けそうな声でクロンの背中に乗るヴァーニャさん。幸せそう。
ワンコかわいいよね。
ちょっと何をどうしていいのかわからなかったので、ヴァーニャさんが満足するまで待ってみる。
俺も撫でたかったけど、近寄ると低く唸ってくる気がしたので自重。
ザシャくんはいいのに、何で俺はダメなんですかね。
三時間ほどしてから、泣きべその美少年とツヤツヤで満足げな美女二人が戻ってきた。
「……もう、お婿にいけない(涙)」
延長戦ご苦労様でした。
モチーフは全然違う話になってしまいましたが、クアルンゲの牛捕りとかクーリーの牛争い。
地名識とか。
モットーの報告書
鹿狩りの月 27
住人数についての報告
報告者:モットー ドリュアス
追加難民:1名
人間(1)
住民総数:107
内訳:
招来者:3
人間:86
ドワーフ(8)
ライカンスロープ(4)
ハーフエルフ(3)
ヴァンピール(1)
ウェアタイガー(1)
龍人(1)
備考
種族間対立の報告複数あり。要対応。




