揺れる重い
「なんじゃ、そんなことは憂うに及ばぬ」
妖精の女王のメイヴがそう言うと、巨大な躯体が幻影のように搔き消える。
そう思った瞬間、小さくなったメイヴが目の前に現れる。
心を読むのやめてもらえませんかね。
小さくなったといっても俺よりでかい。
多分2m以上ある。
当然というべきか。
目の前でメイヴの大きな2つの何かが揺れている。
擬音にするなら"たゆん"あたりか。
"ダイナマイト"とか"巨"とか"魔"とか"超"とか"キングなスライム"的な何かが。たゆんと。
その動きは3D物理エンジンだけでなく、バネ強度や抵抗値を含めた複雑な計算結果、さらにはコライダーの影響により加速度的に。
"たゆんたゆん"
取り乱した。
巨乳派閥ではないので、それをどう表現すればいいのかわからないが、その揺れる巨大な何かに圧倒された挙句、妄想の海にダイブしていた。
致し方なし。
その名状しがたいものがいつの間にやら頭に載っている。おそらくダイビング中に。
なぜなのか。
「重いので載せないでいただけませんかね?」
「いやなに、載せて欲しそうな顔をしとったのでな」
顔は見えないが、ニヤニヤしてそうな声が聞こえてくる。
柔らかく、大きく、そしてズシリと重い何かの、遥か上の方から。
「お、俺は尻派なんですよ」
絞り出すようにそう言い放ってみるものの、この肩にずしっとくる重みに耐えられそうにない。
両手を上げて、両脇から押さえるように持つ上げつつ退けるべきか。
それとも後頭部の方から手を回して前からこう、正面からグッと押し返してみるべきか。
あるいはこう、首をひねって捻るように……
「しゃがんだらいいと思いますよ」
なるほど、それは盲点でした。
というかザシャくん、君まで心を読むのはやめてもらえませんかね。
しゃがみこんで、地球の重力に縛られたその何かから逃れようとすると、目の前が暗くなった。
挟まれた。
親方! 空からおっ○いが!
すごいや、ラピュータは本当にあったんだ!(ガリバーの方)
取り乱した。
というか、息ができない。
フガフガ。
もうどうにでもな~れ(AA略)
手で押し退けるわけにもいかず、快楽の海でもがいていたらザシャくんに助けられた。残念。
昇天するかと思った。
「俺は尻派、俺は尻派、俺は尻派、俺は尻派、俺は尻派、俺は尻派、」
よし大丈夫!煩悩退散。
「このサイズなら問題なかろう。みとのまぐわひせむ(一発やろうぜ:激しい意訳)」
古事記かよ。
「目合ひ」か? 同衾か? イチャコラか? 素敵!抱いて! でもクッコロでも、妾はなんでも良いぞ」
結構サブカルっぽいのな。
両手の指をワキワキさせながら迫る妖精の女王のメイヴ。
涙目で、俺の前に立ちふさがってくれるザシャくん。
素敵!抱いて!
「すいません、妻帯者なんで」
「妾にも7人の夫が居る。6人は死んで残っているのとは別居中じゃ。そんな小さなこと気に病むでない」
7人居る、じゃねーよ、ほぼほぼ死んでるじゃん。ってかやっぱりデス・ノボリかよ。
いや、これは断っても最終的に同じルートに行くんじゃないのか?イナンナとかイシュタル的に。
妖精だか精霊だかの三人は未だに跪拝、いや這いつくばったまま肩を震わせている。笑ってんじゃねーぞコラ。
仕方がない。
何、自分が助かるためには多少の犠牲はつきものだ。
「そんなことよりメイヴさん、今別居中だとか。もしかして雄牛に興味はありませんか?」
牛と聞いてたメイヴさんの、ワキワキしていた指の動きが止まる。
「それはもう立派な雄牛がいるんですが?」
「今すぐ連れてまいれ」
メイヴ
ケルト神話に登場するコナハトの女王。
ロミオとジュリエットでは妖精の女王マブ。
CV:佐倉綾音
ではないし、サーヴァントでもない。
このあと多分ライドオンの予定。
みとのまぐわひ
"この天の御柱を行き廻り逢ひて美斗麻具波比せむ"
『古事記 上』
国生みのお話。
目合ひ
目と目を合わせる。男女の交接。
モットーの報告書
鹿狩りの月 26
住人数についての報告
報告者:モットー ドリュアス
追加難民:1名
龍人(1)
死亡:1名
フゼイフ(人間 男性 55歳)
死亡理由:老衰
住民総数:106
内訳:
招来者:3
人間:85
ドワーフ(8)
ライカンスロープ(4)
ハーフエルフ(3)
ヴァンピール(1)
ウェアタイガー(1)
龍人(1)
備考
先日の魔物による食害による種族間対立の報告複数あり
以上
クリティカルが出たので、龍人出してみました。
話は進まず、報告書の日付だけが進む今日この頃。




