風呂・おぼえていますか
温泉を見つけたにも関わらず、まだ一度も入浴していない。
そして最近【はじまりの土地】が臭い気がする。若干。
いや、清潔を保つように配慮はしている。
一番清潔感があるのは公共トイレ。
あんちゃんの指導のもと、子供たちが毎朝掃除しているので。
ザシャくんは騎士のマナーとして毎日沐浴をしているらしいが、カールさんはじめ子供たち農奴は入浴の習慣がないそうでかなり臭かった。正直エミリアさんも。
たまに洗濯ついでに川に入っている程度。
なので(可能な限り)毎晩、インベントリでお湯をつくってタライで足湯をしつつ、布で体を拭いてもらうようお願いしていた。三助的働き。
あと気になっていた歯磨き。
自分用に房楊枝をつくって磨いていたが、カールさんたちは爪楊枝で掃除してた。
磨きにくそうにしていたので、木製の房楊枝や豚の毛と馬の毛を使った歯ブラシを大量に配ってプラークコントロールの指導。
小学校の校医みたいに。
石鹸も作成。
昔学校で作り方を習ったので、インベントリにある水酸化ナトリウムを使ってみた。
ただ作成後、数週間してから使えるようになるらしいので、まだ寝かせている。
単純に人数が増えたせいかもしれないが、臭いが気になる。日本人だからかもしれないけれど、気になるものはしょうがない。
「衛生及び健康上の理由により、サウナの設置を進言します」
ファサールさんとこのモットーくん(10)に進言された。10歳にしてこの風格。
よかった、気になってたのは俺だけじゃなかったみたい。
ボイラーを使わない石を熱するサウナなら、手軽に設置できそうだけど苦手なんだよな。
彼らの平均寿命は35歳に満たなかったが、ウェヌス様の加護により神聖魔法で(一部を除き)病気を治せるようになり、50歳程度まで伸びたらしい。
そういうことで、ウェヌス様の人気は絶大。
おかげというか逆にというか、衛生面に気を使うことが減ったとか。
えー。
どっかのニートは持ってるかもしれないけど、クリーンという魔法はない。
貧乏というか宗派的な清貧が理由の根本とはいえ、未然に病気を防ぐという意味でも、精神衛生的な意味においても小綺麗な環境で過ごしたい。
そして本題のお風呂。
源泉が少し離れているせいで、建設予定地がなかなか決まらない。候補の一つは放牧場にしてしまったし。
埒があかないので、ザシャくんと水の精のマウロ爺さんに相談しに行く。
源泉に着くとマウロ爺さんの隣には、びっくりするくらい大きな花冠を被った長い銀髪のロシア系美少女が立っていた。
リアル妖精。
あんな美少女が大人になると、クマを一撃で倒せそうな樽体型になる不思議。
「物凄く失礼なこと考えてない?」
「そんなことないですよ」
危ない危ない。
「ちょうどお前さんの話をしとったところじゃ。例の神託についてな」
妖精界隈にも女神の神託が届いていたらしい。
「あんたがサウナ嫌いのバァンね、いい心がけよ。私は水浴びと花冠・踊りと浄化を司る女神 クパーラ様の眷属、浴槽の精のヴァーニャ。」
なんか、銀盃花のウェヌスより、神格高そうな名前出てきた。あと長くて覚えられない。
「クパァ?」
「次に変な擬音みたいな呼び方したら、熱湯ぶっかけて皮を剥いで殺すからね」
うわ、マジ怖いやつだ。
「クパーラ様はウェヌスの神託に従うって決めたらしいからね。あんた温泉に浸かりたいんでしょ? それなら土の精の親戚みたいな水の精の爺さんじゃなくて私に任せなさい。」
「蒸風呂の精?」
「皮を剥がれたくなかったら、あんな入浴中にお尻触ってくるような時代遅れの変態老人と一緒にしないでもらえる? 私は浴槽の精。湯船に浸かってリラックスする方が百倍気持ちいいに決まってるじゃない!」
顔が熱くなるのが苦手なだけでサウナが嫌いってわけじゃないんだけど、まあいいか。
報酬は雄鶏が一羽。
あと夏至の未明に花の咲いたシダの葉で冠をつくり、それをかぶった女性が火を飛び越しクパーラに感謝を捧げること。
浴槽の精のヴァーニャ
お風呂を守護する中位の精霊。最後に入浴する。覗くと熱湯をかけられて皮を剥かれる。乙女。
蒸風呂の精
蒸し風呂を守護する中位の精霊。最後に入浴する。覗くと熱湯をかけられて皮を剥かれる。ジジィ。
モットーの報告書
鹿狩りの月 20, 01
難民数及び住人数についての報告
報告者:モットー ドリュアス
難民:80名(古き神々含む)
内訳:
人間(46)
ドワーフ(8)
ライカンスロープ(4)
ハーフエルフ(3)
ヴァンピール(1)
部屋の精(3)
掃除の精(6)
靴の精(4)
国造の精(5)
住民総数:104 (古き神々は除く)
内訳:
招来者:3
人間:85
亜人:16
補足
古き神々:28(但し、実態数かは不明)
妖精及び精霊、いわゆる古き神々の末裔はその場所に定住しないため除外
以上