【閑話】実刑の女神
私は、銀盃花のウェヌス。
囲まれた菜園と愛と美の女神。あるいは怠惰と無精の女神。
電脳辞典にはそう書いてあるんだって、へー。
誰が教えてくれたんだったかな、ヘパイストス?
まあいいや。
私の作った世界を舞台に臨場感あふれる異世界モノを展開して「小説作家になろう」で小説作家デビューしちゃおう!
本物の異世界と、ゲーム、小説のメディアミックス。果ては漫画化してアニメ化まであるよ!
野望のためならTw○tt○rやInst○gr○mのコメント欄でステルスマーケティングだってしちゃう。
そう思ってただけなのになんでか、ウルズの泉の法廷で私の有罪が確定したらしい。
欠席裁判反対。
罪状は複数のゲームをパクった著作権違反、ニート50万人に対する大量虐殺、あと私の世界『ウェヌス』の人間に対する安全確保義務違反。
要するに、私を神と崇める人間がどんどん死んでる。
別に私が悪いわけじゃないのに。
ただ、色々な世界からもろもろ拝借したせいで、拠点崩壊して生態系とかバランスとか崩れて魔物の強襲に耐えられなかったりしただけで。
ほら、やっぱり私悪くないし。
おかげでいろいろなサーバに落ちてたすごい建物とかが廃墟になって、魔物が跋扈する魑魅魍魎の世界になりかけてるってんで、主神が大層お怒りらしい。
別に私の世界の人間が何人死のうが、魔物ばっかりの世界になろうが関係ないじゃん。
と思ったら、人間が死んだことより建物が崩壊したから悲しかったみたい。主神。
「ねえねえ、そういう訳なんだけど聞いてるー」
「シェーーーーー!」
70年代の漫画みたいに驚いてしまった。人気にあやかりたいがこれは無理っぽい。
「相変わらず気持ち悪い驚き方してるねー」
「これはこれはウェー様、本日もご機嫌麗しゅう」
「なにそれキモイ」
「ありがとうございます。ところで本日はどのようなご用件でしょう」
慇懃無礼重点。
「そうそう、お礼に君がいる場所に名前をあげようかと思って。なんか難航してるみたいだから。今日から島の名前はヴァレッタ。そのあたりの地名はイル・ベルトに決定だよ」
いきなり地名が決まったらしい。
イル・ベルトとヴァレッタ。
マルタ繋がりの地名か。
良い響きだし、珍しく神様っぽい良い仕事。
「あ、どうも。ところで何のお礼ですか?」
「君が子供とかの命を助けてくれたおかげで私の刑期が30年縮まったんだよー」
あ、こいつ実刑受けてやんのw
他の神々GJ。
「それはおめでとうございます、その子供たちを助けたのは俺じゃなくて別のニートですけど。ところで残りの刑期はいかほど」
「49万9970年だよー」
ニート一人当たり1年換算かよ、ニート安すぎ。
「もしかしてそれって、刑期が0になったら帰れるとかですか?」
「なんかそうなったみたい」
よし!
希望が見えた!
「貴女を落としたら帰れるとか、正直意味わからなかったので助かります。だけどなんで一蓮托生なんですかね」
「本当だよねー」(ケタケター)
お前が言うなよ。
「さっきから心の声だだ漏れだからね」
「もちろん存じておりますです、はい」
「ところで他のニートはどんな塩梅ですか?チートを持ったニートが6万人もいるんなら、一人頭10人助ければお釣りがくる計算ですよね。むしろヌルゲーすぎて速攻帰れそうですけど。ってあれ? 刑期がマイナス30年ってことは、ウチ以外のニートは一人も助けてないんですか?」
今日何日目だっけ?一週間近く経ってるよね。
「それがさー、領民無視してゾンビドラゴン討伐とか、飯ばっかり食ってるニートとか、ダンジョンにこもって奴隷ハーレムしてるニートとか、ハーレム目的で人間相手に無双かましてるニートとか、よくわからないけど戦争おっぱじめてるニートとか、未だに引きこもってるニートとかが多すぎて困ってるんだよね。あと、最初の二日でニート半減したからー」
えーと、釣り針が多すぎて悩むクマみたいな顔になってる気がする。
18日で開始から2か月!
風呂敷を広げるか畳むか広げつつ畳むか悩み中。




