お風呂回 2
「もうマグマじゃなくて、かまどでいいじゃないですか。穴掘ってかまど設置して上に水通して。」
「毎回火を焚くのって大変だよ? 石炭か薪を消費するし、薪なら切らなきゃならない。使う前に乾燥だってさせなきゃいけないし。あと排水とかの問題とかもあるし。その辺やってくれる?」
「うっ……」
「まあ、できないことはないけど、電気も給湯器もない時代で風呂を沸かすのがどれだけ大変か。それこそ奴隷が必要になるんじゃね。公共事業とかならアリなのかもね」
ハイジの黒いパンが固い理由は、ドイツ人が薪をケチって3日に一度しかパンを焼かず、3日間持たせるためにゴリゴリに水分飛ばして焼いたのが理由とかなんとか。
ドイツ人の気質なのか、キリスト教の影響なのかは知らんけど。
ああ、かまど自体が村とかで共同利用してた時期が長いんだったか。
「さあ、俺の道具を使えばゲーム同様の効果があるのは実証済みではないですか!」
あんちゃんの前に、バケツをすいっと押し出す。
顔を引きつらせながら、後ずさるあんちゃん。
「そ、それなら私がやります!」
お、ザシャくん立候補。可愛いやったー。
「じゃあじゃあ俺がやるよ!」
あんちゃんにアイコンタクトを送る。
わかるよね?
わかるよね?
わ・か・る・よ・ね!
「ああもう、わかりましたよ!」
どうぞどうぞ。
ふうっ、開きすぎて目が疲れた。
念のために、火炎耐性のエンチャントがついた金の鎧(スケルトンのドロップ)を渡しておく。
「骨は拾ってやるからなー。 カラダニキヲツケテネ!」
勝ち目のない戦に出かけるあんちゃんと、見守る俺とザシャくん。
「アタシいま体温何度あるのかなーッ!?」
変なことを口走るあんちゃん。
よしいけ、もうちょい!
あ、結構簡単に行けたっぽい。
「あ、熱かったですけど、結構大丈夫でしたね」
戻ってきてバケツを地面に置く。慎重に。
問題はこのマグマ入りバケツを、インベントリに仕舞う勇気が俺にあるやなしや。
念のために、火炎耐性のエンチャントがついた金の鎧(スケルトンのドロップ)を返してもらい、装着。
よし。
よし!
いいのか?
いくぞ?
お前ら止めなくていいのか?
押すなよっていうと押されそうな気がしたので、その前にバケツを持ち上げる。
あ、熱いw
華麗に、そして大胆に! それをインベントリに仕舞う! 俺! フーリンカザン!
ええ、あっさり仕舞えました。
「……疲れたね」
「……そうですね」
マグマはゲットしたものの、それをどうするかまでは全然考えてなかった。
「思ったんですけど、ここにお風呂作ればいいんじゃないですか?」
あんちゃんが、いいこと言った!
「……おおっ!」
よく見れば、すぐ近くに川も流れてる。
ここに砦方面の川上から水を引いて、そこの川下に流す感じですね!
水車か何かで、水を少し上にあげて、水量を調整すればなんとかなるかも。
この辺は遠くに海も少し見えて風光明媚。左右を崖で囲まれているから良いかもしれない。
確かに、砦の中で全てを完結させる必要は全然ないな。夢が広がる!
サムズアップする二人。
「このあたりの川ってあったかいですね」
川の近くのザシャくんが、水を掬いながらひとりごちた。
川上にはトイレがあるから、あんまり触らないほうがいいかもよ?
「「……」」
ザシャくんの方を見ながら、あんちゃんと二人で目を合わせる。
「もしかして同じこと考えてたかな?」
「かもしれませんね」
「「温泉!」」
確かに川の表面には、かすかに陽炎が立っていた。触ってみるとぬるいと暖かいの中間くらい。ただ、お湯が湧き出てる風な場所は見当たらない。
「マグマの熱が伝わっただけで、温泉が流れ出てる感じじゃないのかもしれませんね」
「うーん、じゃあとりあえずその辺掘ってみようか。あんちゃん、直下掘りお願いします」
「それマグマダイブのヤツですよね、実況見たことないって本当ですか?」
危ないので良い子は真似しないでね。




