全天候型砦
この世界にも雨は降る。雨は嫌いじゃないし、この世界の雨も悪くない。雨音が耳に心地よい。
問題は【はじまりの砦】に屋根がないことくらい。要するにずぶ濡れ。
いろいろやりたいことがあった気もするけれど、全部保留にして今日は屋根をつけよう。うん、ずぶ濡れだし。
松明も手に入れたし、もう暗闇に怯えて暮らさなくてもいいんだ! いいんだ!
ということで、屋根を付けるため、ずぶ濡れのまま空堀掘削作業開始。
なぜかといえば、素材が足りないから。
また地下の洞窟に落ちないよう、空堀の穴を塞ぐ。
空堀を深くして、入り口までの橋を渡して空堀整備完了。
入り口は昼間は開けておいて、夜(もしくは逃げる時)に塞ごう。
橋と入り口は繋いだけれど、どうにも入りにくいので、入り口の左右に土ブロックを2段づつ重ねる。
ついでに橋から空堀に落ちないよう、柵代わりのブロックも配置。
うん、橋っぽく見えなくもない。
次はいよいよ天井を作成。
砦の中に入り、空堀整備で手に入れた土ブロックで天井を埋めていく。
おお、屋根がついたよ。
屋根をつけたら急に狭く感じる、それはそうか。今まで遥か上まで空だったんだから。
洞窟から追加で拝借した松明を、四隅の上下と部屋の真ん中に合計9本設置。
うん、明るい。多すぎか。
入り口も1マス残して塞げば、外の様子を見るための窓代わりに。
これなら暗闇に恐怖しなくても良さそう。テーブルとかベッドがあれば一気に快適空間になりそう。
うん、言い過ぎた。
全天候型砦【はじまりの砦】。
悠久の全天候型砦で、人生はいま、高みを目指す。
今日は砦の内部にモンスターが湧いて来ないか確認する。
合間にこれまでのアイテムを合成してなんか作ったりできたらいいかな。
雨でよくわからないけれど、そろそろ夜が来るはず。
この世界に来て三日目の夜。
入り口を1ブロック残して塞ぐ。
フゥ。
砦の隅に陣取り、周囲の安全確認。
「ヴモォォォォー」
突然背中から(多分)ウシの鳴き声がしてびっくり。
なんかすごい近いよw
ものすごく驚いたけど、天井と灯りのおかげで安心感が全然違う。
火ってすごいな。
でも松明だから煙もすごい。
煙がなんとなくイヤなので、各壁の上部を1マス削って窓にしてみた。
このサイズのモンスターには今の所出会ってないし、大丈夫。今度こそ。
河側の窓を覗くと闇夜の中、クモが泳いでる。釣りの時に使う浮きみたいな動きで。
いつ見ても楽しそうだな。
山側の窓からは、白いウマが跳ねるのが見える。あとウシも。
そういえば、子牛を最近見ないな。成長して大きくなったならいいけど。
なんというか、ゲームなのにゲームじゃない感覚にだいぶ染まってきた気がする。
安全確認しながら、アイテム確認と合成をしたかったけど、モンスターが沸かないかやっぱり気になる。
結局そのまま朝チュン。いや朝モー。
三日目にしてやっと安全圏を確保。
よかったよかった。
確かにこんなに危険なら、転生モノの主人公にチートくらい持たせてあげたくなる。だって死ぬし。
そういえば3回死んだけど、これもチートなのか。
「神様どうもありがとう」
思ってもいないことを口にしてみる。
ちなみに今日も寝てない。死ぬかな。