砂上の楼閣
下に降りると、商隊の人たちが荷物を地下へ運んでいた。
カールさんは柵を設置、ニワトリとヒツジを囲い終わっていた。
「卵が幾つかあったので、チェストに入れておきました!」
すごく嬉しそうなカールさん。多分卵料理のこととか考えてる。
「ありがとうございます」
主塔の1階は、もはや台所の様相を呈していた。
さっき、子供たちと釣り大会をしていた丁稚の子も一緒になって料理してる。
ああ、平和だ。
なんというかむず痒い。
こういう平和はヤだな。なんだか音を立てて崩れ落ちそう。
なんか急に家族に会いたくなってきた。
インベントリから、スマートフォンを取り出し、手の中で弄んだ後、電源も入れずに仕舞う。
気を取り直そう。
偵察の人たちはまだ戻ってきていないので、入り口は開けたまま。
魔物が見当たらないのが、まあ救いかな。
個人的には人間の方がよっぽど恐ろしいけれど。
あんちゃんの話だと、ワールドの広さは地球の4倍だか無限だからしい。
仮に4倍だとして、駄女神様にヌッコロされなかったニートが(彼女の話を信じるなら)6万人くらい。
地球規模の面積に1万5千人の転生者がいるとして、出会える確率は?
陸地の面積が不明だとわからんなw
えーと、北半球に7500人か。
アメリカ・カナダ・ロシア・中国その他もろもろ、ついでに海を含めた場所に7500人。
北半球の地図にダーツを7500回投げたら何回日本に刺さるかなw
あんちゃんと出会ったのは、奇跡的な確率だったりするのか?
もしや運命の人!
また変な妄想で変な顔になってた気がする。希ガス。
えーと何の話だっけ。
ああ、平和ね。
無理やり転生させられて、いきなり頭のおかしい王女に強姦魔の汚名を着せられたり、同級生に谷に落とされて九死に一生を得て、中二病っぽい体を手に入れるよりは多分ずっといいよな。うん。
昼食はかぼちゃのスープとマッシュポテト。
商隊の人たちにも振る舞ってもらった。というか作ってあった。
エミリアさん美人で巨乳!
違う、気がつく良い奥さん。人妻。
やべ、鬱憤とか色々溜まってるのかな。
あと丁稚の子はモットーくん10歳。
もういい飽きたけど、イケメン。ファサールさんほどではないけど彫りが深くてサラサラの黒い短髪。折れそうなくらい細身なのにテオくんとかオンブしてる。
商隊で仕込まれているせいか、とてもしっかりしてて、テオくんやユリアちゃんをよく見てくれている。二人ともすっかりなついたご様子。
将来のザシャくん候補か。
イケメンに囲まれてるかと思うと、なんかモヤモヤする。死にたい。
何だ俺、鬱にでもなったかw
求むヒロイン。
午後は対岸に渡って伐採。
特に声をかけたわけじゃないけれど、ザシャくんとあんちゃんも付いてくる。
この辺りは開発したいと思っているので、どんどん開墾していきたい。
森が開ければ、視界も良くなって突然ゾンビなんかの魔物に襲われる心配もきっと減る。
こちらも二人がかりなので、結構な範囲を伐採できた。
チャチャラチャーラーチャッチャラー。
そして、白い部屋へ。




