サイオー・ホース
その後、バルズスさんと一緒に砦の北側の空いてるスペースに川から水を引いて畑を作る。
バルズスさん暇なのかな。
作業中ずっと、婚約者のノロケ話をしてくる。
お相手はまだ20代、出るとこは出て引っ込む所は引っ込んでいるとのこと。
そうですか。
ちなみにこちらの結婚適齢期は、10代後半らしい。
そう考えると、晩婚って奴なのかな。
まあ、お幸せに。
「そういえば、あの嬢ちゃんが男ってのは本当なのか?」
「ああ、まあ今更ですけど細かい話は本人に聞いてください」
「あの尻はどう見ても女にしか見えないんだがなぁ」
俺には変質者を見る変質者をにしか見えないですけど。
話を適当に流しながら、もらった種や小麦の種、カボチャやらを適当に植える。
そうだ、骨粉を試そうと思ってたんだ。
インベントリから骨粉を取り出し畑に撒く。
そしてものすごい勢いで大きく育成する植物たち。
「「!」」
ビビるバルズスさん、そして俺。
いや、ゲームならよくある話なんだから俺は驚かなくてもよくね?
んー、収穫には少し早そうなので骨粉をもう一振り。
おお、育った育った。なんかの昔話みたいだ。
収穫すると、カボチャに小麦・大麦、ニンジン・ジャガイモ・サトウキビ・ビート・キャベツ・タマネギ・ソラマメにトウモロコシ。
ついでにコショウ。
「コ、コショウ?!」
コショウは通常、種からではなく接木栽培が必要なので、これはさすがにびっくり。
いや、同じ種類かはわからないけど。
「コショウの種は間違えてもらっちゃったのかもしれませんね」
「わ、若に知らせてくる」
転びそうになりながら走っていくおっさん。
バルズスさんを生暖かく見送る。
骨粉の元になる骨はまだまだあるし、これなら食料問題は解決かもしれない。
問題はここ数日、スケルトンを見ていないのと連作障害か。
そういえば、あんなに川をプカプカ泳いでいた魔物が全く姿を見せていない。
可能性として考えられるのはなんだろう。
ゲームの世界自体はとてつもなく広いらしいけど、常識で考えれば、すべてを同時並列で動かせるわけじゃない。
それこそ処理落ちしてしまう。
実際に動かしてるのはプレイヤーの周辺だけだと考えれば、魔物のスポーンの確率、もしくは範囲が変わったのかもしれない。
逆に確率的なものを変えていないとか。
そうでなければ、世界を作る際に魔物自体に生態系的なものを付与させたか。
ああ、脱線しすぎた、畑に話を戻そう。
なんだっけ?
そうだ、連作障害。
でも大規模農業するわけじゃないから、気にする必要もないか。終了。
そもそも家庭菜園もしたことないのに、内政チートとかできるはずもない。
そういえば妻の実家の山形は、行くたびに裏の畑で作ってるものの場所が違ってたり、そもそも作るものが違ったりしてたな。あまり気にしたことなかったし連作障害対策かどうかも聞いたわけじゃないけど。
一応、何をどこに植えたかごちゃごちゃだとわかりにくいから、幾つかに分けてローテーションするくらいでいいかな。
この骨粉で土の栄養がどれだけ補われてるのか全くもって謎だし。
そもそも育っているラインナップが適正気温とか色々無視してると思う。
風があるせいか湿度はそれほどじゃないけど、どう考えても気温的にはイタリア南部かアフリカ北部。日本で言えば東北以南の気温だけれど、雨が多い割には湿度が低い。
暑い気がするけれど、過ごしやすいのは助かる。
ぼんやり妄想していると、バルズスさんがファサールさんを連れて戻ってくる。
「コッコッコッ、コショウが育ったっていうのは本当ですか!?」
ニワトリみたいなのきた。
とりあえず、収穫したばかりのコショウを見せる。
「コショウの種を本国に持ち帰っても育てることができないので、もし栽培できたら国を買えるくらいの儲けが出ますよ!!」
「売る相手がいれば、の話ですけどね」
ここがみんなの元いた世界と同じかどうかもわからない。たぶん違う。
そして俺のいた世界じゃない。
「そんなことより、いきなり育つってどういうことですか??」
シリアスに決めたのに、そんなこと呼ばわりされた気がする。
(ノ゜ω゜)(ノ゜ω゜)そんなー!
「骨粉を使いました。使いません?」
「肥料ですよね、そりゃあ使いますけど。でも突然育ったりしませんよ!」
そりゃあそうだ。
「まあ錬金術みたいなものです、魔法は使えません」
なんか決め台詞みたいになってきたな。




