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商談とトイレとわかりやすいフラグ

その後の商談はかなり面倒だった。

まず、ファサールさんは交渉ごとがとてもうまいという印象を受けた。


ぱっと見は、できる風ではないけれど、話をしているうちになんとなく気を許してしまいそうになる。


イケメンで有能とか爆散すればいいのに。


後で聞いた話だと豪商の放蕩息子で、実家を追い出された後、ほぼ無一文の状態から自力で商隊を大きくしてきたらしい。


こちらは値引き交渉とか苦手な上に、文字の読み書きもできない状態なので、契約書一つとってもザシャくんに任せっきりな始末。

なんども音読してもらいましたよ。だって読んでもらえば日本語なんだもん。


なんたる体たらく。

これ言葉が通じなかったら、文字どおり話にならなかったな!!




ザシャくんにほぼお任せしてしまった商談内容は、ひとまず10日間(状況によって延長)の滞在許可と荷物の保管。

要は邸店ていてんのようなことを求められた。


荷物の保管を求められたので、地下迷宮ダンジョンを区切って、倉庫のように改造して見せたら、ここに住みたいと大はしゃぎだった。どこがツボだったのかは不明。


邸店ていてんというのは、倉庫が併設された宿泊施設で、大量の商品を長距離運ぶ商人のためのもの。

預かっている商品を委託販売する場合もあるが、今回は見送り。


理由は、売る相手がいないのと、この状況では通貨が使い物にならないから。

なので、基本的には物々交換という感じになる。あと野宿だけど。


ローマ帝国没落、貨幣経済崩壊で物々交換に戻った感じか。いや違うか。

ヨーロッパと違ってその頃中東は栄えたんだったかな。



ファサールさんが扱っているのは、象牙や香辛料など高級品が多く、日用品が少なかったが野菜の種を幾つか譲ってもらう。

その他の価値がイマイチわからないので、宝石を幾つかとコショウ、綿織物と細々とした日用品などで商談成立。


木綿コットンがヨーロッパに広まったのは中世末期のはずだけど、ファサールさんのいたところではそれなりに流通があるとのこと。木綿コットンがヨーロッパに伝わった頃、「インドには小さな子羊がなる素晴らしい木が生えている」と思われていたらしい。まあ、羊毛に似てるしね。




多分、ザシャくんがすごく頑張ってくれたんだと思う。あとファサールさんが良心的というか大盤振る舞いという感じか。


そんなこんなで、もう夕暮れ。

交渉が成立したお祝いに、宴会に誘われた。

本来こちらがもてなす側な気もするが、子供たちが釣った魚の他に出せるものがないのでお言葉にあまえることにする。

魚はエミリアさんがパイ包みを作ってくれた。

その他食料と飲料はファサールさん側がほとんど提供してくれた。


カールさんたちはすごく楽しそうだった。

食事とお客さんってものすごい娯楽らしいし。

子供たちも人見知りせず、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしていた。


用心のため、ザシャくんには俺の出したもの以外、口をつけないでもらったが毒が仕込まれるようなことはなかった。

警戒しすぎなのかな。




「信用できると思う?」

宴が終わり、見張り塔でなんとなくザシャくんに話しかける。


「そうですね」

少し考えた後、ゆっくり喋り出す。


「昨日の今日ですから、計画的に何かをしようということはないと思います。ここで価値があるとすれば、この砦の安全性とエミリアさんたちくらいでしょうか」

「奴隷商人には見えないけどねー」

「困っているのは事実でしょうし、奴隷と言っても今の所、売りつける先もないですし」

「自分たちで使役させる以外はね」

「信じられる気もしますが、用心するに越したことはありませんから。ただ、ぼくのことを信じてもらえているようで、それは嬉しいです」

相変わらず可愛いな。

というか、こちらは命を救われてるんですが。


考えても答えが出ないことで悩むのって本当にヤだよね。

疑いだすとキリが無い、ぼっちの方がずっと楽だ。

カールさんと3人で見張りを交代しながら、夜を過ごす。




朝、護衛の数名が馬で周囲を見回ってくるということで、土塁に入り口を開ける。

カールさんは柵の設置、ザシャくんには大事をとって、見張塔の上で警戒をお願いした。


ザシャくんに金の鎧を渡そうとしたら、

「それは出さない方がいいと思います」

と注意された。

しっかりしてる!


金の鎧は丁重にお断りされたので、新しい皮鎧(スケルトンのドロップ品)を渡しておく。


荷物が通らないので、1室しかない地下迷宮ダンジョンへの入り口を新たに設置していると、バルズスさんが話しかけてくる。

「あの便所はいいな! スゲー綺麗だ!」

「喜んでもらえて何よりです」

「あれ金取れるぞ!」

すごい興奮してる。

よかったよかった。


「あれって個人の家にもつけられるか?」

なんかすごく食いついてくるな。


「川が近ければ大丈夫ですが、遠いと下水道の設置とかかなり大変だと思いますよ」

すごくがっかりするバルズスさん。

「俺、この旅が終わったら結婚するんだ」

「死んじゃだめーーーーーーーーーーー!」

「いや、結婚だよ、結婚」

なんかベタすぎて、正気を失ってたよ。

話を聞いたらバルズスさん、俺より年下だった。ごめんよ。


婚約者さんと会える気が全くしないけど会えるといいですね。



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