女子高生プロデューサー
渡河用に土の橋をかけるが、馬車ごと川を渡るには、強度が不足して危うかったため、荷物を手作業で運んでいた。
荷物はかなり多かったが、ファサールさん曰く「全財産」らしく、外においてはおけないとのことだった。
「失礼ですが、バァン殿は魔術師なのですか?」
「まあニートみたいなものです」
「?」
ファサールさんはニートではなさそうだったけど、馬車の中にニート発見。
「ニート」の単語に反応して、ビクッとしながらこちらを向く。
上は青のブレザー、下は茶系のチェックのスカートにニーハイソックス。絶対領域が眩しい女子高生のような制服を着た青年。
少女ではなく、青年。
あと、イケメン。
「おまわりさん、こいつです」
「ち、違うんです、勘弁してくださいっ!」
「よかった、バァン殿のお知り合いでしたか?」
ファサールさんの言葉を全力で否定する。
「変質者の知り合いはいません」
「道中、魔物に追われているところを助けたのですが……あの少女が変質者?」
「少女??」
どうもファサールさんたちには少女に見えるようだが、どう見ても変質者。
よく言っても早朝、ゆりかもめでイベント会場へ向かう変質者。
ゲームの設定が反映されてるのかな。
「違うんです!」
「人の性癖に関与する気はありません」
「だから違うんですってば!」
「いいんですよ」
生暖かい目で突き放す。
「イケスタっていうゲームをやると、プリスタのSレアカードがもらえるキャンペーンがあって……」
すごい勢いで説明しだしたかと思いきや、何か尻すぼみした。
まあ、力説するような内容じゃないよな。
「えーと、女子高生になって、イケメン男子高生をアイドルにプロデュースする感じのヤツでしたっけ?」
自分で言ってて違和感半端ないw
「はい……」
俺には20代前半のイケメン変質者にしか見えないが、どうもファサールさんたちには「少女」に見えるらしい。
うん、関わり合いになりたくない。
あれ、俺はどう見えてるんだ?
「あの、日本人ですよね?」
「そうですけど違います」
「ここってどこなんですか」
「アレですよ、異世界転生モノ的なアレ、多分」
がっくりと肩を落とす変質者。
まあ、気持ちはわからないでもない。
「こっちに来る時、女神とかに会いませんでした?」
「会いましたよ、集団面接会場みたいなところで。トラウマのせいで吐き気がしました」
「えーと、何か説明とかは?」
「何か説明があって、怒号と罵声が飛び交って、後吐き気とめまいでそれどころじゃなかったです」
すごい辛そうw
「その時、何かチートみたいな能力貰わなかった?」
「……アイドルを育成する能力もらいました」
「Pさん、超がんばって、いろいろお祈り申し上げてますから」
「助けてくださいよ」
「ファサールさんたちに助けてもらったらしいじゃないですか」
「そうなんですけど、なんか足とか胸元とかに視線が集まってるのがいたたまれなくて」
そうか、ミニスカートの少女に見えるのか。
おまわりさん、あいつらもです。




