【悲報】俺に神聖魔法は使えそうにない件
テオくんのお腹が鳴ったので、主塔に食料を確認するために戻る。
インベントリとチェストを漁ったところ、
パン:6
鶏肉:2
カボチャ:1
卵:4
こんな感じ。
うーん心許ない。
一人なら、10日以上は持ちそうだけど。
卵とカボチャは食べられるかどうか確認したい。
腐肉は10以上あったが除外。
ゾンビがドロップしたなら、それ人肉だよね。
ちなみに謝肉祭の始まりは、春が来て暖かくなる前に、残った(ほぼ腐っている)保存用の塩漬乾燥肉を全部食べ尽くすのが目的だったとかなんとか。
多少湧いた蛆虫は、宇宙食に採用を検討されるくらいタンパク質が豊富だからー、とかいわれてもねえ。
みんなのところに戻り、インベントリから取り出した木の板やブロックでテーブルをつくり、その上に食料を広げる。
「食べられそうなものを漁ってみたんですが、このくらいしかなくて」
その様子を見ていたみんなが驚く。
「すごいすごーい」小さい子二人は大はしゃぎ。
「あ、あの、さっきの橋も突然現れましたが、バァン殿はもしかして魔法使いなのですか?」
ザシャくんが若干青ざめながら聞いてくる。
ああ、そんな風に見えるよね。今更ごまかせないし、なんて言おうかな。
「ちょっと違うんですが。まあ、どちらかというと錬金術みたいなものですかね。魔法は使えないです」
異端審問とかにかけられたりするかな。
話を聞くと、ザシャくんの世界には魔法があり、カールさんのところには魔法はないらしい。
ただ、ザシャくんも神聖魔法以外見たことがないとのこと。
俺の記憶だと、パクリ元のゲームには魔法はなかったはず。
でも、駄女神が突っ込んだと言っていたmod(改造データ)自体が、元のゲームにない要素を追加するためのものなので、そんなこともあるかもしれない。
「白いパンってはじめて見るー」
「ぼくもー」
インベントリから出した白いパンを、子供たちが目をキラキラさせながら見ている。
子供たちが驚いていたのは、魔法の方ではなく白いパンの方だったらしい。
「この鶏肉もみんなで食べちゃいましょう」
俺がそういうと、
「じゃあ私がお料理させていただきますね」
と、エミリアさんが笑顔を向けてくる。
うぉ、巨乳が眩しい。
ザシャくんがエミリアさんにナイフを渡す。
「よければ使ってください」
「あら、どうもありがとう」
ザシャくんが真っ赤になってる。
うんうん、エミリアさん巨乳だしね。でも人妻だから。
「ザシャ殿は魔法を使えるんですか?」
従騎士自体が敬称だから、従騎士殿だと二重敬語になるのかな?
ザシャくん呼ばわりはどうかと思ったので、殿にしてみた、殿でいいよね。
「私は治癒が使えます。従騎士になるには、初級の神聖魔法を何かひとつでも習得しないといけませんので」
おおっ、朗報!
「それって、私でも使えるようになりますかね!」
白いパンを見る子供のような目で質問する。
「ええっと、聖ウェヌス様への信仰と教会での付与ですね、寄付の額によって高度な神聖魔法が付与されます」
【悲報】俺に神聖魔法は使えそうにない件
いや、俺ほどウェー様を崇めてるヤツもいないから、あとは金次第か。
「ちょっと失礼」
金のことを考えてたら、ふと自分が聖なるゴールド闘士のような格好だったのを思い出して恥ずかしくなった。
主塔に戻って、革の鎧に着替えよう。
着替えがてら、いろいろ作業している時に気になったのは、インベントリに収納できる量。
もともと膨大な質量を収納できていたけれど、スロット数の制限があり、小さなアイテムでスロットが埋まってしまいアイテム作成時にかなり不便だった。
ミニチュア用の小さなブロックが、全て収納できていたので、スロット数の制限がなくたったような気がする。
ブロックが小さすぎたのが理由かもしれないけれど。
あと、前は作業台でしかクラフトできなかったアイテムが、全てインベントリでできるようになっている。
作業台の存在意義がなくなったのかな?
これはチートではなかろうか。
ウェヌス様、チートな能力をありがとうございます。
聖ウェヌス様に感謝の祈りを捧げていると、例の声がする。
「ごめーん、本当はクリエイティブモードの、全アイテムを無尽蔵に使えるようにしたはずだったんだけど、なんか間違えたー」
やっぱり駄女神だ。
とりあえず、俺に神聖魔法は使えそうにない。




