現実逃避
地面にへたり込む。
足が震えて立っていられなかった。
いや、手も体も全身震えが止まらない。
外ではまだ、ゾンビが騒いでいる。
「ああそうだ、砦の安全を確認しないと」
つぶやきながら立ち上がろうとするも、足に力が入らない。
へたり込んだまま、周りを見渡す。
窓がいくつか空いている。
松明の排気用と、ゾンビと戦うために空けておいた穴だ。
嫌がる足を無理矢理動かし、土を取り出し窓を塞ぐ。
松明が燃えているので、排気口はふさがずにとりあえず小さくしておく。
地下への階段も一旦閉じる。
閉鎖空間をつくって落ち着きたい。
外のゾンビがうるさい。
そういえば子供だったな。6歳くらいか。
腐って崩れかけた左半分の顔がチラリと見えたのを思い出して、イヤな気分になる。
どうしてこうなった。
どこで間違えた?
ついさっきまではゲーム気分だったのに。
くそ、涙が溢れてくる。
ヘタレだからな。
あれか、実装は俺を現実に帰してからにしてくれと、ちゃんとお願いしなかったせいか?
ふと気がつくと手元では土ブロックを材料にウェールズにあるビウマレス城塞のミニチュアをつくっていた。
水堀に囲われた外岸壁。跳ね橋。中庭を中心に礼拝堂の入っている城塔。内城壁の四方に円筒型城壁が突出し、多重環状城壁は外城壁が陥落しても内城壁の城門群に直接接近できない配置になっている。
細かい箇所はともかく、シルエット的には悪くない仕上がりだ。ああ色をつけたいな。
小さいレンガをアホほど用意してビルドしていくか。
おお、おーすげー。型とか用意しなくてもイメージしただけでどんどんできる。いいな。
これってもしかしてチートもらっちゃった感じか?
ほんの数分で、長辺が1mm程度のブロックが数万個は出来た。これだけあればしばらく遊べる。
スペインのモンベルトランっぽいのならすぐできるかな。
円筒形側防塔をイメージしながらろくろを回すように手を動かすと形になっていく。つなぎ部分は水分多めをイメージ。粘度が出ていい感じかも。
どうやら土の錬成が自在にできるのは、インベントリから取り出して、固定化させるまでの間だけのようだ。
土を直接触っただけでは普段と変わらなかった。事前に対象を用意する必要があるということか。
等価交換かな。
土を掘る行為が必要だから、土魔法っぽく発動はできない。一握りの土くらいなら、5秒程度で小さな土団子をつくれたが、そのままつくるのとあまり変わらない気がする。
でも、この力は使える。
これがあれば、俺でも生き延びることができるような気がする。
砦の真ん中で土の回収・錬成を繰り返す。
こねると柔らかくなり、
圧縮・振動を加えるようにイメージすると硬くなるがもろくなる。水分が少なすぎるとばらけ、多すぎると締まりがなくなる感じか。
大まかな種類ごとにも分けられそうだけど、うまくいかない。というかよくわからない。
まだゾンビが騒いでる。
ああ、夜になるともっと増えるのか。
そういえば、金の装備をしてたんだな。
そんな装備でスニークとか目立ちすぎだろw ゾンビじゃなくても気がつくわw
状況が好転したわけじゃないけど、自嘲のおかげで少し落ち着いた気がする。
小さなレンガを手で払い、小さなため息を吐きつつ、ゆっくり立ち上がる。
あいつは倒しておかないと。あの声で仲間が集まってこられたら堪らないからな。




