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守備兵の回想

挿絵(By みてみん)

城門塔(ブルクトーア)下イメージ




雨の中、見張りをしていたグィードは、内門砦バービカンの方から交代に来たヘルマンを迎えるため、残る仲間に挨拶をして城門塔(ブルクトーア)の階段を降りていく。


城門塔(ブルクトーア)の下、グィードとヘルマンは軽口を叩きながら、先月起こった事件のことを思い返してため息をつく。


「ダグマルんとこの奥さんには悪いことをしちまったな」


「……そうですね」



ダグマルの娘、マクダは6歳になったばかりの、少し引っ込み思案なとても可愛い女の子だった。


ダグマルの家族とは、この砦に逃げてきてから出会った。


年の近いグンターとこの娘と、十も年の離れたウチの娘を「お姉ちゃん」と呼んで、いつもくっついて遊んでいた。


「今日は見てないよ」

それがあの日に限っては、なぜか別だった。


しばらくしてダグマルの娘が、獣に食われて死んだと砦中が大騒ぎになった。責任を感じたうちの娘もしばらく立ち直れず、日々泣いて過ごす有様だった。


そして、今となっては誰が言い出したのかわからないが、人狼ライカンスロープが怪しいという噂が広がっていった。


人狼ライカンスロープは子供を攫って喰う」


俺の田舎じゃ、子供を失った龍人ドラグメイドの女が子供を攫って喰うって伝説があったし、あの時はとにかく亜人どもが全部怪しく見えた。


そこに、正義感の強い元傭兵のグンターとルイスが防衛訓練の後、ダグマルたちを引き連れてバァン様のところに直訴に行ったはずが、どこでどう間違えたのか、酒場で人狼ライカンスロープと喧嘩をおっ始めて4人も死んじまいやがった。


いや、逃げた二人も合わせれば、6人か。


その後は、砦の中がめちゃめちゃギスギスしていた。


ダグマルの娘の死因も、狼じゃなくてもっと大型種の噛み跡だという話が伝わり、しばらく姿を見せない人虎ウェアタイガーあたりが怪しいという、これも特に根拠のない噂が広がった。


結局はトロルの仕業だって話になり、目の前のヘルマンを含めたダグマルの氏族が、戦闘前に噂を広めた咎とかで一時期幽閉された。


「俺たちは何やってんだろうなぁ」


「そうですね」


ヘルマンは死んだダグマルたちと同じ村の出身で、あの時はとても憤っていた。


勘違いで何人も死んだ負い目もあり、若干肩身の狭い思いをして日々を過ごしていると、ドワーフたちと飲んでいる時に愚痴をこぼしていた。



はぁ。

そもそもどうして、俺たちはこんな目にあっているのだろうか。



何が起こったのか皆目見当もつかないが、貧しくも平和な村から、いきなり見知らぬ土地に投げ出され、伝説上の化け物から、命からがら神託に従い逃逃げ延びた先で、時代によっては勇者と呼ばれたり魔王だったりする存在、招来者ブリンガーのバァン様に命を救われた。


ウェヌス様のお導きとバァン様のおかげで、ここでは日々の食事に困ることがない。


それどころか、提供される食事は今まで食べたことにないほどにウマイものばかりだった。


子供が小さいうちに栄養失調で死ぬことが多かった、前の村での食事を考えればここはまるで天国だ。


それからバァン様は俺たちにもう農奴じゃないから、と言ってくれた。


ここにいてもいいし、ここが嫌なら外に出て行くことも自由だと。


若い奴らは喜んでいたが、農作業しかやったことのない俺には正直よく意味がわからなかった。

ただ、誰かの所有物ではないというのは、地に足のつかない感じがして不安でもあるが、嬉しいことなんだと思う。



「俺はこの砦を命に代えて守りますよ。そうでもしないと、死んだとき、ウェヌス様とマクダちゃんに会わせる顔がないですから」

たいして信仰心のない俺と違って、ヘルマンは信心深い若者だ。


「そうかもな、じゃあ気張って見張りしろよ」


外にはおとぎ話で聞いたような、魔物がうじゃうじゃいるが、ともかくこれから新しい生活が始まる。

俺が家族を守っていかないと。



じゃあな、と別れの言葉を交わしていると、ヘルマンの眉間にしわが寄る。


「グィードさん、あそこにいるの誰ですかね?」


雨に濡れ振り向くのも億劫だなと思いつつも、ヘルマンの指差す南の壁を見やると、確かに誰かが居る。


「誰だぁ、こんな雨の中。いったい何やってやがんだ」


一緒に見張りをしていたカイトたちは上にいるし、外のカルナップたちはまだ戻ってきていないはず。


激しい雨の彼は誰時かはたれどき、離れた場所にいる人影を判別できない。



交代の時間だが、あれを放っておくわけにもいかない。

「ちょっくら、見てく……」


南側に歩き出そうとした瞬間、城門塔(ブルクトーア)の上から叫び声が聞こえて来る。


「敵だーー!!」

直後、すぐ背後、城門塔ブルクトーア北側の幕壁カーテンウォールが大きな音を立てて崩れて出す。


・・・・・・




その後のことはよく思い出せない。


クッコロ騎士団と一緒に戦ったような気がする。

そのあとは……。


なんだか、意識が朦朧とする。



よく見ると、隣には妻のカトリーナとミアが寄り添ってる。

ああ、俺のかけがいのない家族。


愛してるよ、二人とも。



その後ろには、ダグマルの奥さんとかイーライ神父も見える。

なんで、イーライ神父倒れてるんだ?


その横ではヘルマンと、ザシャ様も倒れてる。

なんだか、女どもが騒がしそうに行き来している。


ん……何も聞こえない。



ああ。


ああ、そうだ。

俺は、俺たちは小鬼どもの波に飲まれたんだ。



妻の手を握り返そうとするが、手には感覚がなく、体をどこも動かせない。



血まみれになった自分の体に気がつく。

でも全然痛くない。そういえば、なんだか視界も赤い。



そうか。

俺、死ぬんだな。


ああ、そんなに泣くなよ、カトリナ。

愛してる……


ごめんな……、ミ……


終わりゆく月 31


住人数についての報告

報告者:モットー ドリュアス


死亡:

人間 1名

ドヴェルグ 1名


詳細は別紙にて



住民総数:150

内訳:

招来者ブリンガー:6

人間:106

ドワーフ:9

エルフ:6

吸血鬼ヴァンピール:4

ハーフエルフ:4

ダークエルフ:3

熊猫人ウェアパンダ:2

人狼ライカンスロープ:3

猫人ケット・シー:2

白虎人ウェアタイガー:1

龍人ドラグメイド:1

白熊人アルトリウス:1

戦狼人ヴェアヴォルフ:1

半竜人ハーフドラグレス:1



以上


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